米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター
ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
鍵盤男子×北翔海莉が化学反応を引き起こす!
豪華客船の中で生まれ、そこでピアニストとして生き、生涯船を降りることがなかった天才ピアニストを描いたアレッサンドロ・バリッコの小説『海の上のピアニスト』。1998年には映画になり大ヒットした作品が、昨年、音楽劇として舞台化され、今年、再び戻ってくる。
昨年に引き続き、天才ピアニストのノヴェチェントを演じるのは、元宝塚歌劇団男役トップスター北翔海莉と、クラシック界の貴公子として知られるピアニスト大井健。この二人が融合してノヴェチェントを演じる。また、大井は、2013年に作曲家中村匡宏とピアノデュオ鍵盤男子を結成し、その中村が『海の上のピアニスト』の作曲・音楽監督を手掛けている。今回、京都芸術劇場 春秋座で上演される公演で、中村が主人公ノヴェチェントの親友トランぺッター役を務めることが決定した。鍵盤男子の二人に、作品にかける思いや舞台音楽、鍵盤男子の活動などについて語ってもらった。
――昨年、東京で上演された『海の上のピアニスト』ですが、音楽劇は鍵盤男子としては初めての試みだったのでしょうか。
中村:僕はほかの舞台作品を作曲したことはあるんです。
大井:昨年が初舞台でした。舞台といいましても、僕はピアノを弾いている、ある意味バックバンド的な役割でしたので、実を言うと、普段とあまり変わらなかったですね。私のソロや鍵盤男子のライブのように普段通りに弾かせていただいたんです。ただ、一か所だけ演出家の遊び心で、セリフを言うシーンがあり、そこだけ、舞台はこんな感じなんだと味わうことができました。
――どんな感じでしたか?
大井:お客さんを前にセリフをしゃべるのは初めてなので、ピアノを弾くのとは違ってすごく緊張しました。
――ピアニスト大井健ではなくて、ノヴェチェントとして弾かれたのでしょうか。
大井:そうですね。そこが結構、難しくて、ノヴェチェントは北翔さんがされていたので、僕は彼女の音楽担当なんです。天才ピアニストがピアノを弾くシーンを北翔さんが弾くわけにはいかないので、僕が演奏しノヴェチェントになりました。
――役としては、北翔さんにノヴェチェントを委ねるということですね。
大井:そうですね。僕は黒子として演奏でノヴェチェントの心情が出せればと思っていました。
――北翔さんとはいかがでしたか。
大井:日々勉強させてもらいました。やっぱり元宝塚の方は、あらゆる訓練をされている。舞台に関しては、世界に誇る宝塚歌劇団の元トップスターの方ですし、その方と舞台に一緒に立てるだけで幸せでした。自分の中で変わったこととしては、この舞台をきっかけに、色んな芝居を見に行くようになりました。舞台に興味が湧きましたね。
中村:僕もそうですね。
大井:ミュージカルはあったんですが、セリフ劇は見に行ったことなかったんですよ。劇場に行くようになり、芝居に開眼してしまいました。
――北翔さんから何かアドバイスはありましたか。
大井:ええ、立ち方とか金言みたいなものは、常に北翔さんが紡ぎ出されるものですね。もう、目一杯、吸収させてもらいました。
――大井さんからは北翔さんにアドバイスはされなかったのですか。
大井:北翔さんがピアノを弾き真似するシーンは、残念ながらないので(笑)。弾き真似するシーンがあれば、何かお伝えしたいんですが(笑)。
◆公演情報◆
『海の上のピアニスト』
京都:2019年11月2日(土) 京都芸術劇場 春秋座
博多:2019年11月5日(火) 電気ビルみらいホール
東京:2019年11月13日(水)~11月15日(金) 北千住・東京芸術センター 天空劇場
※チケット各プレイガイドなどで発売中
[スタッフ]
作:アレッサンドロ・バリッコ
訳:草皆伸子
上演台本・演出:星田良子
作曲・音楽監督:中村匡宏
[出演]
京都・博多/北翔海莉・大井健・中村匡宏
東京/北翔海莉・喜多村緑郎・大井健
〈大井健プロフィル〉
TVCMやバラエティー番組などでも話題の『鍵盤の貴公子』。3歳よりピアノを始め、渡欧。メンデルスゾーンの子孫から直接薫陶を受け、海外コンクールで多数優勝。13歳でロンドンにてオーケストラと競演するなど演奏活動を開始。帰国後、2015年「Piano Love」(キングレコード)でソロメジャーデビュー。セカンドアルバム「Piano Love II」はビルボードクラシックチャートで1位を記録。ソニーのスマートフォン「Xperia」のTVCMが話題になるなど、ソロだけでなく「鍵盤男子」、舞台出演など幅広く活動中。その活躍は多くのメディアが取り上げている。
★大井健オフィシャルサイト
〈中村匡宏プロフィル〉
作曲家、ピアニスト。音楽博士号を持ち、さまざまな音楽ジャンルでマルチに活躍する鬼才。NHK Eテレ「ムジカ・ピッコリーノ」音楽制作出演協力。テレビ朝日「ピアノアレンジ王決定戦」初代チャンピオン。東京ニューシティ管弦楽団、東京室内管弦楽団などのプロオーケストラと指揮者、ピアニストとして共演。世界遺産「石見銀山」登録10周年記念事業オペラ『石見銀山』楽曲制作、指揮を任されるほか、メジャーアーティストのCD制作や舞台演出、作曲家、編曲家、音楽監督、ピアニスト、指揮者として活躍している。今、大注目の音楽家である。
★中村匡宏公式twitter
☆鍵盤男子ホームページ
☆鍵盤男子公式twitter
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