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『ディリリとパリの時間旅行』オスロ監督に聞く

「考える余地があれば観客とダンスを踊ることが出来る」

叶精二 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師

© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION拡大『ディリリとパリの時間旅行』 © 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

学生時代から好きだったロートレックの活躍を描く

――本作には100名を超える著名人が登場します。芸術家、音楽家、作家、女優、化学者から「シネマトグラフ」を発明したリュミエール兄弟まで、エキストラがあまりに豪華過ぎてとても判別しきれないのですが、もしかすると「アニメーション」の生みの親であるエミール・レイノーやエミール・コール、トリック撮影の始祖ジョルジュ・メリエスなどもどこかに登場していたのでしょうか。

オスロ 残念ですが、その人たちは登場していません。実は、メリエスの『月世界旅行』(1902年)のポスターは描いていたんです。でも、美術のチーフが画面に入れ忘れてしまったんですよ(苦笑)

――(チェコの画家)アルフォンソ・ミュシャのポスターの隣に『月世界旅行』が貼られているのを見たかったです(笑)

オスロ ええ。それを入れられなかったのは、私の永遠の恥だと思っています(笑)

――「洗濯船」(モンマルトルの若手画家が集うアトリエ)で若きピカソ、ルソー、マティス、シュザンヌ・ヴァラドンが一堂に集うシーンは圧巻です。オレルの背後の壁には葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』が飾られていましたね。

オスロ 北斎には若い頃から憧れていました。実際に当時のフランスではジャポニスムが大流行していましたから。この少し後に藤田(嗣治)もパリに来ますね。

――他にもモネ、ルノワール、ドガなど数多くの画家たちが登場しますが、とりわけロートレックが魅力的に描かれています。ロートレックを活躍させた意図について伺えますか。

オスロ ロートレックが大好きなのです。美術学校の最終学年の頃は、つい彼のように描いていたものです……。彼の作品にはカリカチュア(風刺画)風のものが多いのですが、美しく、かつ的確です。人間としてのロートレックも大好きです。身体的には恵まれてはいませんでしたが、それでも彼は人生を愛し、スペクタクル、楽しいこと、食事をすること(彼自身も料理をする人でした)が大好きだったのです。友人も多く、彼らを愛し、友人たちからも愛されていました。ロートレックは夭逝でしたが、彼の死後も、友情は続いたのです。というのも、友人たちはロートレックが忘れられないよう、彼の全作品が後世に残るよう万全を期して尽力したのです。

――高畑勲監督もロートレックが大好きだと著書(『一枚の絵から 海外編』2009年/岩波書店)で記されていました。

オスロ 私もスピーディーな描線で活き活きと描かれた彼の絵が大好きです。彼の興味の対象は唯一人間です(干し草の山や、ポプラの木には目もくれない)。ロートレックは鋭い眼力で人々の肖像を描き、そこに対象とのなれ合いといったものはありません。

――当時のパリには30近くの風車があったそうですが、「悪魔の風車」には実在のモデルがあったのでしょうか。

オスロ モンマルトルの丘にはたくさんの風車がありましたから、その中のひとつに悪魔的評判の風車があって、「男性支配団」のおぞましい隠れ家になっている――という設定は私のストーリーにはもってこいでした。それに、丘の上にあるという設定であれば、丘の上まで登ってその後、階段を一気に駆け下りるというシークェンスも描ける。それはぜひとも描いてみたいと思ったわけです。でも悪魔の風車は私の完全な創作ですよ。

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筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師

映像研究家。亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、『日本のアニメーションを築いた人々 新版』(復刊ドットコム)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)、『マンガで探検! アニメーションのひみつ』(全3巻、大月書店)など。

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