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『海の上のピアニスト』出演、鍵盤男子/下

鍵盤男子×北翔海莉が化学反応を引き起こす!

米満ゆうこ フリーライター


舞台ではピアニストの心情をリアルタイムで表現

拡大大井健(右)&中村匡宏=水本克美〈桑島写真スタジオ〉撮影
 

――二人とも映画版との出会いは?

中村:僕は日本のテレビで見ましたね。

大井:僕は映画をどこで見たのかなぁ、高校生のときに見ました。外国に住んでいたので、場所は覚えてないです。

中村:すごいピアニストがいるという大前提がありますが、凄腕ピアニストを表現するためにはどうすればいいかというと、ただ、すごい技を見せればいいというものでもないんですよね。そこが難しいところです。世界一足が速い人の劇があったとして、舞台上で世界一速く走ったとしても伝わらないのと同じで、そこを3人でどう表現するのかが見せ場ではないかと。前回は、ノヴェチェントと実在の人物でジャズピアニストのジェリー・ロール・モートンとのピアノ対決のシーンがあって、喜多村さんがモートンを面白おかしく表現したんですが、今回も期待してほしいですね。

大井:僕は『海の上のピアニスト』は恋愛映画だと思っていて、凄腕ピアニストというのは一つの記号だと思うんです。彼はピアニストとしてはすごかったけど、愛した人とは地上で会えなかった。貧しい境遇で育って、彼の人生そのものが映画のテーマだと思うんです。映画でもメインテーマの曲はすごいテクニックを使う曲でもなく、ロマンティックな曲だったんです。そういう意味でも、ピアニストはどういう心情でいるのかというのを作品で表現しているんだと思います。舞台だとそれがリアルタイムで表現できるので、すごく楽しみですね。

――小説ではノヴェチェントの弾くピアノは、「いまだかつて存在せず、どこにも存在したことのない音楽」という表現がされていますが、プレッシャーではなかったですか。

中村:映画ではノヴェチェント役のティム・ロスと、ほかの誰かが弾いているのをミックスしているんです。だから、普通では無理なことを簡単に編集でできてしまっている(笑)。舞台の上でそれはできないのでうらやましくはありましたが、そこだけフォーカスすると難しいかもしれません。僕は前回、全公演見ましたが、3人のキャストが良くて、涙も笑いもあり、すごく感動しましたね。大口をたたけば(笑)、今まで見たことがないような美しく新しいスタイルの音楽劇ではないかなと思います。派手なスタイルではなく、自分がピアニストでなくても共感が持てて、考えさせられるような舞台だと思います。

大井:新作なので、誰も聞いたことがない音楽であるのは確かです(笑)。

中村:アッハッハッ(笑)。

大井:映画にはない演出もあるから新鮮だと思いますし、現役のピアニストが舞台に出ることはなかなかないと思いますね。ピアニストが主人公の舞台をやるにしても、音楽は演奏者がオーケストラピットなどで弾いていたと思うんです。そういう意味では非常に斬新な舞台だと思います。

鍵盤男子なら色んなジャンルの音楽を色んな形で弾ける

拡大大井健(右)&中村匡宏=水本克美〈桑島写真スタジオ〉撮影
 
――先ほど、ジャズピアニストのジェリー・ロール・モートンと、ノヴェチェントとのピアノ対決があるとおっしゃっていましたが、これは実際にモートンの曲を使うのですか。

中村:今の時代に生きていて良かったなと思うんですが、モートンの書いた楽曲を全曲、研究しました。モートンはこの時代に、こんな音楽をこんなに書いているのか!みたいな、すごい人なんですよ。こんなピアノ弾けないでしょというぐらいなんです。すごく面白いシーンになると思います。

大井:モートンの曲を咀嚼して解釈した中村君の曲なので、僕は弾いていても普段と変わらなかったんです(笑)。

中村:モートンの曲を丸々ではなく、ちょっと加えたり、減らしたり。ピアノを上手に弾くのは頑張ればできるかもしれないけど、この場合は、難しいんですよね。

大井:モートンの吐息のようにピアノを弾くというか。

中村:そうそう。

大井:僕はクラシックの出身なので、ジャズは全くの専門外で、ジャズの演奏はできないんです。それをイメージして作ってもらったので、ジャズとクラシックをミックスしたジャズみたいな音楽という感じになっています。

――確かに、鍵盤男子にジャジーな楽曲はないですよね。

中村:僕も専門はクラシックなんですが、いい意味でクラシックは音楽の基礎みたいなところがあるので、すべてのジャンルにかんしては、もちろん勉強もしていますし、大井健が弾くとなれば、彼を一番よく知っていると自負しているので、そういう風に作らせてもらいました。

大井:最初にこの舞台のオファーが来たときも、彼が作るということで安心しましたし、鍵盤男子は作曲家とピアニストの組み合わせですから、色んなジャンルの音楽を色んな形で弾くことができる。これからも二人で挑戦していきたいですね。

――ノヴェチェントがピアノを弾きながらグルグルと回る「大海原と踊る」という、映画の有名なシーンも舞台では見どころでしょうね。

中村:舞台でもよくできています。前回は大海原に踊らされているような音楽を大井君が弾いていて、それに北翔さん、喜多村さんがゆられているという演技をしていて、その中で二人の友情が芽生えていくんです。すごくきれいなシーンですよ。今回はどうなるのかまだ分からないですが。

大井:曲もワルツで良かったですし、二人は熟練された方々だから、僕の演奏に合わせてくれるんです。そういう意味では、ヴァイオリンの演奏者と合わせるような感じで、すごく楽しかったですね。

◆公演情報◆
『海の上のピアニスト』
京都:2019年11月2日(土) 京都芸術劇場 春秋座
博多:2019年11月5日(火)  電気ビルみらいホール
東京:2019年11月13日(水)~11月15日(金)  北千住・東京芸術センター 天空劇場
※チケット各プレイガイドなどで発売中
[スタッフ]
作:アレッサンドロ・バリッコ
訳:草皆伸子
上演台本・演出:星田良子
作曲・音楽監督:中村匡宏
[出演]
京都・博多/北翔海莉・大井健・中村匡宏
東京/北翔海莉・喜多村緑郎・大井健

〈大井健プロフィル〉
 TVCMやバラエティー番組などでも話題の『鍵盤の貴公子』。3歳よりピアノを始め、渡欧。メンデルスゾーンの子孫から直接薫陶を受け、海外コンクールで多数優勝。13歳でロンドンにてオーケストラと競演するなど演奏活動を開始。帰国後、2015年「Piano Love」(キングレコード)でソロメジャーデビュー。セカンドアルバム「Piano Love II」はビルボードクラシックチャートで1位を記録。ソニーのスマートフォン「Xperia」のTVCMが話題になるなど、ソロだけでなく「鍵盤男子」、舞台出演など幅広く活動中。その活躍は多くのメディアが取り上げている。
大井健オフィシャルサイト

〈中村匡宏プロフィル〉
 作曲家、ピアニスト。音楽博士号を持ち、さまざまな音楽ジャンルでマルチに活躍する鬼才。NHK Eテレ「ムジカ・ピッコリーノ」音楽制作出演協力。テレビ朝日「ピアノアレンジ王決定戦」初代チャンピオン。東京ニューシティ管弦楽団、東京室内管弦楽団などのプロオーケストラと指揮者、ピアニストとして共演。世界遺産「石見銀山」登録10周年記念事業オペラ『石見銀山』楽曲制作、指揮を任されるほか、メジャーアーティストのCD制作や舞台演出、作曲家、編曲家、音楽監督、ピアニスト、指揮者として活躍している。今、大注目の音楽家である。
中村匡宏公式twitter
鍵盤男子ホームページ
鍵盤男子公式twitter

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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