真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ミュージカル「怪人と探偵」、切なくも情熱的でいろんな感情が渦巻いている
明智小五郎役の加藤和樹さんにお話を伺いました。稽古場の雰囲気や、楽曲、物語について、信頼しているという演出家・白井晃さんとのエピソードや、ジョン・レノン役として出演した『BACK BEAT』で気づいたことなど、役者・加藤和樹として語っていただきました。
稽古前に島健さんや白井さん、雪之丞さんたちとこっちの音が良いんじゃないか、こうした方が良いじゃないかと、楽曲について話し合いを重ねていたんですが、実際に稽古に入って芝居を創っていく中で、明智だったら僕の声に合わせたこのトーンが良いよねとか、ここは感情的になるからもう少しキーを上げたほうが良いねといった、新作ならではの稽古の仕方が行われています。これまでの何かを参考にするということがないので、稽古の中から生まれてくるインスピレーションを受けて、みんなで楽曲や芝居を創っています。
――その楽曲はどんな感じなんでしょう?
WEAVERの杉本さんが創られた曲に、雪之丞さんの心情に訴えかける歌詞がすごくマッチしていて聴き心地が良いんです。ミュージカルらしくないポップスのような楽曲なんですけど、それが作品の昭和な雰囲気と合っているんですよね。メロディラインがとても美しいです。
――少し拝見させてもらったのですがとても真っすぐな歌詞ですね。
そうですね。歌で物語を説明しなくてはいけないですし、そうするとちゃんと言葉が聞こえてこないとダメなので、お客さまに訴えかける難しさはあります。歌う難しさですね。説明し過ぎてもいけないですし、セリフもそうですが、どのように感情を入れたら良いのかが難しいです。明智だけでなく、櫻子さん演じるリリカの本心はどこにあるのか、アッキー(中川)さん演じる怪人二十面相の燃えたぎる感情をどう歌で紡いでいくのか……まだ探っている途中ですが、芝居を最後まで通せば見えてくるものがあるのではないかなと思っています。
――テーマ曲が東京スカパラダイスオーケストラさんです。PVを見るとテンションが上がります。
怪人二十面相の世界観とスカパラさんの歌があってますね。物語の要所要所で流れるんです。それに合わせて僕たちが動くんですけど、その動きからアクションに繋がったりしますす。アクションと振りが融合していたり、急にダンスシーンになったり、またアクションに戻ったり。明智&警察vs.怪人二十面相チームという図式がおもしろく、殺陣師の渥美博さんや振付の原田薫さんが入ってくださっているので、ちゃんと身体のぶつかり合いとして表現されていますし、音楽の中で立ち回りが行われるところも見所かなと思います
台本を読んだとき、単純に読み物としておもしろいなと感じましたし、とてもわかりやすい内容です。それぞれの心の動きやその裏にある本心、そして今回のテーマにもなっている愛、その愛はどこにあるのか、それらの表現の仕方が三者三様なんです。よく“正義と悪”という描かれ方をされますが、果たしてどちらが正義でどちらが悪なのか……。僕が演じる明智も“正義を掲げて悪を滅する”といった純粋な思いではないんじゃないか、器用そうに見えて本当は不器用で、まっすぐそうだけど意外と心の中が歪んでいたり、そんな風に考えたりします。「陰と陽」、「善と悪」、といった対になるものって似てる部分もあると思うんですよね。明智と怪人二十面相も心のどこかでお互いをリスペクトしていて、何か自分と近いものを感じている。だからこそお互い惹かれ合っているし、追って追われてという関係性が成り立っているのかなと思います。すごく特殊な関係だと思うんですよね。
――なるほど。
お互いがそれぞれの存在意義になっているんだけど、そこにリリカが入ることでそのバランスが崩れていく。そこからひとつの愛をめぐる物語になっていくというのが非常にわかりやすくも切なく、でもとても情熱的ですし、嫉妬や憎しみといったいろんな感情が渦巻いている作品だなと思います。
◆公演情報◆
ミュージカル『怪人と探偵』
横浜:2019年9月14日(土)~9月29日(日) KAAT神奈川芸術劇場〈大ホール〉
兵庫:2019年10月3日(木)~10月6日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原案:江戸川乱歩
作・作詞・楽曲プロデュース:森雪之丞
テーマ音楽:東京スカパラダイスオーケストラ
作曲:杉本佑雄治(WEAVER)
音楽監督:島健
演出:白井晃(KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
[出演]
中川晃教、加藤和樹、大原櫻子
水田航生、フランク莉奈、今拓哉、樹里咲穂
有川マコト、山岸門人、中山義紘、石賀和輝
高橋由美子、六角精児 ほか
〈加藤和樹プロフィル〉
2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴びる。翌年Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。2009年には韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、国内外で精力的な音楽活動を行う傍ら、舞台・ミュージカル・映像作品にも多数出演し、俳優・声優としても活躍の場を広げている。近年の主な出演作品は、『BACKBEAT』、『暗くなるまで待って』、project K『僕らの未来』、『1789-バスティーユの恋人たち-』、『マタ・ハリ』、『ハムレット』など。11月から『ファントム』、2020年1月から『フランケンシュタイン』への出演が決まっている。また、新曲「Tell me why」を9月11日に配信シングルとしてリリース。2020年6月から、一人でステージに立つ全国ツアー「Kazuki Kato Road Tour 2020 ~Thank you for coming! 2~」とTHE DRASTICSと廻る東阪バンドバージョン「Kazuki Kato Live GIG 2020~タイトル未定~」を、過去最多となる全国24ヶ所(25公演)で開催される。
★加藤和樹公式ホームページ
★加藤和樹公式twitter
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