メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

『週刊ポスト』に批判が噴き出した日本社会の空気

篠田博之 月刊『創』編集長

週刊ポストの特集「韓国なんて要らない」拡大『週刊ポスト』の特集「韓国なんて要らない」(9月13日号)

 9月2日発売の『週刊ポスト』9月13日号の特集「韓国なんて要らない」が大きな批判にさらされ、いろいろな議論が起きている。

 実は、同誌は7月から嫌韓特集とでもいうべきキャンペーンを続けていた。8月2日号は「『日韓断交』で韓国経済は大崩壊!」と題して、韓国では盛んに不買運動を呼号しているが、断交したら打撃を受けるのは韓国の方だ、という趣旨で、今回騒動になった「韓国なんて要らない」とよく似た特集だ。8月9日号には「反響囂々(ごうごう)、第2弾」と表紙に掲げているから売れ行きにもつながったらしい。

 それで気をよくして次々とキャンペーンを続けたのだろう。8月9日号には「韓国が繰り出す『嘘』『誇張』『妄想』を完全論破する『日本人の正論』㊿」という特集を掲げている。韓国での反日運動の映像を連日、見せつけられてナショナリズムを高揚させていた日本人の空気を読んだのかもしれない。

 ところが今回、「『嫌韓』ではなく『断韓』だ/厄介な隣人にサヨウナラ/韓国なんて要らない」と表紙に大書した特集が、激しい批判にさらされ、謝罪に追い込まれた。もしかすると編集部は、これまでもやっていたのになぜ今回?という気持ちかもしれない。いったい今回の騒動で何が起きたのか。整理して検証しておこう。

 騒動の経緯は新聞・テレビで報道されているが簡単にたどっておこう。9月2日発売の『週刊ポスト』9月13日号が表紙に「『嫌韓』ではなく『断韓』だ/厄介な隣人にサヨウナラ/韓国なんて要らない」と大書していたことは前述した。実はその脇に「『10人に1人は治療が必要』(大韓神経精神医学会)――怒りを抑制できない『韓国人という病理』」という見出しも掲げていた。「ヘイト」「差別」だという批判を浴びて同誌が謝罪した大きな要因のひとつは、こちらの記事と見出しでもあった。同誌の「謝罪文」(9月2日付)はこう書かれていた。

《週刊ポスト9月13日号掲載の特集『韓国なんて要らない!』は、混迷する日韓関係について様々な観点からシミュレーションしたものですが、多くのご意見、ご批判をいただきました。なかでも、『怒りを抑えられない「韓国人という病理」』記事に関しては、韓国で発表・報道された論文を基にしたものとはいえ、誤解を広めかねず、配慮に欠けておりました。お詫びするとともに、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります。(『週刊ポスト』編集部)》

 発売当日に謝罪文を出すというのはかなり迅速な対応だが、きっかけになったのは作家らがその朝からSNSで批判を立ち上げたことだ。特に拡散されて話題になったのは以下のようなものだ。

《深沢潮 わたし、深沢潮は、週刊ポストにて、作家たちのA to Zという、作家仲間6人でリレーエッセイを執筆しています。しかしながら、このたびの記事が差別扇動であることが見過ごせず、リレーエッセイをお休みすることにしました。すでに原稿を渡してある分については掲載されると思いますが、以降は、深沢潮は、抜けさせていただきます。ほかの執筆陣の皆様には了解を得ています。》
《内田樹 というわけで僕は今後小学館の仕事はしないことにしました。幻冬舎に続いて二つ目。こんな日本では、これから先「仕事をしない出版社」がどんどん増えると思いますけど、いいんです。俗情に阿らないと財政的に立ち行かないという出版社なんかとは縁が切れても。》
《葉真中顕 ポスト見本誌見て唖然とした。持ち回りとはいえ連載持ってるのが恥ずかしい。表紙や新聞広告に酷い見出し踊らせてるけど、日本には韓国人や韓国にルーツある人もいっぱいいるんだよ。子供だっているんだよ。中吊り広告やコンビニでこれ見たらどういう気持ちになると思ってんだよ? ふざけんなよ。》

 執筆陣からの批判、しかも執筆拒否を伴うものだっただけに注目されたのだろう。あっという間に拡散した。そして多くの『週刊ポスト』批判のコメントが書き込まれたのだが、まだその時点では『ポスト』の記事自体は読んでおらず、新聞広告やネットに上がった同誌の表紙などを見て反応した人も多かったようだ。確かに同誌の新聞広告は「韓国なんて要らない!」の見出しがドーンという感じで大書されたもので、相当目立っていた。こういう広告を掲載した新聞の掲載責任はどうなのだという批判さえも起きたほどだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!