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映画「蜜蜂と遠雷」の大きな魅力と少しの限界

映像化不可能のW受賞作に挑んだ豪華キャスト「音にできない文章を音にする」

市川速水 朝日新聞編集委員

音の使い方はすごい!

 例えば風間塵の演奏の衝撃は、やはり再現できないと思った。再現というか、元々存在しない神のようなパフォーマンスなのだから、仕方がない。

 全体的にも、長編を短い映像にする過程で予選の部分を大幅にカットしたため、主役級4人以外のライバルたちの存在感がまったく消えてしまい、コンクール全体の非日常感が薄まってしまった。

 「仕方ない」というのは、原作の味わいを知れば知るほど、物足りなかったり説明不足と感じたりする点が惜しまれる気持ちからなのだろう。

 一方で「すごい」のは、音だ。音楽の使い方だ。

 音楽の表情と俳優たちの演技がぴったりと合っている。

 陰のある栄伝亜夜のピアノは、ドイツを拠点に活躍する河村尚子が担当した。社会人ピアニスト・髙島明石の演奏は福間洸太朗、貴公子マサルは金子三勇士、天才少年・風間塵を藤田真央という、日本を代表する若手ピアニストがそれぞれ演奏している。

 プロのピアニストたちは小説を読み込み、俳優たちは臨場感が出るように全身から肘、指先までの動きを徹底的に観察・研究したという。

拡大W受賞した「蜜蜂と遠雷」。文庫(上下巻)にもなった

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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