メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

中尾ミエインタビュー/上

『ザ・デイサービス・ショウ』、等身大の自分で演じられる作品をやりたかった

真名子陽子 ライター、エディター


 中尾ミエさんが主演・企画・プロデュースするオリジナルミュージカル『ザ・デイサービス・ショウ 2019~It's Only Rock'n Roll~』の全国ツアーが10月5日からスタートします。埼玉・志木公演を皮切りに、11月7日の神奈川の相模原公演まで16カ所で上演される今作は、今回が5度目の上演で公演回数は87回。グランドフィナーレと銘打たれた今公演について、中尾ミエさんにお話をお伺いしました。

 この作品をプロデュースしようとした思いや介護現場について思うこと、理想のデイサービスとは?といった現実的なお話から、若い方や4~50代の女性へ向けたメッセージも伺っています。そして、出演されたミュージカル『ピピン』で魅せた空中ブランコなどのアクロバットについても語ってくださいました。いくつなってもなんでもできる、を体現されていらっしゃるミエさんから、歳を重ねることへの勇気と楽しみをいただけるインタビューとなりました。

〈ストーリー〉
 とある高齢者施設。かつてのスター・矢沢マリ子(中尾ミエ)は、デイサービスにやって来てミニコンサートを開催。施設には、いろんな高齢者が集まって来る。マリ子は考えた。みんな長く生きてきた大先輩たち、持っている特技はひとつやふたつではないはず。それを復活させよう。このメンバーでショウを創ろう。
 しかし、施設長は反対する。ノリ気な大多数の一方、ロックは嫌いだと突っぱねるおじいさんや見当識障害で参加困難なおじいさん、内に閉じこもってしまったおばあさん……。ひと癖もふた癖もあるデイサービスの面々をマリ子はまとめられるのか?無事にショウはできるのか?
唱歌も童謡もいいけれど、私たちが本当に好きなのはポップス、そしてロックンロール!というおじいちゃんおばあちゃんたちの痛快ミュージカル。みんなで老後を突っ走れ!

高齢者の方たちに見て欲しいと思って創った

拡大中尾ミエ=岩田えり 撮影
 
――2015年に初めて上演されていますが、この作品をプロデュースしようと思われたきっかけは?

 前身に『ヘルパーズ!』(2008年~2013年)というミュージカルがありまして、その続編という形で『ザ・デイサービス・ショウ』を創りました。どうしても演劇は若者を対象にした作品が多いんだけど、私は今の等身大の自分で演じられる作品をやりたかったんです。だからこの作品は若者を対象に創っていなくて、高齢者の方たちに見て欲しいと思って創りました。そういう作品はほとんどないから自分で創るしかないと思ってね。

――なるほど。

 高齢者というだけで気を遣われるんだけど、そんなに気を遣ってくれなくてもいいのよ。当事者が一番わかってるじゃないですか、もっとこういうことができるのよって。そういうことは当事者が表現しないと伝わらないですよね。出演者のバンドのメンバーのほとんどの方は、一から楽器を始めているんです。できる方にやってもらっているんじゃなくて、この作品のために覚えてくれました。5年目になりますが、作品をしていない時期も音楽教室に通って練習してくれたり、自分で楽器を買って練習していたり、思っていた以上に皆さんが楽しんでやってくれています。だから毎回、ステージがレベルアップしています。

――初演時の反響はいかがでしたか?

 今、高齢者といっても若くて元気だからね。私は団塊の世代だからものすごく人口が多いんです。だからどの地方に行ってもたくさんの方が観に来て下さいますし、手前味噌だけど、どこも満員なんですよ。そして、終わったときの拍手の質が違うの。義理でしているのではなく、心から本当に楽しんで拍手をしてくれているのがわかるんです。私も出演しているんだけど、みんなを見ているのがすごく楽しくて、幕が空いたら楽屋に一度も戻らずにずっと袖から見ているんです。あとね、毎年来ていますっていうリピーターのお客さまも多いんです。車椅子で来てくださったり、90歳を超えてる方も来てくださっています。

――そうなんですね。

 でね、終わったらロビーに出て、すごく派手なTシャツなどのグッズを売ってるんです。年寄りになったら派手なものを着ないとダメだからね。お客さまはミュージカルを観て元気になっているから、そういうものを着てみようっていう気になるんでしょうね、楽しそうに買っていってくれます。高齢者の方も派手なTシャツを着るだけでも気持ちが上がるんですよ。出演者の皆さんも着たいと言ってくれるから、ステージ上で着てもらっています。

よくぞここまで言ってくれましたと

拡大中尾ミエ=岩田えり 撮影
 
――台本を読ませていただいたんですが、介護施設の現実の問題点を描きつつもエンターテインメントとしての楽しさがあって、一気に読ませていただきました。

 また観たら全然違うわよ。まさか生で演奏してると思わないんですよね。それも1曲だけじゃないから。

――そうですね。歌の歌詞もとてもリアリティがあって、親の介護が迫っている者としては身につまされます。

 書いて下さった山口健一郎さんは実際に介護の資格を持っていて、介護現場で働いているんです。だから彼が経験していることが反映されています。現実的な裏のこともわかるから厳しいことも言えるわけです。やっぱりこれも当事者じゃないとわからないじゃない。きれい事じゃないから現実はね。介護関係のお仕事をされている方も観てくれていて、よくぞここまで言ってくれましたって喜んでくれています。介護の現場は働いている人が楽しくないとダメなんですよ。大変だったら続かない。でも最近は、いろんなバリエーションのデイサービスが増えてきています。私もいろんな施設へ行くんだけど、おもしろいことをしている施設もすごく増えてきているなと感じます。いい傾向になってきていると思いますよ。

◆公演情報◆
オリジナルミュージカル
『ザ・デイサービス・ショウ 2019~It's Only Rock'n Roll~』
[公演日程]
2019年10月5日(土) 埼玉・志木市民会館パルシティ
2019年11月7日(木) 神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
ほか全国ツアー公演あり
公式ホームページ
[スタッフ]
作・音楽: 山口健一郎
演出・振付: 本間憲一
プロデュース: 中尾ミエ
[出演]
中尾ミエ/尾藤イサオ/光枝明彦/モト冬樹/正司花江/初風諄
北村岳子/土屋シオン/tohko

〈中尾ミエプロフィル〉
 1962年、「可愛いベイビー」でデビュー。その大ヒットで、一躍スターとなる。中尾ミエを中心に、伊東ゆかり、園まりと共に「三人娘」としてトリオを組み、一時代を築く。デビュー当時から、歌だけでなく映画やテレビドラマでも活躍し、1963年には歌手では初めて映画製作者協会から新人賞を受賞している。表現力の豊かさ、洒落たおしゃべりには定評がある。森山良子との絶妙なコンビで行っていたトーク番組「ミエと良子のおしゃべり泥棒」などでは、その魅力を発揮し長い間人気を博していた。バラエティーでも大いに活躍しており、中尾ミエのキャパシティーの広さを物語っている。
中尾ミエ公式ホームページ

・・・ログインして読む
(残り:約1604文字/本文:約4537文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

真名子陽子の記事

もっと見る