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阿部サダヲ演じる『いだてん』田畑、その実像は

大河ドラマが描かなかった新聞記者の顔

前田浩次 朝日新聞 社史編修センター長

 NHK大河ドラマ『いだてん』の主人公、田畑政治(1898~1984)。1964年の東京オリンピック招致に尽力したこの人、戦前は朝日新聞の政治記者だった。
 ドラマでは阿部サダヲが、早口で、そそっかしくて、情熱家で、水泳と自由を愛する「河童のまーちゃん」として、魅力的に演じているが、実際の田畑とは、どんな人物だったのか?
 『いだてん』のオープニングでは「新聞考証」とクレジットされている朝日新聞社史編修センター長、前田浩次が、史料をもとに、ドラマでは描かれなかった田畑の素顔にせまる。

二足のわらじで激動の時代を駆け抜けた

『いだてん』田畑拡大新聞記者時代の田畑政治=田畑家のアルバムから

 番組ホームページによると、『いだてん』は10月20日から「1964年東京オリンピック篇」に入る。古橋広之進役に北島康介、「東洋の魔女」と呼ばれたバレーボールチームの主将・河西昌枝役に安藤サクラ、記録映画の市川崑監督役に三谷幸喜、国立代々木競技場を設計した建築家丹下健三役に松田龍平、などなど、出演者にも、「そう来たか」と思わせる顔ぶれが並んでいる。

 さて、水泳指導者と朝日新聞記者の二足のわらじを履く、主人公の田畑政治。これまでドラマでは、水泳に没頭していたように描かれてきたが、それは番組終わりで断っているように「史実に基づいたフィクション」。朝日新聞社の記録や当時の上司・同僚・後輩の回想からは、戦争に突入した激動の時代を駆けた政治部記者の姿が現れてくる。

 1924年(大正13)5月1日に、田畑は朝日新聞社に入った。

 朝日新聞社は23年3月から、大学卒業者を入社試験で採用する制度を始めていた。この年の9月の関東大震災で東京の社屋内が全焼したが、新聞発行をすぐに再開して人材は必要だったために、2年目の採用試験は行われた。田畑はこれを受けた。

 編輯局(へんしゅうきょく)の幹部だった緒方竹虎が、戦後の社内座談会で回想している。

 「(採用試験の面接には)村山龍平社長も出て来られて品定めをしておられた。あの顔はよさそうだから採ってやれというので、田畑政治君なんか、おめがねにかなっていたようだったね」

『いだてん』田畑拡大関東大震災で焼けた東京朝日新聞社。手前から右奥へのびる道が、現在の銀座・並木通り

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筆者

前田浩次

前田浩次(まえだ・こうじ) 朝日新聞 社史編修センター長

熊本県生まれ。1980年入社。クラシック音楽や論壇の担当記者、芸能紙面のデスクを経て、文化事業部門で音楽・舞台の企画にたずさわり、再び記者として文化部門で読書面担当とテレビ・ラジオ面の編集長役を務めたあと、2012年8月から現職。

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