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伊礼彼方スペシャルインタビュー/上

演劇を観る人を増やしたいという思いが音楽活動につながっている

真名子陽子 ライター、エディター


 ジャベール役で出演した『レ・ミゼラブル』(=レミゼ)の全国公演を終わり、次回作の舞台『相対的浮世絵』(10月25日~)では、初めて本多劇場に立つ伊礼彼方さんにお話を伺いました。帝国劇場から本多劇場、レミゼでは朗々と歌い上げていたのに、次は一切歌なし! この振れ幅の大きさが伊礼さんの魅力のひとつではないでしょうか。さらに、4月にはミュージカル・カバーアルバム「Elegante」を藤井隆さんのレーベルからリリースし、音楽活動も再開された伊礼さん。藤井さんとの出会いからそこに至った経緯や、なぜ音楽活動を再開しようと思ったのか、レミゼの舞台に立って何を感じたのか、40代はスター路線でいきたいと言うその真意とは……伊礼彼方さんが“今”感じている“あれこれ”をたっぷり語っていただきました。

役者にのめり込んで音楽はきっぱり捨てた

拡大伊礼彼方=森 好弘 撮影
 
――今回、藤井隆さんのレーベル、SLENDERIE RECORDから、ミュージカル・カバーアルバム「Elegante」をリリースされました。

 藤井さんとは2014年に鴻上尚史さんの舞台で初めてご一緒したんです。藤井さんと相手役のような関係性だったのもあって、よく休憩スペースでセリフ合わせをしたり、他愛無い話をしたりしてとても気が合ったんですね。とても温かい人で大好きになったんです。その稽古の中盤くらいに藤井さんが突然、「伊礼さんに椿鬼奴とデュエットしていただけたらおもしろいと思うんだけどなあ……僕、企画してるんです!」って言って来られて(笑)。「お笑いじゃなく?」「お笑いではないです。ボケもなく、本気です!」っていう会話があって、「伊礼さんには王子さまのように出ていただいて、椿鬼奴をお姫様抱っこするのが見えてるんです」と。それが藤井さんと一緒に創るきっかけだったんです。

 それからお互いの舞台を見たりして4年経った昨年の夏に、レコーディングをさせていただきました。「あの話、生きてたんですね!?」「当たり前じゃないですか! 私は伊礼さんのことを忘れた事はありません!」なんて言ってくださって(笑)、その間企画を練って考えられていたんですよ。それが虚構のアニメ「超空のギンガイアン」で、まさかの郡司聖也と言う役もいただいて、藤井さんが手がけられた素敵な曲を歌わせていただきました。元々、CDを出したいと思っていましたし、レミゼも決まりそろそろ音楽をやっていこうかな、やってもいいかなという思いもあったんです。歌って欲しい、ライブをやってくださいというリクエストもいただいてましたし。

――元々は音楽から芸能活動をスタートしていますよね。

 そうなんですけど、音楽では挫折を味わっているんですよね。ある出会いからミュージカルの世界でお芝居をやらせていただくようになって、人様の音楽にのって歌った方が気持ちよくて、役を演じることがおもしろくなっていきました。役者にのめり込んでいったので、その時点で音楽はきっぱり捨てました。1本でも多く舞台に出たいと思うようになっていったんです。

――その中で、そろそろ音楽をしたいと思うように?

 でも、舞台に出させてもらえるようになったからといって、急に歌手やりますなんておこがましいという気持ちと、でもやっぱり音楽をやりたいという気持ちがありました。

ひとつの役を長くやっていきたいと思うように

拡大伊礼彼方=森 好弘 撮影
 
――そうやって揺れ動く中、それでも音楽をやろうと思われたのは?

 役者としてここまで続けてきた中で、いろいろと考えるようになっていたんです。

――それは何でしょう?

 年齢とともに役者としての経験も増えて、そろそろひとつの役を長くやっていきたい、役を掘り下げたいと思うようになってきました。最初はミュージカルのことなんてまったく知らなかったですし、役者って何?という状態でしたから、とにかく多くの演出家、多くの役者に出会い、多くの作品に出ることを目標にしていました。それはもちろん自分の財産になっているんですが、せっかく堀り下げた役があっという間に終わってしまう寂しさがあるんですね。役をやりながら次の役のことを考えないといけない時期もあって。役を演じるって意外と精神的に消耗するんです。

――確かに終わってしまう切なさがありますよね、舞台って。

 そうなんですよね。ありがたいことにオファーをいただいて経験を重ねる中で、ひとつの役を長く演じることがすごく素敵だなと思うようになりました。飽き性だから本当はそのスタイルは合わなくて、できるだけ新しいカンパニー、新しい作品に出会うことで自分自身が活性化されて、刺激をもらってインプットをしてきたんですけれども、それをこれからはひとつの役にアウトプットをしていきたい、そう思うようになったんです。

◆伊礼彼方 今後の出演情報◆
『STAND UP!CLASSIC FESTIVAL 2019』
2019年9月28日(土)~9月29日(日) 横浜赤レンガ倉庫特設会場
公式ホームページ

舞台『相対的浮世絵』
2019年10月25日(金)~11月17日(日) 東京:下北沢 本多劇場
2019年11月22日(金)~11月24日(日) 大阪:COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール
公式ホームページ

『伊礼彼方ソロライブ @COTTON CLUB』
2019年12月18日(水) COTTON CLUB

ミュージカル『ミス・サイゴン』
2020年5月19日(火)プレビュー初日~6月28日(日) 帝国劇場
2020年7月~9月 全国公演あり
公式ホームページ

ミュージカル『Beautiful』
2020年11月 帝国劇場
公式ホームページ

〈伊礼彼方プロフィル〉
 沖縄県出身の父とチリ出身の母の間に生まれる。幼少期は海外(アルゼンチン)で過ごし、その後、横浜へ。中学生の頃より音楽活動を始め、ライブ等で活動しながらミュージカルと出会う。その後、舞台を中心にミュージカル以外にもストレートプレイや朗読劇、歌舞伎、ライブコンサートなどジャンルや役柄を問わず、幅広い表現力と歌唱力を武器に多方面で活動中。
公式ホームページ

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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