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歴史ものが見せる現代

 さて実際に21本を見ると、まず一番に多いのは歴史もの、それも近現代史を批判的に取り上げた映画だった。金獅子賞のトッド・フィリップス監督の『ジョーカー』(10月4日公開)は、アメリカのコミック『バットマン』で知られる悪役のジョーカーを描く。もちろん原作もその後の映画化された作品も架空の物語だが、今回の『ジョーカー』は妙にリアル。舞台のゴッサム・シティはどう見ても1970年代から80年代のニューヨークで、映画はジョーカーが誕生するまでを描く。

金獅子賞を受賞したトッド・フィリップス監督『ジョーカー』 (c)Nico Tavernise拡大金獅子賞を受賞したトッド・フィリップス監督『ジョーカー』 (c)Nico Tavernise

 アーサー(ホアキン・フェニックス)は売れない芸人で、老いた母と暮らしながらロバート・デ・ニーロ演じるスター俳優が司会をするバラエティ・ショーを楽しみにしている。ある時友人から銃をもらうが、それが原因で所属事務所を追い出される。路上で大道芸を披露していると若者たちに襲われる。そして地下鉄で真っ白なジョーカー・メイクをしていると、会社員に暴力を受けて、銃に手をかける。まるで格差社会の底辺にいる男が、やむにやまれず殺人を犯してしまうさまを描いたかのようだ。娯楽作でありながら、現代社会の矛盾を映し出す後味の悪い作品だ。

 銀獅子賞(審査員大賞)のロマン・ポランスキー監督『私は弾劾する』は、

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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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