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「新御三家」の登場と『夜のヒットスタジオ』

太田省一 社会学者

1970年代、本格的アイドル時代へ~「新御三家」登場

 さて、ここで考えてみたいのは、「御三家」はアイドル歌手か?ということである。

 確かにアイドル歌手と言えば、同世代の異性に熱狂的に支持される若手歌手を思い浮かべるひとは少なくないだろう。その場合、年齢がアイドル歌手か否かを判断する基準になっている。その意味では、全員が10代でデビューした「御三家」はアイドル歌手の条件を満たす。3人ともに同世代のファンの青春を彩ったアイドル歌手ということになる。

 しかしこの連載の考え方に照らせば、「御三家」は「ヤング」ではあっても、成長のプロセスを見せることに重きを置いた「アイドル」ではなかった。

 第1回(「ビートルズからGSへ――ジャニーズの好敵手登場」)でも述べたが、現在私たちが「アイドル」と呼ぶのは、単なる年齢の問題ではなく、努力し成長するプロセスを見せる存在に対してである。たとえば、平成を代表するアイドルであるSMAPなどは、年齢の壁を越えてアイドルが存在し得るということを示した好例と言えるだろう。

 すなわち、ある面では未熟ということでもあるが、それ以上に成長の余地を残した未完成さの魅力が勝る存在であり、それに伴いそれぞれの素の部分の魅力が重要になる存在。それが私たちの呼ぶアイドルである。その意味において「御三家」は、厳密にはアイドルとは言い難い。

一世を風靡した「御三家」。左から西郷輝彦さん、橋幸夫さん、舟木一夫さん=2000年拡大60年代にそろってデビュー、一世を風靡した「御三家」。左から西郷輝彦さん、橋幸夫さん、舟木一夫さん=2000年

 そうした意味におけるアイドルが登場するようになったのは、1970年代のことである。

 その際、テレビの果たした役割は大きかった。一般人の少年少女が歌手デビューするに至るまでの成長のプロセスを逐一見せたオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系、1971年放送開始)は、

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筆者

太田省一

太田省一(おおた・しょういち) 社会学者

1960年、富山県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビ、アイドル、歌謡曲、お笑いなどメディア、ポピュラー文化の諸分野をテーマにしながら、戦後日本社会とメディアの関係に新たな光を当てるべく執筆活動を行っている。著書に『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論――南沙織から初音ミク、AKB48まで』(いずれも筑摩書房)、『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』、『中居正広という生き方』(いずれも青弓社)、『SMAPと平成ニッポン――不安の時代のエンターテインメント 』(光文社新書)、『ジャニーズの正体――エンターテインメントの戦後史』(双葉社)など。最新刊に『ニッポン男性アイドル史――一九六〇-二〇一〇年代』(近刊、青弓社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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