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評/月組『I AM FROM AUSTRIA』

家族と故郷の愛が沁みる、オーストリア発ミュージカルに珠城りょうが挑戦

さかせがわ猫丸 フリーライター


 月組公演、UCCミュージカル『I AM FROM AUSTRIA-故郷(ふるさと)は甘き調(しら)べ-』が、10月4日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 日本オーストリア友好150周年記念を飾るこの作品は、『エリザベート』、『モーツァルト!』などの大ヒット作を生み出したウィーンミュージカルで、2017年9月に本国で初演され、異例のロングランヒットを飾りました。「家族」や「故郷」をテーマに、コメディ要素も満載の話題作に、月組トップスターとして脂ものってきた珠城りょうさんが挑みます。

 老舗ホテルの跡継ぎジョージ・エードラーは、伝統を重んじる両親にあれこれ言われながらも、若者らしい革新的改革で“五つ星”獲得を目指していたが、ハリウッド女優エマ・カーターの来訪から思わぬ事件に発展してしまい……。

 エマにはトップ娘役の美園さくらさん、エマを操るマネージャーに月城かなとさん、花組から戻ってきた鳳月杏さんがダンディなパパを演じ、暁千星さんがサッカー界のスーパースターと、個性豊かなキャラクターが勢ぞろいし、海外ミュージカルの面白さをたっぷりと魅せてくれました。(以下、ネタバレがあります)

拡大『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』公演から、ジョージ役の珠城りょう=岸 隆子撮影

 ――四つ星を掲げる老舗ホテル・エードラーでは、特別な一日が始まろうとしていた。ウィーン出身のハリウッド女優、エマ・カーター(美園)がオペラ舞踏会に出席するため、このホテルに滞在するのだ。トップシークレットのはずが、浮足立つ従業員の一人、フェリックス・モーザー(風間柚乃)が思わずSNSに投稿したことで、あっという間に世間に広まってしまう。ホテルの御曹司ジョージ・エードラー(珠城)は話題作りのため自分がやったとかばうが、ゴシップ記者が押しかけホテルは大混乱となった。

 ホテル・エードラーは老舗ホテルで、社長をつとめるジョージの母ロミー(海乃美月)と父ヴォルフガング(鳳月)は、伝統と格式を重んじています。しかし、ジョージは時代に合わせた改革が必要だと、次々と新しい試みにチャレンジしていました。

 珠城さん演じるジョージはいわゆるお坊ちゃまですが、きちんと信念を持って自分なりにまっすぐ生きています。しかし、両親にはふわふわしていて頼りなく見えるのか、いつもガミガミ怒られてばかり。あれ?この構図、なんだか一般家庭にもあるあるな光景かも……。

 根が真面目でおおらかで優しくて、そんなキャラクターは、まさに珠城さんにぴったりでしょう。衣装はウィーンで有名なお菓子ザッハトルテを思い出させる色合いを始め、ダーク系が多いのですが、ジャケットを脱いでシャツ一枚になっても、バランスのいいスタイルはさすが。シンプルな衣装がより一層、男役としての華やかさを際立たせています。

 相手役が愛希れいかさんから美園さんに代わっても、持ち前の包容力で力強くリードし、やさしく余裕ある演技に、珠城さんのトップスター生活も充実期に入ったことを実感しました。

 騒動の発端となったSNSを発信するフェリックスを演じるのは風間さん。このところワイルドな役が続いていましたが、今回は等身大の若者です。ジョージとは仲良しの友人で、なにかとミスするドジっ子キャラですが、とにかく可愛くて憎めません。意外なことに最後まで目が離せない人物であることもお忘れなく。

◆公演情報◆
日本オーストリア友好150周年記念
UCCミュージカル
『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』
2019年10月4日(金)~11月11日(月) 宝塚大劇場
2019年11月29日(金)~12月28日(土) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
作曲・作詞:ラインハルト・フェンドリッヒ
脚本:ティトゥス・ホフマン、クリスティアン・シュトゥルペック
オリジナル・プロダクション:ウィーン劇場協会
潤色・演出:齋藤 吉正

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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