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城田優が『ファントム』で主演・演出!

役者の仕事を生かし、自分の世界観を具現化したい

米満ゆうこ フリーライター


 ミュージカル界を牽引し、今年芸能生活20周年を迎える城田優が、自身が2014年に主演した『ファントム』に再び挑戦する。今回はファントム役を加藤和樹とWキャストで演じ、今作の初演出も担う。「小さいころから部屋で玩具を使って、物語・設定を作って考えるのがすごく好きでした。クリエイティブなことにもともと興味があったんです」という城田が、大阪市内で取材会を開き、作品にかける思いや、演出のプラン、演出法などについて熱く語った。

怪人の家族愛や人間らしさが詰まった作品

拡大城田 優=岸 隆子撮影/衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO、スタイリスト:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

 『ファントム』はフランスの小説家ガストン・ルルーが1910年に発表したベストセラーで、それを基にしたアンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカル『オペラ座の怪人』は説明するまでもなく有名だ。『ファントム』は、ブロードウェイの有名作曲家モーリー・イェストンと、脚本家アーサー・コピットにより製作され、醜い容姿で生まれ、オペラ座の地下で生活する怪人エリックのおいたちや彼の父親との関係性などを軸に描かれる。

 城田は「エリックがなぜ、怪人にならなければいけなかったのか、その背景や家族の愛の物語がすごく印象的で感動的。この作品はもう一つの『オペラ座の怪人』なんです。そう言わなきゃいけないのはちょっと悔しいんですが、この作品の良さがもっともっと世間に浸透すればいいのにと思います。モーリー・イェストン版の魅力をより知っていただきたいですね。『オペラ座の怪人』と聞くと、幻想的なお化けが出てくるなどファンタジーのイメージを持たれがちですが、実は怪人のエリックは、家族愛や他者への憧れ、誰もが持っているコンプレックスなど、色んな人間らしい要素があり、それが物語を作っているんです。一度見るとハマってしまうような魅力の詰まった作品です」と話す。

僕が演出することで何か一つでも広がれば

 今回、主演と演出の両方でオファーを受けた。「2014年の『ファントム』でやり残したことや、もっと素敵にお客さまに届けることが出来たのではないかという悔いも残っていました。再演があったらぜひやりたかったんです。でも、演出も依頼されてすごく悩みました。主演だけで相当な労力なのに、演出もやるとなると未知数すぎて、両方できるのだろうかと。同じ演出家が同じ作品を何回も手掛けるのがほぼ主流な日本で『ファントム』を一新したいと言われ、今、引き受けなかったら、この作品の演出の仕事がまた回ってくるかは分からない。誰かに任せて主演はできるけども、もっとこの作品を良くしたいという思いが残っていたので、演出もできると手を差し伸べられ、断る理由はなかったですね」。

 城田は2016年にミュージカル『アップル・ツリー』で演出家デビューを飾っている。「今年芸能生活20周年のこのタイミングで演出させてもらえるのは、素晴らしい機会だなと思ったんです。色んなことに挑戦したいですし、エンターテイナーとして培った仕事も生かせ、自分が頭で想像する世界を具現化できる。今回の『ファントム』は素晴らしかったよと、何か一つでも城田が演出したことで世界が広がれば、僕としては十分です。もちろん、エリックを前回よりブラッシュアップさせることは課題としてあります。キャストやスタッフも含め、城田優の『ファントム』をやってよかったと思っていただけるような作品作りをしたいです。軽はずみな気持ちでもないし、浮かれているわけでもないんですよ(笑)」

ナンバーを増やし、三角関係を濃く描きたい

拡大城田 優=岸 隆子撮影/衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO、スタイリスト:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

 演出プランは着々と決まりつつあるようだ。「エリックと彼が思いを寄せる歌姫クリスティーヌ、オペラ座のパトロンのフィリップ・シャンドン伯爵との三角関係の描き方が薄い印象がありました。シャンドンが単に女好きでクリスティーヌを引っ掛けたという風に見えてしまう。シャンドンがクリスティーヌに対して、どれだけの思いを持っているのか。また、同様の思いを持つ怪人と、その間でクリスティーヌが揺れ動く。この構図が見えないことには、物語の終盤の悲劇にはつながらないと思うし、そこを僕としてはもう少し濃く描きたいんです。もちろん、既存の台本、楽曲、演出次第で描けると思うんですが、僕のアイデアで、今回は3人の思いをそれぞれ歌うという三重奏のシーンを入れました。それはモーリーさんに許可をいただき、こちらでオリジナルで作ってもらいました。『ワット・ウィル・アイ・ドゥ』というナンバーで、韓国版、宝塚版では上演されているのですが、今回はその曲をリアレンジして、新曲として世界初披露します」。

 舞台セットは意表を突いたものになりそうだ。「『ファントム』のチラシにあるような黒でダークな世界観ではないです。もっともっとカラフルでポップで、冒頭からドカンと派手にいきます。僕の中でしっかりとしたリアルな演出の意図がありますので、衣裳、セットは奇抜にしたいです。リアルさと奇抜さの対比が不思議な効果を生み出してくれるだろうという思いです。不思議でリアルな世界観が、気が付いたら日常になっているような感覚をお客さまに味わっていただきたいですね」。

 『オペラ座の怪人』にはつきものの、シャンデリアが天井から落ちてくる有名なシーンについては、「よくぞ聞いてくれました(笑)。僕が初めに考えていたアイデアが現実的に出来ないことが分かって、今、色々と斬新なものを考えているところです。ここは劇場に来てからのお楽しみに」と余裕を持って答える。とにかく、観客をアッと驚かせてくれそうだ。

加藤和樹は不器用なエリックに!?

拡大城田 優=岸 隆子撮影/衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO、スタイリスト:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

 Wキャストで怪人を演じる加藤和樹には大いに期待を寄せている。「まだ、稽古に入っていないので何とも言えないのですが、加藤君は15年前から知っていますし、共演もしている。加藤君はよくも悪くも不器用というか、真っすぐというか。そんな彼が演じるんですから、きっと不器用なエリックになるのではないかと。僕がやるエリックは、たぶん不器用さを器用に作るんですよね。不器用な雰囲気をあえて作るんですが、加藤君に関しては、そのまま演じてくれるのではないかと。あくまで、僕の想像ですが。そこをより伸ばして、彼が足りていない部分は僕が補いたいと思います。加藤君にしかできないファントム像を作ってくれるのではと思います」。

可能性のあるキャストを上に引き上げたい

 また、クリスティーヌ(愛希れいかとWキャスト)を演じる木下晴香をはじめ、一部のキャストはオーディションで選んだ。何を基準に選んだのだろうか。「可能性です。僕が今、この地位にいるのは、僕の可能性を信じてくれたプロデューサーや演出家がいたから。クリスティーヌ役は世界一難しい役だと言っても過言ではありません。クリスティーヌが歌って、周りが〝天使の声〟だという描写がある以上、ごまかせないんですよね。クリスティーヌを演じてこられた女優さんは大変だったと思います。僕が初演のときに、クリスティーヌを演じた山下リオは今まで出したことのない音域を出さなきゃいけなかった。その精一杯努力している姿は本当に胸を打たれました。晴香にはオーディションで、僕が『こういう風にしてこういう気持ちで歌ってくれる?』とリクエストしたときに、どれだけ即座に返せるか、その技量がどれだけあるのか、センスがあるのかないのか、そういうのが見たくて細かいことを言いました。確実に言えるのは、彼女はいけるなということですね。色んなキャストの可能性を残した状態で、トライしてダメだったらほかの方法を考えるということをやっていきたい。僕なりにキャストを上に引き上げる作業をしていきたいです」。

それぞれの役者に適した演出法を見つける

拡大城田 優=岸 隆子撮影/衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO、スタイリスト:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

 世の中には、自由に役者にやらせたり、指先の動きまでも細かく指示を出したりと、色んなタイプの演出家がいる。「もし、ここにいらっしゃる記者の皆さんが演者だったとすると、皆さんに同じように指導をするのは無理。それはやらないほうがいいというのは、前回演出をした中で気付いたことです(笑)。人それぞれの速度、理解力、取り組み方があって、一概に僕のやり方が正解だと皆さんに提示すると、そのやり方に全く当てはまらない人が出てくる。この人にはガンガン言ったほうがいい、あの人には抽象的よりも具体的に言ったほうがいい、この人には何も言わないで、放置したほうがいい(笑)など、稽古していく中で、どういうやり方が適しているのか見るんです。僕の特徴は、皆さん、よくご存じだと思いますけど、1で済むことを5ぐらいに細かく増やしてしゃべるんですよね(笑)。ちゃんと明確に伝わっているか心配だから、細かく、細かく話してしまうので、めちゃくちゃ時間がかかるんです(笑)。『アップル・ツリー』のとき、一人の女の子のキャストが全く理解できてなくて、30分で説明しようとしたら1時間になった(笑)。今回はそこをなるべく抑えて、言いたいことの1割、2割だけを言って、どうなるかというのを方針としてはやりたいんです。(一同笑)」。

 役者の意見やアイデアは取り入れたいと言う。「僕が俳優として活動している中で、意見を聞いてもらえないのは地獄です。以前、自分の意見を言って、違う方向を向いていた演出家が歩み寄ってくれたという経験があります。結果的には歩み寄ってもらえなかったけれど、意見をぶつけてコミュニケーションが取れたこともあります。自分がされて嫌だったこと、してほしくないことは演出家としてしたいとは思わない。なるべく、役者一人ひとりに寄り添った形にしたい。皆さんに自分のエゴや感性、概念を押し付けるのは演出家ではなくて、ただのエゴイストになってしまう。決定権はありますが、状況をより良くし、演者の化学反応が起こる状態にしてあげるのが演出家の仕事だと思います。役者はただのお飾りの人形ではなく、息をしていて意志がある。意図して動く役者を自分の感覚で動かすのではなく、動きたくなったときに、もう少し速度を上げたほうがいいよとか、止まりたくなったときに、こっちのほうがいいよというサポートが出来るのが演出家だと思っています。どうしたらいいか分からない俳優には、求められれば全部つけたいと思っています。手の出し方やしゃべり方、句読点の入れ方まで、あくまでも求められれば(笑)。それを基盤にして、崩せるようだったら、崩していったらいいんですから。日々芝居や歌い方が違ってもいい。そうであってほしい。毎日同じようだったらつまんないですからね」。

7割は見えていて残りの3割は芝居で決まる

拡大城田 優=岸 隆子撮影/衣裳協力:YOHJI YAMAMOTO、スタイリスト:DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)

 城田が演じるファントムに対しての演出やダメ出しはどうするのだろうか。「キャスト全員にしてもらいましょうか(笑)。稽古が終わったら、『城田にダメ出しがある人は?』『ハイハイハイハイ』と全員の手が挙がるかもしれません(一同笑)。そこが一番の葛藤で、客観視を常にしないといけない状況を演出家として作るつもりなんですけど、エリックに対しては僕は主観でしか考えられない。そこをしっかりと見てもらって良し悪しを判断してもらえる人は、スタッフになるんですかね。役者にそれを任せるわけにはいかないし。『今、どう見えてる?』『やりづらくない?』とクリスティーヌのお二人には聞くと思いますが。エリックの芝居の作り方や芯の部分はセルフプロデュースするしかない。スタッフに聞いて、あとはシンプルに、家に帰って動画を見ることですかね。今の時代は、その日の稽古の様子が、関係者の中だけですぐにネットにアップされるんですよ。それを見て、難しいですが自分なりに客観視するしかないですね」。

 今年はシルク・ドゥ・ソレイユのスタッフが参加した、サーカスアクロバティックを取り入れたブロードウェイ・ミュージカル『ピピン』の主演が大好評だった。ブロードウェイのスタッフとともに取り組み、ハードワークで一時は7キロも痩せたというが、表現力、歌唱力が一段と進化を遂げている。『ファントム』では役者としてはもちろん、演出家としての真価が問われる。

 「演出、衣裳、セットの方向性はほぼほぼ決まっていますので、後は役者さんたちと顔を合わせて、稽古場にあったときにどうなるのか。7割ぐらいの方向性は僕の中では見えているので、後の3割は芝居をして決まる。非常に楽しみですね」。取材会では涼しい顔をしてプレッシャーについては触れず、いつものように立て板に水のごとく話してくれた。今冬、城田の手によって『ファントム』の幕が上がる日を心待ちにしたい。

◆公演情報◆
ミュージカル『ファントム』
東京:11月9日(土)~12月1日(日) TBS赤坂ACTシアター
大阪:12月7日(土)~12月16日(月) 梅田芸術劇場メインホール
★東京 11月25日(月)18:15追加公演決定!
【Wキャスト出演者】
ファントム役:城田 優、クリスティーヌ役:木下晴香、シャンドン伯爵役:木村達成
【一般発売日】2019/10/26(土)10:00AM~
販売窓口、先行販売情報は公式ホームページへ!
公式ホームページ

[スタッフ]
原作:ガストン・ルルー
脚本:アーサー・コピット
作詞・作曲:モーリー・イェストン
演出:城田 優
[出演]
加藤和樹/城田 優(Wキャスト)、愛希れいか/木下晴香(Wキャスト)
廣瀬友祐/木村達成(Wキャスト)、エリアンナ、エハラマサヒロ、佐藤 玲、神尾 佑、岡田浩暉 ほか

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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