「正しく恐れる」こと、それがきのこを愛する第一歩
2019年10月18日
食用きのこ、あるいは毒きのこ。多くの方の野生のきのこに対する認識はそんなところだと思います。
けれど、きのこはそれだけでは語り尽くせません。日本のきのこは、名前が付いているものだけで2000〜3000種あり、まだ分かっていないものも入れると、おそらく5000〜15000種はあるだろうとされています。その中には、食毒不明のものが圧倒的に多いです。毒はないけれども不味くて食べられないきのこもあります。なお、美味しくて猛毒のきのこもありますので、味で食毒の判断は基本的に出来ません。
先日、久しぶりに行きつけの森に行ってきました。書籍「毒きのこに生まれてきたあたしのこと。」(発行・天夢人)の執筆で、しばらくこの森に来ることが出来なかったので、ずっと行きたくてうずうずしておりました。
気象の影響か、例年よりきのこは少ないようでしたが、ひとつ目を引くきのこがありました。
全体的に淡い黄色をしていて、つばがあり、柄にはささくれがありました。ちょっと驚いたのは根元のつぼが淡いピンク色で、ぷっくり膨らんでいたのです。
そもそも私がきのこにはまったのは、ある毒きのこがきっかけでした。
毒きのこと言ってもいろいろあって、先に述べたベニテングタケは実は食べても死ぬほどのことはないとされています。でも、神経系や胃腸系の様々な毒成分を含むので決して食べないでください。
カエンタケという毒きのこがよくマスコミなどで話題になっています。カエンタケは表面が真っ赤で指のような形で、しばしば分岐するという複雑な形のきのこです。このきのこを一躍有名にしたのは、1999年、新潟県で旅館に置いてあったカエンタケをお客がお酒に浸して食べてしまい、5人が中毒、うち1人が死亡した事例だと思います。その頃までカエンタケは稀で見かけも毒々しいので、図鑑などでは「食毒不明」となっていましたが、この事故以降に出版・再版された図鑑では「猛毒」となりました。
さらに近年、ナラ枯れの影響で、カエンタケは神社や公園など、人里近くにも生えるようになり、人々はカエンタケを恐怖するようになりました。特に小さな子どもたちへの影響を考えて、カエンタケを見つけ次第引き抜いて回る人(土地の管理者など)もいます。本来、毒きのこはスルーして食べなければいいだけなのですが、カエンタケは触って汁がついただけでも危険なので、これは仕方のないことでしょう。
カエンタケの例のように、毒きのこは人が食べて中毒して初めて毒だと分かるものでしたが、近年は、ミカワクロアミアシイグチのように中毒者が出るより先に分析が行われて、毒を含むと分かり、中毒者がいない毒きのこが現れるようになりました。これは中毒防止から見て喜ばしいことだと思います。
なお、ミカワクロアミアシイグチについては、毒の致死量をはかるためにマウスに薄めた毒を与えたところ、いくら薄めても薄めてもマウスが死に続け、これ以上マウスが死ぬのはかわいそうだ、ということで実験が中止された
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