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東大教員有志が「あいち」不交付に抗議したわけ

学問の自由への懸念、国の信用にもかかわる

加治屋健司 東京大学大学院准教授

「学問の自由」への脅威、文理ともに危機感

「あいち」東大声明拡大展示が再開されたあいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」=2019年10月11日午後2時19分、名古屋市東区の愛知芸術文化センター

 東大教員有志の声明は、以下のような経緯でまとめられた。

 文化庁の補助金不交付の方針が報道された9月26日、芸術機構の池上高志教授から、声を上げないかとの提案があった。同様の意見が複数の研究者から出たため、小林真理教授と私で文面案を作成した。機構内部で話し合い、河合祥一郎機構長の名前で声明を発表する案も出たが、最終的には上記4名が呼びかけ人となり、機構の教員有志24名とともに、ウェブサイトで広く学内教員の賛同者を募り、10月9日正午までに集まった167名の名前を添えて萩生田大臣と宮田長官に声明を送付した。

 今回の不交付決定は、補助金事業が対象であることから、芸術だけではなく、学術一般にも関係する問題であった。そのことが、芸術とは直接関係しない多くの東大教員が賛同した大きな理由ではないかと考えている。

 有識者による審査を経て採択通知を出した事業に関して、行政による恣意的な介入が許されるのならば、憲法によって保障されている学問の自由も、いずれ何らかの形で脅かされるのではないか。今回の決定が前例となって、政府の方針に合わない研究が、有識者の審査結果にかかわらず、補助金交付の対象から外れる可能性も出てくるのではないか。このような懸念を抱いたのは私だけではないだろう。

 声明の賛同者は、4名の呼びかけ人のうち3名が所属する総合文化研究科が最も多かったが、人文社会系研究科、教育学研究科、情報学環の研究者も多く、数理科学研究科や理学系研究科といった純粋科学の研究者からも賛同を得ることができた。名誉教授13名も分野を超えて賛同してくださった。部局ごとに人数の差はあるものの、名誉教授が在職時に所属していた研究科を加えれば、ほぼ全ての学部・研究科から賛同を得たのは、今回の不交付決定が学術研究への干渉に繋がりかねないとの判断があったからではないだろうか。

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筆者

加治屋健司

加治屋健司(かじや・けんじ) 東京大学大学院准教授

1971年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。東京大学芸術創造連携研究機構副機構長も務める。専門は現代美術史・表象文化論。共編著に『中原佑介美術批評選集』全12巻(現代企画室+BankART出版)、共著に『地域アート 美学/制度/日本』(堀之内出版)など。

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