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大学の英語入試、まだ「異議あり」

刀祢館正明 朝日新聞記者

後からではなく、いま言いましょう。「おかしい」と

英語入試拡大英語民間試験の導入に反対し、国立大学協会が入るビルの前で抗議行動をとる市民ら=2019年10月4日、東京都千代田区

 最近こんな話を聞いた。

 あるところで2人の国立大学の学長が一緒になった。1人が「入試に英語民間試験を活用するという話、あれに私はどうも賛成できなくて」とぼそりと言うと、もう1人が「先生もですか。私もそうなのです」とぼそりと答えた、という。

 真偽のほどはわからない。でも、まともな学長なら(まともでない学長がいるとは思いたくないが)こう語ってもおかしくない。そう思う教育関係者は少なくない。だからこの話、静かに広まり、私の耳にも届いたのだろう。

 全国の大学の学長先生にお願いしたい。この話が本当なら、そして本当にこの入試改革がおかしいと思われるのなら、もう少しだけ大きな声で「これはまずい」「やめよう」とおっしゃっていただけないだろうか。

 この国の近現代史を振り返ると、あとになって「実は私もおかしいと思っていたのだが、とても言えなかった」と語る元責任者や元幹部たちがいた。74年前に惨憺たる結果で終わったあの戦争を遂行した軍部や政府の幹部たちもそうだったという。最近、巨額の金品を受け取って大問題になったあの大企業や、カリスマ大物経営者が逮捕された国際的な大メーカーも、内部はそうだったのではないか。「私はおかしいと思っていた。でも言えなかった」と。

 これから進もうとする入試「改革」でも、また同じことが起こらないともかぎらない。そのとき、直接の被害を受けるのは若い受験生たちだ。だからこそ、大学という知と教育を担う組織の、責任ある立場のみなさんにお願いしたい。もし、この入試「改革」に疑問や疑念をお持ちならなら、いま発言し、行動してほしい。影響力を行使してほしい。

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筆者

刀祢館正明

刀祢館正明(とねだち・まさあき) 朝日新聞記者

関西生まれの関東育ち。1982年朝日新聞入社。整理部記者、朝日ジャーナル記者、アエラ記者、学芸部(現・文化くらし報道部)の記者と次長、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)客員研究員、早稲田大学非常勤講師、オピニオン編集部編集委員などを経て、現在は夕刊企画班のシニアスタッフ。2013年秋から2019年春まで夕刊で「英語をたどって」を連載した。担当した記事が本になったものに『塩の道を行く』『奔流中国』『3.11後 ニッポンの論点』など。英語は嫌いではないが得意でもない。

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