メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

「あいトリ」補助金交付中止に強く抗議する

中沢けい 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

拡大展示が再開した企画展「表現の不自由展・その後」=2019年10月11日、名古屋市東区、代表撮影

 「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」の展示が10月8日午後から再開された。同時に同展中止に抗議し、展示を見合わせていたアーティストたちも展示を再開した。14日に閉幕。ここに至るまでの関係者の努力に敬意を表する。改めて萩生田光一・文部科学相の「あいちトリエンナーレ」補助金の交付中止の決定に強く抗議する。補助金交付中止の理由は「書類の不備」だとされているが、この理由をまともに信じている人はそういないだろう。補助金交付中止の決定がどうのようになされたのかも不明な点が多いことが分かってきた。補助金交付中止は撤回されるべきである。

補助金交付中止決定の経緯は全く分からず

 大村秀章・愛知県知事が「表現の不自由展」再開を言明したのは9月25日だった。NHKは26日へと日付が変わった頃に文化庁の補助金交付中止決定を報じる。26日、萩生田文科相が記者団の質問に答えるかたちで、「あいちトリエンナーレ」への補助金交付中止を表明。文化庁所管の補助金にもかかわらず、宮田亮平・文化庁長官が姿を見せることも談話を出すこともないまま現在に至っている。また補助金交付中止の決定は外部審査委員の意見聴取をせず、議事録も存在していないことが明らかになっている。10月3日には審査委員の野田邦弘・鳥取大特命教授が辞任を表明している。

 いったい誰がいつどのような経緯で「あいちトリエンナーレ」への補助金交付中止を決定したのかは、報道の限りでは全く分からない。また議事録は本当にないのか、それとも隠しているのかは報道だけでは判断できない。しかし、荻生田文科相が表に立ち、宮田文化庁長官が沈黙した状態であること、外部審査委員が意見聴取をされなかったことなどを総合的に考えれば、文化庁、文科省内部で独断的に決定されたと推測してもそれほど不自然ではない。NHKの深夜の報道が事情をよく物語っているのではないだろうか。官僚が独断でできる決定ではない。政治家によってなされた決定だとみることができる。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

中沢けい

中沢けい(なかざわ・けい) 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

1959年神奈川県横浜市生まれ。明治大学政治経済学部政治学科卒業。1978年「海を感じる時」で第21回群像新人賞を受賞。1985年「水平線上にて」で第7回野間文芸新人賞を受賞。代表作に「女ともだち」「楽隊のうさぎ」などがある。近著は「麹町二婆二娘孫一人」(新潮社刊)、対談集「アンチ・ヘイトダイアローグ」(人文書院)など。2006年より法政大学文学部日本文学科教授。文芸創作を担当。

中沢けいの記事

もっと見る