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「あいトリ」補助金交付中止に強く抗議する

中沢けい 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

補助金交付中止は「暴挙」

 一度交付を決めた補助金を突然に交付中止するということがこれまでにあっただろうか。これは権力の乱用というものだ。こんな権力の乱用が許されては、芸術や表現の分野に限らず政府予算がつくあらゆる分野で、権力の乱用がなされる恐れが生じる。さまざまな自治体が困惑と不安を覚えるのも無理がないことだ。通俗的な言い方で恐縮だが、一度、持たせた札束を取り上げて横っ面をひっぱたく所業だ。文科省と文化庁は、「あいちトリエンナーレ」への補助金交付中止を撤回することを強く求める。また開会中の臨時国会でも、この「暴挙」と言うべき補助金交付中止決定の経緯をぜひ追及してもらいたい。

 補助金交付中止は政府による「検閲」だと非難されている。それに対して展示内容ではなく書類の不備が理由なので検閲ではないという反論も飛び交っている。検閲か否かの定義はさておく。戦前の新聞、出版物の検閲が威力を発揮したのは、新聞、出版物の発行前に差し止めたのではなく、発行後に発禁処分を出し、新聞社や出版社に経済的打撃を与えたところにあったことを指摘しておきたい。新聞、書籍発行のコストの支払いが生じているのに、それを売って利益を得ることができないという二重の負担が生じる。新聞社、出版社はこの経済的打撃を受けないように、自主規制的にならざるを得ない状態に陥る。資金面からみると発行後の発禁処分と同じことが今回の「あいちトリエンナーレ」への補助金交付中止でなされている。あらかじめの予算に組み込まれて資金を取り上げられることくらい運営側にとって怖いことはない。

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筆者

中沢けい

中沢けい(なかざわ・けい) 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

1959年神奈川県横浜市生まれ。明治大学政治経済学部政治学科卒業。1978年「海を感じる時」で第21回群像新人賞を受賞。1985年「水平線上にて」で第7回野間文芸新人賞を受賞。代表作に「女ともだち」「楽隊のうさぎ」などがある。近著は「麹町二婆二娘孫一人」(新潮社刊)、対談集「アンチ・ヘイトダイアローグ」(人文書院)など。2006年より法政大学文学部日本文学科教授。文芸創作を担当。

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