メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

私はなぜ文化庁委員を辞めたのか【上】

あいちトリエンナーレへの補助金不交付は問題だらけだ

野田邦弘 鳥取大学特命教授(文化政策、創造都市論)

 多くの市民、芸術関係者、研究者らが強く抗議している「あいちトリエンナーレ」への補助金不交付。この問題の本質はなにか。文化庁のやり方を批判して、補助金の審査委員を辞任した鳥取大学特命教授の野田邦弘さんに、文化政策、地方自治、表現の自由など多様な観点から、2回にわたり、くわしく読み解いてもらった。事実を整理し、問題点を洗い出し、将来を見通す、「あいトリ補助金問題」について考えるための基礎となる論考。

補助金はどのように募集され、採択されたのか

 「あいちトリエンナーレ2019」が10月14日に終了した。「表現の不自由展・その後」(以下「不自由展」という)の展示が中止された話題性も手伝い、入場者は65万人を超え、過去最高となった。

 しかし、「不自由展」中止に至る問題点は十分明らかになっておらず、どこに問題があったかも結論が出ていない。文化庁は「不自由展」の一時中止を理由に、補助金の全額を不交付とし、その決定についても、多くの批判の声があがっている。

 この補助金交付の申請採択に文化庁補助金審査委員として関与した筆者は、文化庁のやり方に納得がいかないので委員を辞任した。本稿ではこの事件の意味する深刻な問題について考え、今後の議論につなげたい。

あいちトリエンナーレ拡大「あいちトリエンナーレ2019」に出品されたウーゴ・ロンディノーネの「孤独のボキャブラリー」=名古屋市東区の愛知芸術文化センター

あいちトリエンナーレ拡大補助金の募集から交付までの流れ
 愛知県が「あいちトリエンナーレ」の補助金を申請したのは文化庁の「日本博を契機とする文化資源コンテンツ創成事業(文化資源活用推進事業)」である。

 この事業は、「(前略)各地域が誇る様々な文化観光資源を体系的に創成・展開するとともに、国内外への戦略的広報を推進し、文化による『国家ブランディング』の強化、『観光インバウンド』の飛躍的・持続的拡充を図」ることを目的としている(募集案内より)。申請することができるのは地方自治体に限られ、2019年3月1〜11日の11日間の募集期間中に31件の申請が提出され、4月4日の審査委員会の結果、「あいちトリエンナーレ」を含む26件が採択された。

 募集案内が示した「実施計画」の審査の視点は、以下のとおりだ。

(1)実施計画について
①事業の趣旨・目的に沿った計画か。
実現可能な内容・事業規模か。
③地域の文化芸術資源(観光資源も含む)を活用した計画か。
④地域課題(人口の減少、中心市街地の衰退など)を踏まえた取組が行われているか。
⑤事業実施による効果等について、具体的な数値が設定されているか。
計画期間終了後も地方公共団体独自で取り組めるなど事業の継続が見込まれるか。
の6項目に加え、経費の妥当性▽芸・産学官や他の地方公共団体などとの連携・協力体制▽障害者等のバリアを取り除く取組▽観光インバウンドの拡充に資する▽国庫補助額に比して、高い経済波及効果が見込め、その根拠が明確か――の計11項目。

(2)実施計画に記載されている具体的な取組について
事業実施による効果、成果をもたらす計画となっているか。

 このうち不交付の理由とされたのは②と⑥である。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

野田邦弘

野田邦弘(のだ・くにひろ) 鳥取大学特命教授(文化政策、創造都市論)

2004年まで横浜市職員として「クリエイティブシティ・ヨコハマ」の策定や「横浜トリエンナーレ2005」など文化行政に携わる。主な著書に『文化政策の展開』、『創造都市横浜の戦略』、『文化行政−はじまり・いま・みらい』、『イベント創造の時代~自治体と市民によるアートマネジメント』、共著に『地域学入門』、『創造都市への展望』など。 近く『アートがひらく地域のこれから―クリエイティビティを生かす社会へ』(共著)が刊行される。鳥取の中心市街地でアートプロジェクト「ホスピテイル」に取り組む。