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【公演評】雪組『ハリウッド・ゴシップ』

華やかな栄光と虚構の狭間に揺れる青年を彩風咲奈が等身大で描く

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組公演、ミュージカル・スクリーン『ハリウッド・ゴシップ』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演中です。1920年代のハリウッドで、エキストラの青年がチャンスをつかみ、スターへの階段を上った。だが、まぶしいスポットライトの下で、彼を待ち受けていたものとは――。

 主人公コンラッド・ウォーカーを演じる彩風咲奈さんは、これが2度目のドラマシティ・東上主演公演となります。純朴な青年から華やかなスターへの変身と、焦燥と葛藤を繰り返しながら本当に大切なものを見つけるまでの揺れ動く姿を、等身大で演じていました。

スターオーラまぶしい彩風

拡大『ハリウッド・ゴシップ』公演から、コンラッド役の彩風咲奈(中央)=梅田芸術劇場 提供

 彩風さんは雪組一筋で育った93期生で、新人公演主演を5回つとめた御曹司です。夏にテレビ放映されたFNS歌謡祭では、“脚が長すぎる人”としてお茶の間をどよめかせたのも記憶に新しいところでしょうか。若い頃は八重歯が可愛くぷくぷくしていましたが、ここ数年で急速に研ぎ澄まされ、着実に“仕上がって”きました。

 そんな彩風さんが挑むのは、映画スターを目指しながらくすぶっているエキストラの青年コンラッドです。どことなくさえない彼が、どのようにしてスターへの階段を上り、夢見ていた世界で何を見たのか?いわゆるシンデレラストーリーとはちょっと趣が異なりそうですよ。

――1920年代、サイレント映画最盛期のハリウッド。スターを夢見るエキストラ、コンラッド・ウォーカー(彩風)は、これを最後と決めてトーキー映画のオーディションに挑むが、またも不合格になってしまう。このオーディションはプロデューサー、ハワード・アスター(夏美よう)が仕掛けた話題作りで、主演はジェリー・クロフォード(彩凪翔)に決まっていたのだった。憤るコンラッドは抗議に向かうが、そこで出会った往年の大女優アマンダ・マーグレット(梨花ますみ)から、大スターに育ててあげようと提案される。

 ハリウッドのスポットライトを夢見て、舞台の隅で頑張る若者は星の数ほどいます。コンラッドもまたその一人でした。どこか自信なさげで服装もあかぬけず、イケてるとは言い難いのですが、ひとたび踊り出すとスターオーラが全開。真っ赤なマタドールが長い手足に映え、キレ味鋭いダンスは、アマンダに見いだされそのままスターへの階段を上っていくのに十分な説得力があります。やがてパリッとしたタキシードで、お金を出すご婦人方ととっかえひっかえタンゴを踊るカッコよさには、思わず自分も財布を握ってしまいそう。

 純朴な青年だったはずのコンラッドが、スターになるにつれ勘違いしていき、栄光と虚構の狭間で揺れる様子を、彩風さんは丁寧に演じていました。まだセリフ回しに若干のくせが残るものの、繊細な演技や歌唱力も安定し、望海風斗さんとともに雪組の土台をしっかり支えている頼もしさを実感しました。

◆公演情報◆
ミュージカル・スクリーン
『ハリウッド・ゴシップ』
10月11日(金)~10月17日(木) KAAT神奈川芸術劇場
10月23日(水)~10月31日(木) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式ホームページ

[スタッフ]
作・演出:田渕大輔

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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