前田浩次(まえだ・こうじ) 朝日新聞 社史編修センター長
熊本県生まれ。1980年入社。クラシック音楽や論壇の担当記者、芸能紙面のデスクを経て、文化事業部門で音楽・舞台の企画にたずさわり、再び記者として文化部門で読書面担当とテレビ・ラジオ面の編集長役を務めたあと、2012年8月から現職。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ドラマではコンパクトな田畑政治の職場も実は……
NHK大河ドラマ『いだてん』の番組最後のタイトル画面には、「このドラマは、史実を基にしたフィクションです」というおことわりが入っている。実名で朝日新聞社が描かれていた回に「新聞考証」とクレジットされた社史編修センター長の前田浩次は、ドラマの制作陣が史実を調査するのに協力したのだが、ドラマとしての創作の部分を「史実とは違う」とチェックしたわけではない。ただ、視聴した人たちから、いくつかの場面や出来事について、実際にはどうだったの? とよく尋ねられる。今回から、そうした「フィクションと史実」について報告する。
阿部サダヲが演じている朝日新聞の記者、田畑政治が入社した頃、東京朝日新聞社は、東京・銀座の瀧山町(現在の銀座6丁目)にあった。
このビルは関東大震災で焼けたが、すぐに修理された。ドラマの田畑は、修理工事のさなかに、村山龍平社長と緒方竹虎の採用面接を受けていた。
「いだてん」では、このビルを参考にしたセットで、東京朝日新聞社の編輯(へんしゅう)局や印刷部門を描いた。
六角形に天板を加工した机が編輯局の中心にあり、その上にも床にも紙が散っている様子などは、まさに新聞社の風景だが、田畑が入社した時の社内は、実はもう少し広かった。ちなみにこの「六角机」、何人もが一つの机で仕事をするのに都合のいいデザインで、いまでも朝日新聞社内で使われている。