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「身の丈」発言は英語入試を「正しく」表した

大臣の言葉であらわになった本質。撤回・釈明しても問題は消えない

刀祢館正明 朝日新聞記者

この試験の「本質」を語った萩生田文部科学大臣

英語入試拡大FrankHH/Shutterstock.com

 萩生田光一・文部科学大臣には感謝したい。「複雑でわかりにくい」と言われてきた新しい大学入試の英語が抱える問題の核心を、たった一言で明らかにしてくれたのだから。

 その一言とは、今やすっかり有名になった「身の丈」発言だ。

 10月24日のBSフジの番組に出演した萩生田大臣は、キャスターから大学入試に英語民間試験を使うことについて、お金や住む場所などに恵まれている受験生と、そうでない人との「公平性」について問われ、こう答えた。

 「自分の身の丈に合わせて2回(の英語民間試験)をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」

 どういうことか。

 おさらいをすると――2020年度から始まる新しい大学入試の英語では、受験生は、新しい「英検」や「GTEC」(ベネッセが実施)など七つの民間試験のどれかを選んで4月から12月の間に受け、そのうちの2回までの成績が大学へ通知される。

 民間試験を受けるには、多くは都市部で実施される試験の会場へ足を運ばなければならない。1回につき数千円から2万円以上の受験料がかかる。都市部に住む受験生は移動の負担が少ないし、裕福な家庭ならば受験料を払って「お試し」や「練習」で何度も受けることができるだろう。

 一方、離島や都市部から離れた場所に住む受験生は、会場に行くだけでも大変だ。距離によっては、交通費だけでなく、宿泊費もかかる。また、経済的に余裕のない家庭にとっては、2回の受験料だけでも大きな負担だ。

 英語民間試験を「活用」するこの入試は、本質的に不公平なものだ。それでいいのか。そういうことを「論座」の「大学入試に異議あり 」で書いた。

 私が多くの言葉を費やし、指摘した新しい英語入試が持つ不公平さという、どうにも逃れようのない問題の核心を、大臣はずばりと表現した。

 「身の丈」

 よくぞこんなにわかりやすく、受験生本人の努力ではどうすることもできない条件によって有利不利が生まれる実態を、かくもあからさまな言い方で語ってくれたものだと思う。

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筆者

刀祢館正明

刀祢館正明(とねだち・まさあき) 朝日新聞記者

関西生まれの関東育ち。1982年朝日新聞入社。整理部記者、朝日ジャーナル記者、アエラ記者、学芸部(現・文化くらし報道部)の記者と次長、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)客員研究員、早稲田大学非常勤講師、オピニオン編集部編集委員などを経て、現在は夕刊企画班のシニアスタッフ。2013年秋から2019年春まで夕刊で「英語をたどって」を連載した。担当した記事が本になったものに『塩の道を行く』『奔流中国』『3.11後 ニッポンの論点』など。英語は嫌いではないが得意でもない。

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