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『ダンス オブ ヴァンパイア』出演、東啓介/下

いい意味で、遊んで楽しんで歌いたい

米満ゆうこ フリーライター


『ダンス オブ ヴァンパイア』出演、東啓介/上

30代までに帝劇に立つ夢が叶ってしまった

――大阪で千秋楽を迎えます。

 アルフレートと共に成長した姿を大阪で見せられたらと思っています。ファンの方にはいつも僕の成長を見てほしいと話しているんです。東京では、初の帝国劇場ですし、「東は成長したな」と見守っていただきたいですね。僕を知らない人には、「いい声してるな」と思われたいです(笑)。そこから徐々に僕のことを知っていただいて、もう一度、見たいと思っていただけるように頑張ります。

――東さんは、帝劇に立つのが夢だったそうですね。

 30代までには帝劇に立つぞというのが夢で目標だったのですが、叶ってしまいました(笑)。

――早くも24歳で!

 よく「夢を叶えると燃え尽き症候群が起きる」と聞きますよね。でも、次の目標が見えてくるようになりました。24歳で一つの夢が叶ったんだから、これから、もっと帝劇の舞台に立てるようにするにはどうしたらいいか、こういう作品に出たいとか、より現実的、具体的な思いが増えてきました。

拡大東啓介=安田新之助 撮影

――24歳でこれだけたくさんの作品に出演されていて、何を一番大切にしていらっしゃるのでしょう。

 新鮮さとライブ感、毎日変わることを恐れないことですね。自分もそれで楽しめるんです。新鮮にやるのは難しいことですが、見に来てくださるお客さんは毎日違いますし、反応も違う。その中でセッションして、その場で起こったことを受け止める。それこそ、今日、体調が悪かったらどう対応するのかというのも新鮮さにつながります。

――今回、一番期待されていることは。

 「サラへ」という楽曲を歌い終わったときのお客さんの拍手でしょうか。それと、カーテンコールでお客さんと歌い踊れることも楽しみです。僕も帝国劇場や梅田芸術劇場によく観に行きますが、大きな劇場でお客さんと一体となるのは、なかなか体験できないと思うので、どういう光景になるか楽しみです。きっと壮観でしょうね。

――ここ数年で、ミュージカルに対する向き合い方が変わってきたことはありますか。

 楽曲をより大事にするようになりましたね。今年、『Color of Life』というミュージカルに出ましたが、楽曲がすごく難しかったんです。でも、その難しさの中に意味が込められている。それが作品の魅力、主軸でもあったので、「なぜ、この音を出すのか。なぜ、ここは繊細に歌い、あそこは歌い上げるのか」というのをすごく大切にするようになりました。ただ、歌うだけではない。発声法を学ぶためにヴォイストレーニングに通っているんですが、演じながら歌うとなると、この体勢で歌えないとかできないことがいっぱい出てくるんです。そこでどう自分をコントロールして調整できるか。それを稽古場で試しています。神田さんは、言葉や音で楽曲を楽しんでいるなというのを感じるので、僕もいい意味で遊んでいきたい、楽しんでいきたいですね。

板の上に立つ、さらけ出すことを怖れなくなった

東啓介=安田新之助 撮影拡大

――濃密な空間での二人芝居『Color of Life』ですが、終えてみていかがでしたか。

 ものすごく達成感がある作品でした。二人だけのミュージカルは初挑戦だったんです。二人で稽古場で午後1時から9時までずっとやるのは、めちゃくちゃ体力がいることですし、お互いを支え合わないと二人とも壊れてしまう。それを乗り越えることができたのは、大きな成長ですね。僕、千秋楽で泣いたのは初めてなんですよ。

――号泣されたそうですね。

 声が出ないぐらい泣いちゃって(笑)。

――何の涙だったのですか。

 ここまで何かを背負ったのは初めてだったんです。今までは、例えば『マタ・ハリ』だと、柚希礼音さん、加藤和樹さんの胸を借りていた。主役を務めるのはここまで大変だったのかと。その大変さが身に染みましたね。前回見たお客さまにも受け入れてもらえるのかどうかも怖かったです。最終的に、皆さんがスタンディングオベーションをしてくれて、やって良かったと号泣しました(笑)。

――その経験が、帝国劇場や梅田芸術劇場など大きな劇場でいかされそうですか。

 そうですね、自分が舞台に立つことを全く怖れなくなりましたね。東啓介が板の上に立っている、さらけ出しているというのが、全然怖くなくなりました。先ほども言ったように、ライブ感を楽しめるようになった。今日のセリフの言い方はちょっと違うな、あの感情をいかしてみようとか楽しめるようになりました。

◆公演情報◆
ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』
東京:2019年11月5日(火)~11月27日(水) 帝国劇場
名古屋:2019年12月15日(日)~12月21日(土) 御園座
博多座:2020年1月1日(水・祝)~1月7日(火) 博多座
大阪:2020年1月13日(月・祝)~1月20日(月) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽:ジム・スタインマン
演出:山田和也
[出演]
山口祐一郎、神田沙也加/桜井玲香(Wキャスト)、相葉裕樹/東 啓介(Wキャスト)、大塚千弘、コング桑田、阿知波悟美、植原卓也、駒田 一、石川 禅 ほか

〈東啓介プロフィル〉
 2013年、舞台『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』でデビュー。主に舞台に出演しながら、近年はドラマや映画などにも活躍の場を広げている。最近の主な出演作品は、『Color of Life』、『命売ります』、『マリーゴールド』、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』、『マタ・ハリ』、『スカーレット・ピンパーネル』など。2020年3月には、ミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』への出演が決まっている。
公式ホームページ
official twitter

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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