大学入試への民間試験導入の問題点を指摘してきた記者が「次の一手」を考える
2019年11月01日
大学入試への英語民間試験の導入延期が決まった。
11月1日、萩生田光一文部科学大臣が会見で発表した。
「見送り」を伝える朝日新聞デジタルの記事は、「制度の欠陥噴出」という見出しをつけている。その通りだと思う。こんな問題だらけの試験がこのまま強行されなくてよかった。
だが、中止ではない。延期だ。
大臣は会見で2024年度の実施を目指すと語った。新たに検討会議を設け、そこで1年かけて結論を出すという。
下手な結論を出されてはたまらない。いま考えるべきことを何点か、急いで書いておきたい。
まず、英語民間試験を受けるはずだった現在の高校2年生への丁寧な対応だ。
実際の受験は来年4月から始まる予定だった。そのわずか5カ月前に延期が決まるなど、とんでもないことだ。安堵したり喜んだりしている生徒もいるだろうが、動揺している生徒も多いはずだ。そうした生徒と保護者の不安を解消できるよう、そして高校の先生たちが生徒たちを安心させられるよう、文科省はきちんと情報を出してほしい。
そして文科省の官僚の皆さんへ望みたい。
どうかハラをくくってほしい。「なんだこれは」と立腹したり嘆いたりしているかもしれない。行政の常識では、ほとんどありえないことが起きた。長い間議論し、決定し、告知し、準備を進めてきた施策が、まさかの延期になったのだから。「もう、やってられない」とモラルダウンが起きるかもしれない。でも、教育に携わる皆さんは、そういう訳にはいかない。
お願いがある。
「次の策」を学者に考えさせたり言わせたりするだけでなく、行政官として、当事者意識を持って、こうすれば受験生のためになる、これなら大丈夫、公平で公正で不安や不満を与えない、という案を作ってほしい。作って広く示してほしい。それが文科省の、そして大学入試改革への、信頼回復の第一歩のはずだ。
新たに作るという検討会議にも、いくつか注文がある。
まず人選。
議論の対象は英語の試験であり、大学入試のあり方だ。英語教育とテスト研究の専門家を集めるのは当然だろうが、ただし、これまで文科省が「お世話になってきた」人たちは、遠慮してもらいたい。なぜなら、まさにその人たちがかかわって作った試験が、こんなに大きな反対を受け、立ち行かなくなったのだから。
試験団体の関係者はもちろん、これまで民間試験の開発や問題作成、あるいは広報宣伝にかかわった先生たちも、ご遠慮願いたい。いくら当人が「自分は公正にやっている」「問題ない」といっても、それでは公正性を担保したことにはならないのが現代の常識だ。実際、野党のヒアリングでこのことを質問された文科省の課長たちが全員黙ってしまったこともあった。問題があったと認めたかっこうだ。
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