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木庭顕氏に聞く 古典の問題意識は読む側をも問う

木庭顕 歴史学者、東京大学名誉教授

対抗と積み重ね 古典の問題設定を受け継ぐ

――古典そのものがその内部に矛盾や亀裂を抱えており、深刻な問題をめぐる対立を反映したものだとすると、古典と向き合う読者の姿勢も問われますね。

木庭 古典の解釈者がそのような姿勢でテクストと向き合えば、反射的に、自分自身が向き合う現実について深く反省させられ、そこに自らが抱える深刻な問題を発見することになります。しかも、元のテクストが向き合っている問題設定を受け継ぐことにもなる。元のテクスト自体が問題を深めていく積み重ねの産物なので、解釈者は結局その積み重ねに加わることになる。勝手に問題を設定しているのではないのです。

ギリシャ・アクロポリスの丘にあるパルテノン神殿拡大ギリシャ・アクロポリスの丘にあるパルテノン神殿

――ギリシャのデモクラシーを参照しながら、共和政ローマの歴史が語られ、そこには同時代の政治のあり方をめぐる問題意識も反映されている。そうして叙述されたローマの歴史を、15世紀イタリアの人文主義者ロレンツォ・ヴァッラが読み、15~16世紀のニッコロ・マキャヴェッリが読んだ……。

木庭 近代の文学・歴史学・哲学は例外なく古典を下敷きにしており、その際必ずこのような思考様式の系譜、つながりが現れます。モミッリャーノは古典をめぐる「対抗」と「積み重ね」の双方を、特に近代の歴史学や古典研究に関して、他の誰よりも立体的に描き出したと言うことができます。いや、そのような研究に初めて道を開いた人物なのです。

――そのような分析法で明らかになった「成果」とはどんなものか、具体例が知りたいのですが。

木庭 実は、「成果」という言葉はモミッリャーノにはふさわしくないものです。彼の有名な言葉の一つに、

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筆者

木庭顕

木庭顕(こば・あきら) 歴史学者、東京大学名誉教授

1951年生まれ。歴史学者、東京大学名誉教授。ギリシャ・ローマ史が専門。著書に『政治の成立』(東京大学出版会)、『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)、『憲法9条へのカタバシス』(みすず書房)など。「政治・デモクラシー・法の歴史的基盤の探究」で2018年度の朝日賞を受賞した。