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若松プロは、なぜ上映ボイコットを決断したのか

『主戦場』上映中止騒動から見えてくる「脳内リスク」の増殖

大友麻子 編集者・ライター

このまま上映するという選択肢はない

白石和彌。今週末に新作『ひとよ』(配給・日活)の公開を控えて超多忙の中、抗議のための上映ボイコット行動を起こした。今年の劇場公開は『麻雀放浪記2020』『凪待ち』に続いて3作品目。拡大白石和彌 映画監督。11月8日の新作『ひとよ』(配給・日活)の公開を控えて超多忙の中、抗議のための上映ボイコット行動を起こした。今年の劇場公開は『麻雀放浪記2020』『凪待ち』に続いて3作品目
 「まだ判決も出ていないのに、訴訟が起こされているというだけで上映できなくなるのであれば、スラップ訴訟天国になりかねない」

 壇上の映画監督・白石和彌が力を込めた。

 「新百合ヶ丘」駅前の麻生文化センター内、大会議室。11月1日夜、ここで若松プロダクションによる『止められるか、俺たちを』無料上映会が、急きょ開かれていた。上映後のティーチインでは、白石監督のほか、脚本の井上淳一、撮影の辻智彦らが、約70名の観客の前で今の思いを語った。

 本来であれば、この日は16時から、すぐ近くにある川崎市アートセンターで映画祭のプログラムとして同作が上映されていたはずだった。しかし、若松プロは『主戦場』の上映中止決定に対する抗議として、同映画祭での作品上映取りやめを決断したのだ。

『止められるか、俺たちを』(2018年公開・若松プロダクション)は、1960年代から70年代にかけて、問題作を量産していた黄金期の若松プロダクションとその周囲の人々を、助監督・吉積めぐみ(門脇麦)の物語を軸に描いた作品。若松孝二を井浦新が演じた拡大映画『止められるか、俺たちを』(2018年公開・若松プロダクション)。1960年代から70年代にかけて問題作を量産していた黄金期の若松プロダクションとその周囲の人々を、助監督・吉積めぐみ(門脇麦)の物語を軸に描いた作品。若松孝二を井浦新が演じた

 若松プロは、故・若松孝二監督が1965年に立ち上げた独立プロ。過激な作品を次々と世に送り出し、最後までインディーズ魂を貫いた。若松監督逝去後も、三女の尾崎宗子がプロダクションを継ぎ、昨年(2018年)、若松孝二7回忌の節目には、白石監督による先述の新作を公開した。

井上淳一。今年、監督作『誰がために憲法はある』(配給・太秦)が全国公開。日韓関係の悪化を受けて、2009年に公開した『アジアの純真』(監督・片嶋一貴、脚本・井上淳一)の緊急再上映が続く。拡大井上淳一 今年、監督作『誰がために憲法はある』(配給・太秦)が全国公開。日韓関係の悪化を受けて、2009年に公開した『アジアの純真』(監督・片嶋一貴、脚本・井上淳一)の緊急再上映が続く
 無料上映会の開始前、控え室で、白石らに事の発端を聞いた。

 「(10月)25日朝、(脚本の)井上(淳一)さんからのメールで、この映画祭での『主戦場』上映中止を知りました。若松プロからも2作品(*注:白石監督『止められるか、俺たちを』のほか、若松監督『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』も映画祭で上映予定だった)を出す予定の映画祭。こちらだけ何事もなく上映して何事もなくトークする、なんてことはできないと直感しました」(白石)

 プロデューサーでもある尾崎は、当初、上映ボイコット案に難色を示す。

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筆者

大友麻子

大友麻子(おおとも・あさこ) 編集者・ライター

1971年、東京生まれ。編集者/ライター。上総掘りという人力による深井戸掘削技術を学んでフィリピンの農村で井戸掘りに従事。のちマニラのNPOに勤務。帰国後、游学社(当時編プロ、現在は出版社)へ。若松プロダクションの映画制作にも関わってきた。現在はフリーランスとしても活動。