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西川大貴インタビュー/上

ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』脚本演出 「自由と閉塞感」を書きたかった

真名子陽子 ライター、エディター


 ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』が15日から上演されます。この公演は、プレビュー公演を2回設けており、ブラッシュアップを図りながら本公演を目指すというトライアウト公演で、17名のキャストもフルオーディションで決定。

 脚本・演出は『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などに出演し、アーティストとしてもオリジナルアルバムを2枚リリース、これまでにも脚本・演出を手がけ幅広いフィールドで活躍する西川大貴さんが担います。

 西川さんにお話しを伺い、この作品を書いた意図や、今この時代を生きて感じていること、オーディション時の話やスウィング制度のこと、そして、クリエイティブな作品を創っていきたいという今後の話まで、今の西川さんが感じていることをたくさん語っていただきました。

身近な日常をミュージカルにしたい

拡大西川大貴=岩田えり 撮影

――お稽古が始まりましたがいかがですか?

 まず歌稽古とダンス稽古を先行して、その後本読みに入ったのですが、細かいところまでみんなであーでもないこーでもないと話し合いながら進めています。自分の部屋のパソコンの前にしかなかった世界が、徐々に具現化していくのを見てワクワクしています。

――台本を読ませて頂きましたが、私はどんな舞台になるのかなとワクワクしました。脚本を書かれていますが、どのような意図で書かれたのでしょうか?

 最初にプロデューサーと話をした時に、〝ボクたちの話〟を書きたいということを言いました。「今日は寒かったね」とか「金木犀の香りがするね」とか、隣では女の子がウキウキしてるのに、なぜ僕は毎日満員電車で通勤しなきゃいけないんだ、とか……そういった身近な日常をミュージカルにできないかなというところから始まりました。

――お芝居ではなくミュージカルだったんですね。

 そう、そこなんですよね。今の台本は第8稿ぐらいなんですが、初稿の内容はほとんど見る影もなくなっています。書いていく中で、これはストレートプレイで表現できちゃうなとか、音楽劇の方がフィットするなとか、それぞれの段階でいろいろ感じることはありました。ミュージカルは音楽がとても大事な要素になるんですけど、その音楽によるマジックみたいなものを楽しめるように、敢えて「隙間」を作って書いたのが今の台本です。

――その隙間に歌を埋めていく感じでしょうか?

 セリフだけではよくわからないけれど、音楽が入って初めて「なるほど」となるような本を書きたいと思いました。歌付きで本読みをした際に、文字だけで読んでいた時の印象とまったく違ったと、ある俳優に言われました。それはすごく嬉しかったですね。文字で読んで面白かったと言ってもらえるのも嬉しいのですが、台本だけで完結できるものをミュージカルにする必要はないですから。

人と人が交わるのが演劇の現場なのに…

拡大西川大貴=岩田えり 撮影

――この作品のテーマは何でしょうか?

 どんどん多様化していく中で自由になればなるほど、同時に発生する漠然とした閉塞感みたいなものを描きたいと思ったんです。ひと言で言えば、「自由と閉塞感」になるのでしょうか。

――自由と閉塞感、相反するものですね。

 そうですね。これから AI がどんどん発達して、人間にしかできないクリエイティブな仕事や、例えばYouTuberのように好きな事を仕事にする時代になっていくと思うんですけど、多様化すればするほど、好きなことが見つからない方はどんどん閉塞感を覚えていくだろうし、見つけられた人はもっともっと自由を求めて苦しくなっていくのかなって。なんだろう、「職人」が生きづらい時代になっていくんじゃないかなと思うんです。例えば俳優も、これもあれもそれもやる…やれてしまう時代になればなるほど、やることが義務になって自由と閉塞感を覚えたりするんじゃないかな。

――自由なのに閉じられてる……?

 何て言ったらいいんだろう。答えになってないかもしれませんが、例えばミュージカルの現場ではダンスシーンの振りをビデオで撮って、それがYouTube にアップされて、それで次の稽古までに復習して来てくださいっていうことが当たり前になってきています。稽古場だけで記憶していた頃よりも効率は良くなるんだけれど、じゃあ空いた時間でこれができますよねって、何かをやらなければいけなくなってしまう。

――確かに。

 楽になって自由なんだけれども、職人としての俳優がどんどん生きづらくなっているような、何か虚しさを感じる瞬間があるんです。オーディションも10代の頃は現場に行って振付の方と会って、その方の人となりを知りながら振りを覚えていたんだけど、それが最近のオーディションでは YouTube に動画がアップされて、これを覚えてきてください、ということも少なくありません。振り写しをしなくていいから時間は短縮できるけれど、システマティックになってしまって、人と人が交わるのが演劇の現場なのに、そういうところで体温を感じられなくなっているような気がするんです。

〈西川大貴プロフィル〉
 俳優・アーティスト・演出家・脚本家・タップダンサー。立教大学現代心理学部卒。幼少期からタップダンスを始め、2001年、ミュージカル『アニー』でデビュー。以降、舞台『レ・ミゼラブル』など、人気作品に多数出演。自ら脚本執筆、舞台演出も行う。また自身が中心に活動する音楽プロジェクト「かららん」でのLIVEや創作活動など幅広く才能を発揮し、これまでに2枚のアルバムを発表している。近年の主な舞台出演に、『マタ・ハリ』、『DAY ZERO』、『ゴースト』、音楽劇『道 La Strada』、『ソーホー・シンダーズ』、『BACKBEAT』などがある。2020年5月~『ミス・サイゴン』トゥイ役での出演が決まっている。
公式ホームページ
公式twitter

◆公演情報◆
ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』
会場:DDD青山クロスシアター
日程:
2019年11月15日(金)~11月18日(月) 1st プレビュー公演
2019年11月23日(土・祝)~11月26日(火) 2nd プレビュー公演
2019年11月30日(土)~12月15日(日) 本公演
料金:
1stプレビュー公演:3,500円
2ndプレビュー公演:4,500円
本公演:6,000円
拡大ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

★サポーターズシート(11/30(土)~12/15(日)の本公演のみ取扱い)10,000円やプレビュー・本公演 Wチケット9,000円、U28チケット4,500円もあります(共に前売りのみ)。詳しくはホームページへ。
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[スタッフ]
脚本・演出:西川大貴
音楽:桑原あい
振付:加賀谷一肇
スーパーバイジング・ディレクター:ダレン・ヤップ
[出演]
天羽尚吾/猪俣三四郎/上田亜希子/梅田彩佳/岡村さやか/奥村優希/風間由次郎/加藤梨里香/塩口量平/四宮吏桜/関根麻帆/寺町有美子/橋本彩花/深瀬友梨/溝口悟光/宮島朋宏/吉田要士(※五十音順)
※スウィング制度により、出演者は変更となる場合があります(詳細は公演公式HPをご覧ください)。
ピアノ演奏:上浪瑳耶香/森本夏生

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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