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西川大貴インタビュー/下

ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』脚本演出、トライアウトし続ける1カ月に

真名子陽子 ライター、エディター



西川大貴インタビュー/上

共通言語を持った人を選んだ

――楽曲が20曲以上あるんですね。

 実験的な企画なので、前衛的なミュージカルなのかなと思うかもしれないけれど、とてもキャッチーな曲が多いんです。絶対に良い曲が入るというのを想定してわざと台本に余白を作ったり、物語を詰めなかったり、ちょっと可笑しな設定にしたりしています。

――その音楽を担当しているのが桑原あいさんです。

 長い付き合いですね。僕が14歳の時、アルゴミュージカルという小椋佳さんが主宰していた子供ミュージカルで桑原が演奏を担当していたんです。振付の加賀谷(一肇)くんも13歳から共演していて、3人はアルゴミュージカルつながりなんです。

――じゃあ、信頼関係はばっちりですね。

 もうこの二人しか考えられなかったですね。この企画が動くかもってなったその日に、一緒にやりたいと二人の名前をすぐに出しましたから。

拡大西川大貴=岩田えり 撮影

――そして、キャストもフルオーディションをされました。

 トライアウト公演なのでいろんな可能性を探りながら創っていきたかったし、やはり大きな海外ミュージカルの作品に関わっていると、どうしても失敗しない芝居作りを求められます。プレッシャーもありますし、やっぱり人間だから失敗するのが怖かったり……。でも、今回はどんどん失敗していきましょうと言っていて、失敗した先に自分でも把握していなかった化学反応が起きると思っています。本来それが演劇のおもしろさだと思うので、そういう挑戦を恐れない人や、これしかやりたくないとか、これしかできないと一つのことに長けている人よりも、あれも好きこれも好き、これはやったことないけど試してみよう、そう思ってくれる方を選びました。

――そういうところをオーディションで見られたんですね。

 ほぼ全員に、こういうことを言ってください、こういう風にやってください、じゃあこういうのはどう?って、一人ひとりに時間をかけてやりました。それに対して嫌悪感を持たない、共通言語を持った人を選びましたので、稽古もすごくスムーズに進んでいます。

――オーディションをやっていかがでしたか?

 楽しかったですよ、めちゃくちゃ大変でしたけど。頭が取れるかと思いました(笑)。最初400人ぐらいから200人にして、そこから70人、そして17名のキャストと3人のスウィング(※1)を選ばせてもらいました。

※1 スウィングとは(公式ホームページより)
 キャストが急なアクシデントや故障などによって、本番に出演しないことが最善だと判断された場合、代わりに出演する俳優のこと。複数ポジションをいつでも演じられるように稽古しており、この存在によってキャストが無理せず身体を休めることができたり、公演中止となることを防ぐことができる。質の高い公演を継続するために、欠かせないポジション。

スウィングがリスペクトされるポジションになれば

拡大西川大貴=岩田えり 撮影

――そのスウィング制度も今回取り入れたい要素だったのですか?

 ダブルキャストだと単純に稽古時間が倍必要ですし、俳優も人間なので、お互いに遠慮しちゃったり、必要のない忖度をしてナーバスになったりといったことが当たり前にあります。本当は別々に役作りをしてあげたいんだけど、動きを一緒にしないと事故がおきるから、今回はこの方の動きに合わせてもらおうといった制約が出てきてしまいます。僕も一観客としてキャストの組み合わせで観るおもしろさはわかるんですが、トライアウト公演として作品の可能性を追求していく上で、ダブルキャストの選択はないなと思いました。

――そこでスウィング制度を。

 日本ではまだまだ浸透していないけれど、シングルキャストの長期公演だと怪我などのトラブルが考えられるので、絶対にスウィング制度は必要だなと。

――でも、スウィングは誰でも良いというわけではないですよね。

 キャストとして出ること以外に、クリエイティブな作業に喜びを感じる人であるということと、オールラウンダータイプの俳優で、あらゆる役に対応できて挑戦を恐れない人。そして、歌も踊りもちゃんと経験がある方を3人、年齢はバラバラですけれど選ばせてもらっています。めちゃくちゃ大変なんですよ、キャスト全員分を覚えないといけないですから。

――そういうことですよね。どんな状況になってもすぐに対応しなきゃいけないから、キャリアが必要ですね。

 めちゃくちゃいるんです。むしろキャストよりも必要なスキルは多いと思いますし、正直に言うとキャスト以上にギャランティが保障されてしかるべきポジションだと思っています。

――今、それを思いました。

 クリエイティブスタッフとキャストと両方の仕事があるんです。2つの脳みそが必要な訳です。海外ではキャストよりも高いギャランティをもらっているスーパースウィングがいたりします。今回は制作会社さんにご理解いただいてやっているので、ちゃんとお支払いさせてもらっていますが、キャストより安い賃金で未熟な若手を雇うのではなく、日本でもちゃんとギャランティが保障されるようになって欲しいですし、スウィングがリスペクトされるポジションになったらいいなと思います。

〈西川大貴プロフィル〉
 俳優・アーティスト・演出家・脚本家・タップダンサー。立教大学現代心理学部卒。幼少期からタップダンスを始め、2001年、ミュージカル『アニー』でデビュー。以降、舞台『レ・ミゼラブル』など、人気作品に多数出演。自ら脚本執筆、舞台演出も行う。また自身が中心に活動する音楽プロジェクト「かららん」でのLIVEや創作活動など幅広く才能を発揮し、これまでに2枚のアルバムを発表している。近年の主な舞台出演に、『マタ・ハリ』、『DAY ZERO』、『ゴースト』、音楽劇『道 La Strada』、『ソーホー・シンダーズ』、『BACKBEAT』などがある。2020年5月~『ミス・サイゴン』トゥイ役での出演が決まっている。
公式ホームページ
公式twitter

◆公演情報◆
ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』
会場:DDD青山クロスシアター
日程:
2019年11月15日(金)~11月18日(月) 1st プレビュー公演
2019年11月23日(土・祝)~11月26日(火) 2nd プレビュー公演
2019年11月30日(土)~12月15日(日) 本公演
料金:
1stプレビュー公演:3,500円
2ndプレビュー公演:4,500円
本公演:6,000円
拡大ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』

★サポーターズシート(11/30(土)~12/15(日)の本公演のみ取扱い)10,000円やプレビュー・本公演 Wチケット9,000円、U28チケット4,500円もあります(共に前売りのみ)。詳しくはホームページへ。
公式ホームページ
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[スタッフ]
脚本・演出:西川大貴
音楽:桑原あい
振付:加賀谷一肇
スーパーバイジング・ディレクター:ダレン・ヤップ
[出演]
天羽尚吾/猪俣三四郎/上田亜希子/梅田彩佳/岡村さやか/奥村優希/風間由次郎/加藤梨里香/塩口量平/四宮吏桜/関根麻帆/寺町有美子/橋本彩花/深瀬友梨/溝口悟光/宮島朋宏/吉田要士(※五十音順)
※スウィング制度により、出演者は変更となる場合があります(詳細は公演公式HPをご覧ください)。
ピアノ演奏:上浪瑳耶香/森本夏生

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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