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真矢ミキ、5年ぶりの舞台『正しいオトナたち』

初めてのストレートプレイに挑戦

真名子陽子 ライター、エディター


 真矢ミキさん主演の舞台『正しいオトナたち』が、28日に東京先行公演の初日を迎えます(名古屋、兵庫、東京公演と続く)。朝の情報番組を4年半勤めあげ、約5年ぶりの舞台復帰作品となる『正しいオトナたち』は、歌も踊りもないストレートプレイ作品で、フランスの劇作家ヤスミナ・レザが書いた4人芝居。共演に、岡本健一さん、中嶋朋子さん、近藤芳正さん、演出は上村聡史さんが手掛けます。

 大阪で真矢さんの取材会が行われ、5年ぶりの舞台について、作品や共演者のこと、初めてのストレートプレイへの意気込みや情報番組を経験して変わったこと、そして関西人の特徴まで、さまざまな角度から作品の魅力について語っていただきました。

情報番組は役者として良いトレーニングに

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影/トップス:マレーラ/MARELLA(03-3470-8233)、スカート:ランバンコレクション/LANVIN COLLECTION(03-5491-8860)、イヤリング:アジュテアケイ/ajouter a‘K(088-831-0005)

記者:5年ぶりの舞台出演です。今の思いを聞かせてください。

真矢:宝塚歌劇団に20年間いまして、卒業後の進路についてはいろんなやり方があると思っていました。どのやり方も正解ですし冒険だと思うんですけれども、私は舞台ではなく映像の世界に入らせてもらおうと思いました。今年、宝塚をやめて21年目になります。舞台からずっと離れていたのですが、5年前に(舞台の)お芝居をがんばってみようと思ったんですね。中尾彬さんが50代は芝居に深味や味わいが出るから、芝居をガッツリやるんだぞと言われまして、わかりましたとなった時に朝の情報番組が決まりました。その4年半、日々、分刻みで人の人生の悲喜こもごもを考えるということは、私にとってすごく良いトレーニングになりました。その瞬間にそこで何を思うか……役作りの入り口でしている作業とすごく似ているんです。大人になってからの一歩は非常に勇気のいる一歩でしたが、結果、違う意味の味わいを役者としてしっかりと受け止めることができましたので、ここでどっぷりとミュージカルとは違う、歌と踊りもないストレートプレイをやらせていただこうと思いました。

記者:ストレートプレイは初めてですよね。

真矢:そうなんです。これも私にとっては大きな一歩です。共演者は見ての通り芸達者な方たちばかりで、その中に思いっきり浸れることが楽しく、今は楽しみながら苦しんでいます。こんなに経験豊富な方たちと、毎日、化学反応を試している時間がすごく楽しいです。

人間が必死に生きている様はとても滑稽

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影

記者:この作品の魅力やおもしろさを教えてください。

真矢:戯曲を読むたびに違う世界観が広がり、もっと読みたい、今日は何を感じるんだろうと思うんです。夫婦二組の話で、子どもたちの喧嘩を巡って穏便に済ませようと始めた話し合いが、どんどん違う方向に亀裂が入って、最終的に子どもも軽蔑するような最悪な大人の喧嘩に発展していくんです。人間が切羽詰まった時にまき散らしてしまう空気が溢れています。そしておもしろいなと思うのは、人間が必死に生きている様を俯瞰で見ると、とても滑稽なんだなと。この作品は喜劇なんですがやる側としては喜劇じゃなくて、もう鼻の穴が膨らむほど真剣です(笑)。私の必死に生きている姿も、周りから見たら滑稽なのかもしれないと思いますし、そういうところが見所でもあります。

記者:久しぶりの稽古場の雰囲気はいかがですか?

真矢:楽しいですね。受験勉強のように一語一句、なぜこれを言ったんだろうとみんなと考えながら、演劇の受験をしているようですし、上村さんの忠実に本を読み解きたいという力がすごくおもしろいです。自分たちの今までの出来事、できれば明らかにしたくないようなことも吐露し合っています(笑)。上村さんはいつも稽古初日には台本は外してほしいとおっしゃるのですが、今回に限り持っていて良いと言うんですね。膨大なセリフ量なので、セリフを思い出す時間があるんだったら、台本を持ったまま物語を走ってくれと思っていらっしゃるかもしれないです。

記者:演じるヴェロニクという女性はどんな人物でしょうか? 共通点などあれば。

真矢:似ているところ……、彼女は石橋を叩いて叩いて叩きすぎて割れて橋がなくなってしまうタイプなんですね(笑)。私も情報番組を始めるまではめちゃくちゃ石橋を叩く人だったんです。点検する時間が長いタイプで、でも番組のおかげでしょうか、自分の調べたいことや知識として入れたいことは、短い時間に集中してするべきだと学びました。似ていないのは依存型ではないというところです。この女性は自信のなさを教養やモラル、知識や芸術などで埋め尽くして、何を聞かれても答えられるようにしているんです。作家なんですけれども、古いものから思考の根源となるものを得て、そこから咀嚼して現代を生きてるような人間で、現実を見ていない。子どもも完璧に面倒を見て愛している自分に納得しています。子どもが歯を折るところから物語が始まるんですけども、子どもの歯が折れただけで自分の細胞が消えたような、夫が自分に反論しただけで体の半分が壊れたような、そういう考えを持っているんですけど、そこは似てないです。私は家族に依存しないですね。

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影

記者:二つの夫婦が喧嘩し合うというたわいもない話がなぜうけるんでしょう?

真矢:4人それぞれ職業が違うんですね。私が作家で、夫役の近藤さんは金物屋、岡本さんが弁護士で奥様役の中島さんが資産運用を仕事にしています。私たち夫婦は過去にヒントがあると思っていて、どれだけハイテクな時代になってもやっぱりアナログだよっていう夫婦で、もう一方の夫婦は未来に向かって前進して行こうというまったく違う2組なんです。過去に頭がいってる人と未来に頭を置いている人、でも両方とも現実を見ていないところがすごくおもしろいです。そういう私たち4人を見て何か生きていくうえのヒントがあるんじゃないかなと思いますし、観終わってから、僕はどうしよう、私はこう生きたいという風に楽しんでいただけたらいいなとも思います。どう生きようかと思ったとき、人の人生を俯瞰するのが一番わかりやすいと思います。そんな風に楽しんでいただける作品だから現代に受けているじゃないかな。コメディですから、悲劇も楽しんで喜劇にしようというところもありますので、そういうところも楽しんでいただきたいです。

記者:真矢自身が振り返って滑稽だったことは?

真矢:いっぱいありますよ! 宝塚時代の映像を先日初めて見たのですが、私だったらこの人のファンにならないなって(笑)。ずっと付いて来て下さっているファンの方には申し訳ないんだけれど、なんか必死すぎてね。もうちょっと遊びの部分はないのと思わせるところが見え隠れしているんです。実際は本当にゆるいんですよ、家では。仕事だけカチッとしていて、他は余力だけで生きているんです。そんなバランスなので、もうちょっとユーモアやゆるいところをいろんな役に入れていきたいなと思っています。普段の自分にも。以前はこういうことも隠しまくって言えなかったです。でも朝の番組でポロポロこぼれちゃったみたいで(笑)、ちょうど良い感じになりました。

エネルギーが余ってる人はだいたい関西人

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影

記者:兵庫公演がありますが、関西で舞台に立つのは久しぶりですか?

真矢:退団してから初めてですね。大阪に降り立つと、空気が違うというか久々に深呼吸をしたなと感じます。小学5年生の時に大阪に引越してきて、その後宝塚に20年間いたんですけれども、やはり多感な時期だったからか、関西ナイズは叩き込まれています。仕事をしていると関西人ってわかるんですよ、関西弁じゃなくても。なんだろうなあ、まだエネルギーが余ってるよねっていう人を見つけると、だいたい関西人だったりするんです(笑)。今回、コメディ作品ですが大丈夫な気がしますし、やりきります!と思っています。もちろんコメディを甘く見ていないですし、コメディの裏には愛情と人情が流れているのを知っています。泣き笑いが一番おもしろいですよね。幼い頃の教育に笑いを入れるものだなって、関西を離れた時に思いました(笑)。サービス精神が違うのかな、それで失敗することも多かったですけどね。

記者:そんな関西の血が流れている真矢さんのエネルギーの源は?

真矢:なんだろう……やっぱり人を喜ばせたいというシンプルなものかもしれないですね。生まれて半世紀が過ぎましたけれども、人生100年時代になってきて、あと半世紀弱生きるんだったら、まだ落ち着くには早いなと。自分の可能性は叩いたらまだ出てくるのかな、勇気を出して律したら良質なものに変わっていくのかなと、まだ自分に期待しているところがあります。それも源になっているかもしれないです。

お芝居に説得力のある方は人物そのものが素敵

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影

記者:共演する3人について教えてください。

真矢:芸達者な方々で似たような年代ですが、この方達に付いていきますというのは失礼なぐらいエネルギーがいるんです。一個人として頼ってもらえるような人物としてこの作品を走らなければいけないというか、百戦錬磨なんですよね、皆さん。だから私も自己意識というものを高めないといけません。そして、すごく素敵な方たちなんです。お芝居に説得力のある方は人物そのものが素敵なんだなということを発見しました。

記者:近藤さんのコメントに綺麗な女優2人がとてつもない姿を見せると書いています。どんな姿を見られそうですか?

真矢:なんだろうなあ。自分でも思ってもみなかった1日ってあるじゃないですか、どうしてこうなるの、どうしてこんなに子どもっぽくなってしまったのって。そんな最悪な1日を作りたいと思っています。自分で破壊していくような1日。そこまで責めていないのに自分でどんどんドツボに入っていくような、そういう1日をお見せしたいなと思います。見せたことのない醜態を晒すことになると思うんですけれども、朋子さんもすごいことになっていまして、みんなで破滅に向かっております(笑)。

記者:新しい真矢さんが見られるんですね。

真矢:そうですね。番組をさせていただいて、いろんなきっかけを作ってもらったと思うんです。成功した日も失敗した日もありましたが、私にとってとても大きな4年半でした。この作品も、振り返った時にそういう風に思える作品だなと思っています。そのぐらい自分をさらけ出します。カッコつける時代は終わったと思っていて、一度裸になるような感覚って人生に何回か必要で、この作品はその一つだと思います。カッコつけない役作りを忠実にしていきたいなと思っています。

記者:上村さんの演出はいかがですか?

真矢:翻訳に非常にこだわっていらっしゃって、先日も岡本さんの長セリフに対して、皆さんに相談することではないんだけれど、と言いながらいろんなパターンを挙げられて、どれが響きますかと。役者を受け入れながら、そこで起こる反応を咀嚼して、ちょっと一回やってみて良いですかとトライを何度も重ねられています。いろんなやり方を提案してくださっています。

舞台は嘘のない等身大の自分が見えるところ

拡大真矢ミキ=安田新之助 撮影

記者:今の真矢さんにとって、舞台はどういう場所でしょうか?

真矢:神聖な場所ですね、やはり舞台で育ちましたので。情報番組で経験した、自分で発言したことは自分で始末することや、生で反応が返ってくるというのは舞台とすごく似ていました。そういう経験を経た後にこの舞台をやらせてもらいます。理想の人間にどれぐらい近づけているか、そのバロメーターがすごくわかる世界だと思うんです。嘘のない等身大の自分が見えるところで、あるがままの自分が今どの段階にいるのかを見せてもらってるというか。演劇に入るとどれだけ成長できているのかがよくわかります、まだまだ低いんですけれども。

記者:舞台の真矢さんを待っていたファンの方もいらっしゃいますね。

真矢:卒業するとき、宝塚を引きずることはやめようと強く思って辞めましたし、私がこれからやることは、ファンの人を失望させてしまうとも思いました。映像の世界に入らせてもらうと宝塚を引きずっていては何もできないんです。やはりあの大劇場だからこその芝居で、技法としては違うので映像の現場では出しませんでした。だから今回、観に来ていただいた方にはどう映るのか、実に楽しみです。やっぱり宝塚の真矢さんが好きだわと思うかもしれないですが、できれば全然違うけど良いよねって言っていただけるような、そういう説得力のある舞台をやりたいなと思っています。そして、演劇好きな方には、やるねぇと言ってもらえたらうれしいですね。

記者:最後にメッセージをお願いします。

真矢:焦らず、言葉を大切にしていきたいです。共演の3人は職人肌でコツコツというのが共通している点だなと、お稽古をご一緒してわかりました。焦ってざっくりと先に進んでしまう癖があるので、ちょっと待てよと自分を落ち着かせながら進めています。コツコツと没頭して真剣に向き合った結果を出すということを、共演する3人と上村さんを見て感じ取りましたので、何か大丈夫な気がしています。ぜひ、観にいらしてください、お待ちしております。

◆公演情報◆
舞台『正しいオトナたち』
東京先行:2019年11月28日(木)~11月29日(金) IMAホール
名古屋:2019年12月4日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
兵庫:2019年12月7日(土)~12月8日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
東京:2019年12月13日(金)~12月24日(火) 東京グローブ座
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ヤスミナ・レザ
翻訳:岩切正一郎
演出:上村聡史
[出演]
真矢ミキ、岡本健一、中嶋朋子、近藤芳正

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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