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沢尻エリカ逮捕に思う。つくづく「美」は罪だ

矢部万紀子 コラムニスト

 「沢尻エリカさん」が合成麻薬MDMA所持容疑で逮捕され、「沢尻エリカ容疑者」になった。以来、彼女についての報道を見たり読んだりする中で、こんなふうに考えた。

 美人過ぎたからじゃないかなあ。

 彼女のことを考えると「美」の持つ力の大きさと、その功罪を感じてしまう。

 そもそもいろいろとあった人だ。映画『パッチギ!』(2005年)を見た時、あまりの美少女ぶりに驚いたが、2年後には「別に」の人になっていた。その2年後にハイパーメディアクリエイターという肩書の人と結婚し、5年後には離婚するのだけど、その頃は主に「ワイドショーの人」だった。

 だけど、彼女は消えなかった。理由はいろいろあるだろうが、決め手は「美」だったと思う。顔がきれいで、スタイルもよい。その程度が甚だしいから、消えなかった。

「ヘルタースケルター」の舞台あいさつを終え、手を振る沢尻エリカさん。左は蜷川実花監督2012年拡大映画『ヘルタースケルター』の舞台挨拶で。左は蜷川実花監督=2012年
 復帰作となった映画『ヘルタースケルター』(12年)が、その象徴だ。岡崎京子さんの同名漫画が原作で、監督は蜷川実花さん。全身を整形手術で改造したモデル・りりこの役だった。確かに整形手術で作り上げたようだ。そう観る人を説得できるパーフェクトな美。彼女はそれを持っていた。

 それからは順調そうに見えた。昨年(2018年)、彼女の出演映画を2本観た。どちらもお目当ては別な人だったが、彼女を見て、その抜群のスタイルと美人ぶりに「エリカさま」を再認識した。地方のスーパーマーケット店員と都会の書籍編集者という、違うタイプの役だったが、どちらも楽しそうに演じていた。「彼女は映画が好きなんだなあ」とも思った。

 ここまでは、「美」の持つ力の「功」の方だ。そして、ここからが「罪」の方。多分に推測が含まれる。

骨身にしみるほどではなかった「失敗や挫折」

 報道されているところによると、彼女は知人から薬物を入手していたそうだ。交際相手のようだ。さらに本人が「10年以上前から、MDMA以外もいろいろな薬物を使っていた」と供述しているとのことだ。

 モテるのだろうな、と思う。モテの源泉は、第一義的には「美」だろう。ずっとモテただろうから慣れてもいいと思うが、彼女はモテるたびにはしゃいでしまう、そういうタイプの人なのだと思う。はしゃぐ延長線上に薬物があった。そこでもはしゃぐ方を優先し、断らなかった。やはり、そういうタイプの人なのだと思う。

 そのタイプでいられたのは、仕事に差し障らなかったからだと思う。他の人が逮捕されるたびに意識していたという供述も伝えられていた。だとしたら、仕事を一気に失ってしまうことはわかっていたのだ。だが、その思考は深まらない。だって仕事はどんどん来る。大河ドラマの準主役までめぐってきた。深めるきっかけが、ない。

 帰蝶(濃姫)役が決まっての記者会見で彼女は、「いろいろ失敗し、挫折もあった。だが、今回の役を女優・沢尻エリカの集大成にしたい」と語っていた。その言葉に嘘はなかったろう。だが彼女の言う「失敗や挫折」は、骨身にしみるほどではなかったのだろうと思う。

 自分の経験に照らして言えば、仕事は集中と懸命さが肝要だと思う。それを疎かにすると、結果が出ない。彼女は集中していなかったろうし、懸命でもなかったと思う。だけど、結果を出せていた。だから失敗や挫折も、骨身にはしみなかった。それを支えていたのが、芸能界でも群を抜いた「美」。「美」が、彼女から考えるという機会を奪ってしまった。美というものの「罪」。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。近刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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