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【公演評】星組『龍の宮物語』

瀬央ゆりあのやさしく誠実な魅力と、女性演出家の感性が溶けあう摩訶不思議なおとぎ話

さかせがわ猫丸 フリーライター


 星組公演、音楽奇譚『龍の宮(たつのみや)物語』が11月28日、宝塚バウホールで初日を迎えました。新しい時代を迎える星組を力強く支える瀬央ゆりあさんが、2度目のバウホール主演に挑みます。

 この作品は、泉鏡花の『夜叉ケ池伝説』と『浦島太郎』から端を発した異郷訪問譚。明治の頃、1人の青年がある日、山賊に襲われている娘を助けたことで、幽玄の世界に迷い込む摩訶不思議なおとぎ話です。

 やさしくて誠実な瀬央さんの魅力が、これがバウホールデビュー作となった指田珠子先生の繊細な感性と見事に溶け合い、哀しくて切ない物語なのに、どこか甘い余韻を残す……。次世代を担う若きスターと新進女性演出家の活躍に、宝塚の未来がまた楽しみになる作品でした。(以下、ネタバレがあります)

やさしさと誠実さがにじむ瀬央

拡大『龍の宮物語』公演から、伊予部清彦役の瀬央ゆりあ=岸隆子 撮影

――明治中期の夏の夜。島村家の書生・伊予部清彦(瀬央)は、仲間とともに百物語に興じていた。その中の一話『夜叉ケ池伝説』では、遠い昔、雨乞いの生贄で池に沈められた娘のすすり泣きが、今も聞こえると言う。だがこの話を信じようとしない清彦に仲間たちは、度胸試しに一晩、池で過ごすよう提案する。意を決した清彦は島村家の令嬢・百合子(水乃ゆり)に、池に咲く桜蓼(さくらたで)の花を一輪持って帰ると約束し、夜叉ケ池に向かうのだった。

 涼やかなマスクの瀬央さんは、明治時代の書生スタイルが実によく似合います。スタンドカラーのシャツに白っぽいかすりの着物に袴、ちょっと長めの黒髪という、レトロでインテリな雰囲気にくすぐられる女性は少なくないはず。おまけに清彦はバンカラではなく、純情男子。おだやかでやさしくてとことん平和主義という、ふだんの瀬央さんのイメージを最高に活かした役柄と言えるでしょう。

 百合子は明るく積極的で、当時における現代っ子というイメージを、水乃さんは元気いっぱいに演じています。清彦も百合子は、互いにほのかな恋心を抱いていても、今一歩踏み込めないのがもどかしい。屈託のない百合子のお嬢様らしさに時に心を傷つけられても、ただ純粋に花を持って帰ってあげたいと思い続けるピュアな清彦に、胸くすぐられずにはいられません。

◆公演情報◆
音楽奇譚『龍の宮物語』
2019年11月28日(木)~12月9日(月)  宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:指田珠子

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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