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『もしドラ』岩崎夏海さんが語るモラハラの新定義

原辰徳はモラハラをしているのか?

井上威朗 編集者

いい「構え」をしているビル・ゲイツ。こいつは本物だ

――豊田社長はいい人ですよね。最近も「ガソリン臭くて音がいっぱい出る、野性味あふれるクルマが好き」「心の底では、クルマってのはそういうもんだと思ってるんですよ」と語ったことが話題になりましたし。

岩崎 ですが、そんなトヨタが大丈夫かっていうと、厳しい局面に立たされているのも事実。つまるところ、日本型の「いい人が社会を回す」という考え方に対して、「完全に良い製品が社会を回す」という、ドラスティックな世の中に移行しつつあるのかなと思えますね。

――そうした世の移り変わりに対応するにはどうしたらいいですか。

岩崎 ずばり本、書籍です。知識を得るために最適な習慣として、本以上のものはないですね。たとえばビル・ゲイツは財団を設立し、投資家のウォーレン・バフェットと共に世界の諸問題を解決するという取り組みをしていますよね。彼がどのように「諸問題」を考えるのかというと、本を何十冊も抱えて、2週間ほど山小屋に篭もるのだと。

――山籠もりのなかで書籍の中身を全部インプットして、新しいソリューションを考える、といわれていますね。

岩崎 それは合理的なことだと思うんですよ。一流の叙述者が書いた本って、その人が一生をかけて調べあげた知識や概念、考え方みたいなものを、読者は2~3時間でパッと剽窃できてしまうシステムです。お代は高くても3000円ぐらい。こんなに贅沢な話ってないですよ。ビル・ゲイツは、世界で一番忙しい男といわれていますけど、それでも本を読みつづけているのは、読書こそ一番効率がいい習慣、と考えているからでしょう。

ビル・ゲイツ氏拡大山小屋に篭もって大量の本を読むというビル・ゲイツ氏

――彼の場合は、ひとつの書籍で知識を得て終わらせず、社会全体への包括的な問いやまなざしを得る、ということがスタート地点。

岩崎 ゲイツは知識そのものをアップデートするのみならず、イノベーションを起こす立場ですからね。単なる技術を知ればいいだけじゃなくて、社会のことも知らなくてはならない。そういうことも含めて、山籠もりの習慣があるんでしょうね。

――最高にスマートな話題の途中なんですが、ああー! 岩崎さん、われわれが会話にお籠もりしている間に亀井義行に走られまくってダブルスチール、岡本和真はタイムリーで5点目をあげていますよ。

岩崎 おや、どうもガルシア投手は……。

――岩崎さん、ビールもう1杯ぐらいどうですか。ああ、これは継投まったなしですな。

岩崎 これはどうも。野球の現場だから思うのかもしれないですけど、僕ね、人間を見るとき、その人の「構え」ってものを見るんですよ。

――ビル・ゲイツの「構え」、ですか。

岩崎 そうそう。こいつ打ちそうだなとか、こいつ抑えそうだなとか、非常にフラットなスタンスで落ち着き払ってやっているなあ、とか。こうして構えという観点からビル・ゲイツを眺めると、彼はもはや、成果をあげることがそんなに目的じゃなさそうに見える。むしろ知的好奇心でやってるんじゃないか。

――「こいつ……野球を楽しんでやがる」みたいなことですか。

岩崎 そんな感じ。ビル・ゲイツはいまや、イノベーション自体を楽しんでいるんですよね。実はあんまり責任を負っていないというか。言ってしまえば、自分とバフェットの金の運用ですからね。

――自分らが稼いで持ってきた金なのだから、どう使おうと文句はないだろと。

岩崎 そうそう。そんななかですごくいい「構え」をしているので、こいつは本物だな、というのは思いましたね。

――その見立ては面白いです。逆に言うと、たぶん岩崎さんは、ペテン師のような人間にうんと遭遇してきているでしょうから、そういう輩と比べると、明らかに違うであろう佇まいがあるんでしょうね。

岩崎 僕ね、まったく騙されなかったわけじゃないですけど、だいたい騙されない率は高いかなとは思います。よく言うのは、偽物を見抜く目を大事にしている、というか。

――おおー、岩崎夏海の「偽物論」。聴きたいですね。

岩崎 固有名詞は避けますが、自分とやり合ったことのある言論人で、これは没落するなっていう人はわかります。そして、だいたいその通りになっていますね。

――構えで思うのですね。

岩崎 はい。何が良くない構えなのかといえば、そういう人たちが本質に行こうとしていないからなんですね。

――どういうことですか。

岩崎 そこに「モラハラ」っていうキーワードを挙げたい。

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筆者

井上威朗

井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者

1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍などの編集を経て、現在は科学書を担当。