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歌舞伎界の新プリンス尾上右近が現代劇に挑戦/上

ドラマのスピンオフオリジナル舞台『この声をきみに~もう一つの物語~』上演

大原薫 演劇ライター


 2017年9月にNHKで放映された竹野内豊主演ドラマ『この声をきみに』。本ドラマのスピンオフオリジナル舞台『この声をきみに~もう一つの物語~』が、2020年3月上演される。ドラマ版を担当した脚本家、大森美香が新たに書き下ろす。舞台版では、ドラマで描かれた朗読教室を舞台に、新たな登場人物、エピソードを描く。朗読のもつ言葉の力がこじれた大人の心に染み入るような、現代を生きるオトナたちへ贈るラブストーリーになるという。

 本作で主演する尾上右近。歌舞伎俳優の右近にとって現代劇の出演は今回が2作品目となる。右近が演じるのは、コミュニケーションが苦手な会社員、岩瀬孝史。上司とも部下ともうまく話せず息苦しさを感じている彼が朗読教室に通うことで変化が生まれる様を描く。

 スーパー歌舞伎II『ワンピース』で主役ルフィを演じるなど、今注目を集める歌舞伎界の新プリンス。「感情から出てくる言葉」を大切にしているという右近が本作について、常日頃心がけていることなどを語ってくれた。

台詞の力を借りて、役に育てられてきた

拡大尾上右近=宮川舞子 撮影

――今回の『この声をきみに』は、コミュニケーションが苦手な会社員の青年が朗読教室に通うという設定です。

 表現という力を借りて、人間がアウトプットする瞬間はたくさんあると思う。そして、それを見ている人たちが「ああ、自分の気持ちを代弁してくれているな」と思うことで感動の共有になるんです。朗読、読み上げることで心の扉を開く。コミュニケーションが苦手な人間にとって、とても暖かい治療法だと思います。僕は斉藤和義さんの「歌うたいのバラッド」という曲が大好きなんですが、その歌詞には「唄うことは難しいことじゃないその胸の目隠しをそっと外せばいい」とあるんです。それって、表現の力を借りて人間が気持ちを伝えることができるんだと歌った瞬間じゃないかなと思って。僕自身も舞台に出て、台詞の力を借りることで、役に育てられてきましたから。自分が「この台詞はこういうことか」といろいろ考えて表現することで、自分の心も育っていく。スーパー歌舞伎II『ワンピース』のときに、特にそう思いました。ルフィのまっすぐな台詞を言っていて、自分自身も励まされてきた。だから、朗読でも同じようなことが起こるんじゃないかなと思いますね。

拡大尾上右近=宮川舞子 撮影

――確かにそうですね。右近さんの演じるルフィの言葉で私たちが心を励まされたのも、演じている右近さんがすごいエネルギーを発してくださったからだと思うんです。

 僕は言霊を大事にしていて、マイナスのことを口にしないように気を付けています。「言っていれば、願いは叶う」というのもよく言われることだし、実際そうかなと思う。だから、僕自身は元気がないときに、空(から)元気という対処法をしてるんですよ(笑)。

――空元気ですか(笑)。

 元気じゃなくても、元気な振りをして、元気な言葉を口にしているうちに、元気になっていくんです。そういう言葉を口にして表現することで、周りの人を元気にさせたり。ある意味、形から入るということですが、でも形に気持ちがコミットしていく場合もあると思う。もちろん、気持ちが言葉になって出るということもあるし。その相互関係はいつも気になることですね。

――歌舞伎はすでに先人が創り上げた型がある演劇。歌舞伎の型を演じていくことで、気持ちが型にコミットしていくということもあるでしょうね。

 そう、だからこれは、現代劇と歌舞伎の相互関係と一致しているところでもあります。

◆公演情報◆
拡大舞台『この声をきみに~もう一つの物語~』
舞台『この声をきみに~もう一つの物語~』
大阪:2020年3月6日(金)~3月8日(日) サンケイホールブリーゼ
東京:2020年3月12日(木)~3月22日(日) 俳優座劇場
公式ホームページ
公式Twitter
[スタッフ]
脚本:大森美香
演出:岸本鮎佳(艶∞ポリス)
[出演]
尾上右近 佐津川愛美/小林健一 弘中麻紀 小林涼子 高橋健介/中島歩/小野武彦
 
〈尾上右近プロフィル〉
 1992年5月28日生まれ、東京都出身。清元宗家七代目清元延寿太夫の次男。7歳で歌舞伎座『舞鶴雪月花』の松虫で本名・岡村研佑で初舞台を踏む。近年の出演作には、スーパー歌舞伎II『ワンピース』(2018年)、『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』(2018)。現在、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』に出演中(12月25日まで)。
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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