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ラミン・カリムルー&佐藤隆紀インタビュー/上

『CHESS THE MUSICAL』、色んな国の俳優といい影響を与え合いたい

米満ゆうこ フリーライター


 スウェーデンの人気ポップグループABBA(アバ)のメンバー、ベニー・アンダーソンとヴョルン・ウルヴァースが作曲、『エビータ』『ライオン・キング』などで知られるティム・ライス原案・作詞の『CHESS THE MUSICAL』(=CHESS)が、日英のキャストで来年、日本で上演される。

 同作は1986年にロンドンで開幕し、ブロードウェイや日本などで上演を重ねてきた。米ソの冷戦時代を背景に、チェスの世界チャンピオンでアメリカ人のフレディと、ソビエト連邦出身のチェスチャンピオンのアナトリーが、ゲームをよそに、両国の政治的な思惑に巻き込まれていく物語だ。オペラやロック、ポップス、ディスコサウンドなどを取り入れたダイナミックな楽曲も迫力満点。

 本作に出演するミュージカル界のスーパースター、ラミン・カリムルーと、日本のミュージカル界でメキメキと頭角を現しているLE VELVETS(ル・ヴェルヴェッツ)の佐藤隆紀が、『CHESS』にかける思いや、二人とも演じた役で、役へのアプローチの仕方が全く違った『レ・ミゼラブル』(=レ・ミゼ)のジャン・バルジャン、発声の仕方、世界レベルに到達するにはなど、大いに盛り上がって話してくれた。

ABBAのメンバーによるゾクゾクするような楽曲

拡大ラミン・カリムルー(右)と佐藤隆紀=久保秀臣 撮影

――まず、『CHESS』の魅力をお聞かせください。

ラミン:音楽が今まで書かれたミュージカルの中で、ベストスコアだと思うんです。ティム・ライスの作詞と、ABBAのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァースの音楽で完璧なチームです。物語や登場人物と音楽がぴったりと合い、人々が共感し共鳴できる。『レ・ミゼ』と同じように、それぞれの登場人物の物語が描かれている。ラブストーリーも含まれ、観客はきっと予想もできないようなコネクションを感じられると思います。物語は心に染み込んで、そこから離れることはないと思いますよ。僕が演じるアナトリーは、過去に一度演じたことがありますが、もう一度発展し、進化させたいと思っていた役です。それを日本でできるのがとても楽しみです。

佐藤:ラミンさんと同じで、楽曲の素晴らしさを感じています。僕はABBAを聞いて育ったので、ABBAの二人が書いているというだけでワクワクして楽しみです。今回、ラミンさん、サマンサ・バークスさん、ルーク・ウォルシュさんの豪華なキャストの中で出演させていただけることを本当にうれしく思っていますし、緊張もしています。この作品を生で観たことはないんですが、音源を聴いたり、映像を見たりする中で、ゾクゾクしてくるような楽曲ばかりだと思いました。

――お若いのに、ABBAの楽曲を聴いて育ったのですね。

佐藤:『CHESS』にはいかにもABBAだなという楽曲は少ないのですが、僕はクラシックを歌うことが多かったので、今回はリズムを感じて歌わなきゃいけないなと。また、声を張り上げすぎてもいけないし、歌うのが難しそうですね。『CHESS』の楽曲に出会うことで成長したいですし、今までとは違う歌い方を探求していきたいです。

――豪華キャストが出演するので、緊張感もあるのでしょうね。

佐藤:そうですね。ラミンさんは、僕がジャン・バルジャンをさせていただいた時に、ラミンさんのバルジャンを見て、素晴らしいと思っていた方です。その方と今、こうしてご一緒できるという喜びがあります。また、サマンサさんも映画「レ・ミゼラブル」(エポニーヌ役)を見て、何て歌が上手な方なんだろうと、感動しながら見ていたんです。まさか今回、ご一緒できるとは思ってもみなかったので、身が引き締まる思いです。字幕は付きますが、全編英語で歌うので、そこの壁も越えられるように、しっかりと練習して、ついていきたいなと思っています。

拡大ラミン・カリムルー(左)と佐藤隆紀=久保秀臣 撮影

――ラミンさんは、昨年、ワシントンで、コンサート版『CHESS』でアナトリーを演じられました。フレディ役にもぴったりで、両方演じられそうだと思っているのですが、アナトリー役に思い入れがあるのでしょうか。

ラミン:そうですね、ワシントンの公演は新しい台本で、アップデートし新しい物語にしようとしていたんです。『CHESS』は完成したものではなく、これだという普遍的な台本を探している最中なのではないかと思います。僕はイラン生まれで、政治的な問題から色んな国に渡って生きてきました。アナトリーは故郷を探し続けている人物で、そこが僕ととても重なるんです。彼は普通の人生を送りたいと思い、純粋にチェスを愛していたのに、政治的な問題で邪魔されてしまう。今でもロシアとアメリカは問題を抱えていて新聞をにぎわせています。僕にとって故郷と呼べる場所は色々あり、それはそれで素敵なことです。だから、アナトリーにより思い入れがあります。でも、もしフレディを演じていたら、それはそれで面白かったでしょうね。

――佐藤さんは、今回はアービターという審判の役です。中立的な立場の役どころですよね。

佐藤:冷徹にフェアである人物像を作っていきたいです。僕も結構、優しい人に見られて、中間が好きな人間なんで(笑)、冷徹さをちゃんと役の中で作っていかなければいけないなと感じています。歌詞や楽曲にもそういう面は表れていると思うので、ちゃんと歌い方でも出せるようにしたいですね。

――台本には書いていないのですが、アービターは一体、どこの国の人なのでしょう。

佐藤:それは僕も不思議に思っていたんです。2015年にミュージカルバージョンで上演された『CHESS』は、アービター役は田代万里生さんだったんです。その時の記事を読むと、あえてどこの国か分からない設定にしてあるそうで、中立さを意識した上のことなんでしょうね。

◆公演情報◆
『CHESS THE MUSICAL』
大阪:2020年1月25日(土)~1月28日(火) 梅田芸術劇場メインホール
東京:2020年2月1日(土)~2月9日(日) 東京国際フォーラム ホールC
公式ホームページ
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[スタッフ]
作曲:ベニー・アンダーソン / ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・振付:ニック・ウィンストン
[出演]
ラミン・カリムルー 、サマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀(LE VELVETS)、
エリアンナ、増原英也 ほか
 
〈ラミン・カリムルー プロフィル〉
 イラン生まれのカナダの歌手・俳優。ブロードウェイ・ミュージカル『レ・ミゼラブル』(2014年トニー賞ノミネート)のジャン・バルジャン役や、ロンドンのウエストエンドでの『オペラ座の怪人』のファントム役において、その演技力と音楽性で高い評価を得ている。最近では、ブロードウェイで『アナスタシア』のグレブ役、ワシントンDCケネディ・センターでの『CHESS』ではアナトリー役として出演。2019年4月には来日記念盤としてEP「フロム・ナウ・オン」(CD+DVD)を日本独占でリリース。
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〈佐藤隆紀プロフィル〉
 国立音楽大学演奏学科 声楽専修 卒業。2009年に「LE VELVETS」のメンバーで音楽デビュー。テノール担当。2015年に『タイタニック』でミュージカルデビューし、以降、ミュージカル作品で活躍。出演作品は『レ・ミゼラブル』『マリー・アントワネット』『マリー・アントワネット』『マタ・ハリ』『キューティ・ブロンド』など。「LE VELVETS」として、2019年11月にCD「WORLD MUSICAL」をリリース。2020年4月から、ミュージカル『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ役での出演が決まっている。
公式twitter

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

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