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ラミン・カリムルー&佐藤隆紀インタビュー/下

『CHESS THE MUSICAL』、国という枠を取っ払って頑張る姿に感動する

米満ゆうこ フリーライター


ラミン・カリムルー&佐藤隆紀インタビュー/上

僕らは色んな考え、ボイスを持ったワンピープル

――以前、ラミンさんが出演した『プリンス・オブ・ブロードウェイ』を演出したスーザン・ストローマンさんに話を聞くと、「日本の俳優は初めはシャイだけど、火がつくとすごいものを発揮する」とおっしゃっていました。ラミンさんは日本の役者とお仕事をしてどう思いましたか。

ラミン:環境によるものだと思います。日本の方は私たちが「真実を見せ、隠したり、フェイクすることはないんだよ」というのを見せると、成長して変わってくるんです。環境によってやり方が異なるだけで、どちらが良い悪いではない。僕らは違うバックグラウンドがあり、違う国から来ているんです。色んなバックグラウンドを持った俳優たちが一堂に集まるのは、本当にエキサイティングで、いい影響を与え合えると思います。ニックがそういう場を発展させ、新しい方向性を探っていくと思います。僕には日本人だから、イギリス人だからという違いは見えない。僕らはワンピープルで、色んな考え、ボイス、ビジョンを持っていて、作品に貢献できる。一つにつながるんです。僕たちが教えるのではなく、お互いから学び、それは同等のものである。特別なものが日本にはあり、日本のアーティストにはいつも感銘を受けるんです。日本の劇場にいるとすごく守られていて、神聖な気がして、それは日本の伝統からくるものだと思っています。僕らが失ってしまったものかも知れません。

佐藤:僕は海外のキャストやスタッフの方からは、いつも何かをもらってばかりいる気がしますが。僕は今の自分で満足したら終わりだなと思うので、一つひとつの作品を思い出したときに、「あれを学んだ、これを学んだ」と思えるような作品に出会って、これからも向き合っていければと思いますね。

ラミン:(日本語で)すごい!

佐藤 アハハハッ。

拡大ラミン・カリムルー(右)と佐藤隆紀=久保秀臣 撮影

――東京オリンピックがある、2020年の年明けに『CHESS』は上演されます。チェスも闘うスポーツのような要素がある作品ですね。

ラミン:僕らが物語を語るときに観客がコネクションを感じるかだと思います。多くの国の人々がステージに立つわけだから、オリンピックとのパラレルワールドを感じるのは分かります。正直、オリンピックに関して言えば、あまりクリーンではなく、政治的な問題がたくさん絡んでいるという印象です。オリンピックでは政治的、国際的な問題を別にして、目的やつながり、純粋な美しさを見つけたいです。アスリートだって、政治的なノイズには巻き込まれたくないはずで、純粋に競い合い、人間がどこまでの記録に到達できるか自分を押し進めるだけだと思います。それは、この作品のキャラクターも同じです。

佐藤:本当にその通りで、素晴らしいコメントだと思います。日本人としては、このオリンピックが行われる年に、外国のキャストと共にステージに立てるというのは、ある意味、僕らのオリンピックみたいな気持ちです。ラミンさんがおっしゃったように、この作品は一人ひとりの生き方が描かれている。国という枠を取っ払ったときに、チェスのプレイヤーが頑張っている姿に感動するのかなと思います。

バルジャンとして本当に幸せに死んでいけた

拡大ラミン・カリムルー(右)と佐藤隆紀=久保秀臣 撮影
――ここで、話を変えて、お二人とも過去に演じた『レ・ミゼ』のジャン・バルジャンについておうかがいしたいと思います。ラミンさんは2014年にブロードウェイでこの役を演じ、佐藤さんは今年日本で初挑戦されました。大役をやった後、自分の中で何かが変わりましたか。

ラミン:僕にとっては、記念すべきブロードウェイデビューでもあって、トニー賞にノミネートされました。受賞できませんでしたが(苦笑)。ブロードウェイがすべてだとは思っていなかったけれど、あそこで大きな扉が開いた。素晴らしい人たちに出会って、プロデューサーからも声がかかるようになり、人脈が広がりました。『レ・ミゼ』のプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュにオファーされた時「そんなにうまくできないし、歌えないと思うよ」と言ったことを覚えていますが、すべてがうまくいきました。

佐藤:僕も今までお芝居で苦労はしていましたが、音楽の面で苦労したのは『レ・ミゼ』が初めてなんです。毎日、こうでもない、ああでもないとトライの連続でしたね。お芝居をしながら歌うのと、ただ歌うのは全然違うんですよ。怒鳴ったりしながら歌うシーンで、高い音になったときに、なかなか思うように歌えなくて。やっぱり、伝えるというところを忘れてはいけないので、そこはできたという気持ちはあったんですが、ただそれがいい声だったかと言われると疑問でした。本当に難しかったですね。

◆公演情報◆
『CHESS THE MUSICAL』
大阪:2020年1月25日(土)~1月28日(火) 梅田芸術劇場メインホール
東京:2020年2月1日(土)~2月9日(日) 東京国際フォーラム ホールC
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[スタッフ]
作曲:ベニー・アンダーソン / ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・振付:ニック・ウィンストン
[出演]
ラミン・カリムルー 、サマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀(LE VELVETS)、
エリアンナ、増原英也 ほか
 
〈ラミン・カリムルー プロフィル〉
 イラン生まれのカナダの歌手・俳優。ブロードウェイ・ミュージカル『レ・ミゼラブル』(2014年トニー賞ノミネート)のジャン・バルジャン役や、ロンドンのウエストエンドでの『オペラ座の怪人』のファントム役において、その演技力と音楽性で高い評価を得ている。最近では、ブロードウェイで『アナスタシア』のグレブ役、ワシントンDCケネディ・センターでの『CHESS』ではアナトリー役として出演。2019年4月には来日記念盤としてEP「フロム・ナウ・オン」(CD+DVD)を日本独占でリリース。
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〈佐藤隆紀プロフィル〉
 国立音楽大学演奏学科 声楽専修 卒業。2009年に「LE VELVETS」のメンバーで音楽デビュー。テノール担当。2015年に『タイタニック』でミュージカルデビューし、以降、ミュージカル作品で活躍。出演作品は『レ・ミゼラブル』『マリー・アントワネット』『マリー・アントワネット』『マタ・ハリ』『キューティ・ブロンド』など。「LE VELVETS」として、2019年11月にCD「WORLD MUSICAL」をリリース。2020年4月から、ミュージカル『エリザベート』フランツ・ヨーゼフ役での出演が決まっている。
公式twitter

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筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

 ブロードウェイでミュージカルを見たのをきっかけに演劇に開眼。国内外の舞台を中心に、音楽、映画などの記事を執筆している。ブロードウェイの観劇歴は25年以上にわたり、〝心の師〟であるアメリカの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて現地でも取材をしている。

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