意見表明する10代の2人が、いま考えていること
2019年12月19日
導入が見送られた大学入学共通テストの英語民間試験。問題点を指摘する研究者や学校関係者らの中に、「当事者」として声をあげる高校生たちがいた。彼らの活動は事態を大きく動かす力になった。中でも早くからこの問題に取り組み、積極的に発言してきた2人に、英語について長く取材してきた記者が聞いた。
【はじめに】
この国で、これだけ鋭く、自分の言葉で発言する高校生たちを見るのはいつ以来だろう。
英語民間試験の「活用」に反対して、文部科学省の前で、国会の中で、シンポジウムで、メディアで語ってきた2人がいる。
「クリス君」と「こばると君」。
いずれも高校2年生。東京都内の別の高校に通っている。
何が彼らをこうさせたのか。知りたい。11月、2人に会って、約2時間、話を聞いた。内容の抜粋を朝日新聞の連載「現場へ! ニッポン英語のいま」で紹介したが、彼らのことばをもっと伝えたい、書いておきたい。再構成し、ロングバージョンを2回に分けてお届けする。(刀祢館正明)
クリス
ネットでの名前はChris Redfield Ken。「クリス」と呼ばれている。
こばると
現在のネットでの名前は「こばるん」だが、「こばると」で通っている。
――英語入試の問題に関わるようになったきっかけは何でしたか。
クリス 夏の、文部科学省前の抗議活動からです。田中真美さん(現・都立高非常勤講師)らが始めた活動で、その2回目の9月6日の時から参加しました。あの時、こばるとはスピーチした。僕はその場にいただけだけど。
こばると そうだっけ? そうかそうか。
クリス 夏休み前に学校で説明会があって「大学入試が変わるから夏休み中に調べてください、どの民間試験を受けるか、どう準備するか考えて下さい」と言われた。夏休み中に民間試験の勉強をしようと思って。でも、ネットで調べてもまとまったものが見当たらない。そうしたら夏休み中の8月16日に、柴山さん(柴山昌彦・前文科大臣)が発信した「(英語入試改革に)サイレントマジョリティは賛成です」というツイートにぶち切れて。なんでこんなことを言うんだ、と。その声を届ける機会があると知って、文科省前の抗議に参加しました。
こばると 僕は6月にツイッターで羽藤由美先生(京都工芸繊維大学教授)が反対する国会請願のための署名を集めていると知ってからです。それまでは、入試の英語が変わるらしい、英検を受けないといけない、ぐらいの認識だった。でも調べたら、いくつもの民間試験を比べようとしているとか、おかしいところがたくさん見えてきた。それで署名用紙を印刷できるようにネットにあげるとか、いろいろ協力しました。羽藤先生や田中先生ともツイッターでつながって、文科省前抗議に参加した。
――ツイッターの役割は大きい?
こばると けっこう大きいかも。この2人も含めて柴山さんの「サイレントマジョリティ」のツイート、あのへんで怒る人が出てきたり、たくさん人が動き始めたりした。夏ごろまでは大学入試の問題ってニュースにならなかったじゃないですか。僕はどうやったら一般の人にも広められるか考えていた矢先に柴山さんのツイートが出た。打ちのめされた感じだった。生徒たちのことを気にしていないことが如実に表れていて。僕の場合は、怒るというよりは「やっぱり僕らはそう思われているんだ」でした。
民間試験については、英語はそれなりに勉強してきたから、ある程度の点は取れるだろうと思っていた。ただ、よく調べてみると、これはおかしいと思った。文科省の発表を見ても、ふわっとしたことしか書いていない。あれ、これ大丈夫? 本当にやるんだよね、みたいな。当時は周りのみんなも情報を持っていなくて、知らない人は学校の説明会で「英検受ければいいと思っていたけれど、え、これなに」みたいな感じだった。
クリス そうそう。うちの学校も英語は余裕な人が多くて、「受ければいいんでしょ」みたいな。でも「通常の英検は受験に使えないの?」みたいな、よく知らない子も結構いた。先生がホームルームで「大学入試の英検は別です」と言ったら、全然知らない子ばかりだった。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください