メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[2019年 展覧会ベスト5]良質の現代美術展

文化行政に汚点を残した助成金取り消し

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1~3(順不同)
「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」展(国立新美術館)
「クリスチャン・ボルタンスキー lifetime」展(国立新美術館ほか)
「塩田千春展:魂が震える」(森美術館)
4「松方コレクション展」(国立西洋美術館)
5「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」(東京国立近代美術館)

次点:「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」(東京国立近代美術館)「原三渓の美術 伝説の大コレクション」展(横浜美術館)
話題「あいちトリエンナーレ」

 今年は珍しく「現代美術」が大きな話題になった年ではないか。何より、「あいちトリエンナーレ」はその展示の一部である「表現の不自由展・その後」が開幕3日後に展示中止になったことは、大きな反響を呼んだ。私はここで書いた通り、中止すべきでなかったという考えだが、ディレクターや出品作家のみならず愛知県知事や名古屋市長、文化庁まで巻き込んでのまさに喧々諤々(けんけんごうごう)の騒ぎとなった。

 結論から言うと、展示は再開されたし、現代美術をめぐる論議が深まってよかったのではないかと考えている。2000年に「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が、2001年に「横浜トリエンナーレ」が始まってから、20年近くのうちに全国各地に現代美術の大規模なイベントが広がった。従来の美術館での現代美術の展覧会は一般観客にはおおむね人気がなかったが、野外展示や観客の参加型を含む作品は多くの人々を集め、各地で観光振興を兼ねた「トリエンナーレ」がブームになった。

「不自由展」再開の説明拡大「表現の不自由展・その後」再開の説明=撮影・筆者

 ところが今回の騒動で、現代美術が時に社会や体制への批判を含む毒を持つ存在であることが明らかになった。今後は現代美術について冷静に考え、むやみに「トリエンナーレ」を立ち上げる動きは沈静するだろう。

 一方で文化庁が内定した助成金を取り消したことは、大きな傷跡を残した。安倍首相と荻生田文科大臣の指示であることは明白だが、専門家による判断を政治や行政が覆した事実は極めて大きい。ましてやその直後に文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」は芸術文化振興基金の規定を改めて「公共性の観点から助成金の交付内定が不適当と思われる場合」に内定した助成金を後から取り消すことができるようにしてしまった。これらは日本の文化行政に汚点を残し、今後も議論は続くだろう。

展示を拒否していた作家たちも再開した。これは、モニカ・マイヤーの展示拡大あいちトリエンナーレでは、展示を拒否していた作家たちの作品展示も再開した。これは、モニカ・メイヤーの展示=撮影・筆者

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

古賀太の記事

もっと見る