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[2019年 映画ベスト5]回想する作品たち

助成金取り消しという「文化弾圧」に鈍い反応の映画関係者

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

ノスタルジア、時代の変容……

 この2作と同じような回想ものでも、今年49歳のジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』は青春への痛切なノスタルジアに満ちている。映画は2001年から18年までの中国各地を舞台に、別れられないやくざの男ビンとその女チャオを描く。

 チャオを演じるチャオ・タオは監督のパートナーで2本目の長編『プラットホーム』(2000)以来、『青の稲妻』(2002)から『長江哀歌』(2006)、『山河ノスタルジア』(2015)など、この監督のすべての映画に出ている。彼女がこれまでの映画の舞台になった大同、三峡ダム、新疆を彷徨(さまよ)う姿は時代の流れを感じさせて痛々しいが、これからも年を重ねる彼女と変わりゆく中国を舞台に映画を撮り続ける監督の意思表明にも見えた。

 時おりはいる「Y.M.C.A.」や

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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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