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男系男子天皇にこだわる社会は、女性全体に苦痛

菅野朋子弁護士に聞く「男を産むことを強いられるプレッシャー」

矢部万紀子 コラムニスト

生まれた女の子も、どれだけ苦痛なことか

――「女性にとって苦痛」という発言は、どんな思いからしたのですか。

菅野 放送前日に「女性・女系天皇」がテーマになると聞き、そのことを言おうと決めました。「国民統合の象徴が男性でなければならないというのは、女性差別だ」といった意見は、同席する男性コメンテーターからも出るだろう。けれど「絶対に男の子を産まなくてはならない」ことが、どれだけプレッシャーか。そのことは、おそらく女性にしかわからない。だから言おうと思いました。

 私も出産を経験して初めてわかりましたが、子どもを産むというのは大変なことです。その大変さだけでなく、生まれた子どもの男女を区別し、男子の出産を強いる。そんな制度はおかしいとずっと思っていました。

 雅子さまが病気になられた一因はそのプレッシャーだということは、すでにいろいろな方が指摘しています。国民も含め、みんなが男子出産を期待し、その人の価値がそれをしたかしないかだけで測られてしまう。「男女平等」かどうか以前に、「男系男子」という制度は人間としてあまりにも酷。皇后になられる方も、1人の女性ですから。

 生まれた子どもの側からもそうです。女の子の場合、みんなが「男の子でない」と騒ぐわけですから、どれだけ苦痛なことか。皇后という立場の方、そこに生まれた女の子、どちらにとっても今の制度は人間性を否定することになると思います。

――2016年、15歳になった愛子さまがとてもお痩せになり、「拒食症」が心配されました。

菅野 愛子さまは、「お母さんが批判されるのは、自分が女の子だからだ」と自分を責めてしまったのだと思います。1人の女の子としてあまりにもかわいそうで、そんなことを繰り返してはいけないと思います。私も摂食障害になったことがあるのですが、それは自己否定感から始まりました。愛子さまに自分を否定する理由など見当たらず、「男の子でない」ことの葛藤がおありだったと思います。

皇太子さまに見送られ、「お宮参り」に向かう雅子さまと敬宮愛子さま東京新聞代表撮影2002年3月13日東宮御所拡大愛子さまはお誕生以来、「女性」であることで社会的なプレッシャーを受けてきたのではないか=2002年3月13日、東京新聞代表撮影

 卑近な例になりますが、私には兄がいます。私が生まれた時、周囲の人たちが「女の子でよかったね」と両親に言ったのだそうです。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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