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第6回を迎えた『I Love Musical』

初心者も楽しめるけれど、ミュージカル好きはもっと楽しい!

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 今やミュージカルファンの間でもおなじみになりつつあるコンサート、『I Love Musical』が2019年末に東京・銀座のヤマハホールにて開催された。今回が6回目となるこのシリーズが一貫してこだわるのは「ミュージカルを知らない人が興味を持つきっかけになってくれること」だ。ゆえに単に名曲の羅列にとどまらず、ミュージカルをあまり観たことのないお客さんに楽しんでもらうための工夫が施されている。それがまたミュージカルファンをも楽しませてくれるのだ。

拡大『I Love Musical』Xmas Version公演から=阿部章仁 撮影

 プログラムの内容も価格の割にとても充実している。それぞれの楽曲が舞台のどのシーンで歌われ、どんな役割の曲なのか、聞きどころなどが、ミュージカル好きのツボを押さえる形で解説されているのが嬉しい。さらに、コンサートで出てくる主なミュージカルの作品解説や、2020年の注目作品紹介などもある。

 さらに今回は、メンバーも構成も楽曲もまったく異なる「Xmas Version」(12 月 24 日・25 日)と「Year-end Version」(12 月 28 日・29 日)の2パターンが楽しめた。第1回よりこのシリーズを続けてきた岡田浩暉は最近でいうと『ファントム』のキャリエール役が記憶に新しいが、その温かく誠実な人柄とミュージカルへの愛が伝わってくるステージでもあった。その様子を、2バージョンそれぞれお伝えしよう。

『ミス・サイゴン』をダイジェストで!?

拡大『I Love Musical』Xmas Version公演から=阿部章仁 撮影

 「Xmas Version」は、ホスト役の岡田に加えて、「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビューしミュージカルにも活躍の場を広げる鈴木勝吾、ミュージカルでの個性的な役柄に加え大河ドラマ「真田丸」の豊臣秀次役でも知られるようになった新納慎也、AKB48を卒業してからミュージカルでも実力を発揮する梅田彩佳、そして、今年6月に宝塚歌劇団を卒業し、自身のライブを除くと今回が卒業後初の舞台出演となる美弥るりかという、フレッシュなメンバー構成だ。

 Act1の幕開きは全員で歌う「トゥナイト」(『ウエストサイド物語』より)、岡田の「Paula」(『グッバイ・ガール』より)から始まる(これはYear-end Versionと共通)。鈴木と梅田による「とびら開けて」(『アナと雪の女王』より)のデュエットが初々しい。続いて『モーツァルト』より「影を逃れて」を美弥がドラマチックに歌い上げ、ボブ・フォッシーの映画監督デビュー作でもある『Sweet Charity』より「ビッグ・スペンダー」を新納がセクシーに歌った。

 司会進行を自分たちで務めるのもこのシリーズならではの特色だ。色々な組み合わせの3人が、曲の合間にトークを繰り広げる。積極的に突っ込む人から緊張気味の人まで、持ち味が垣間見える。一人ひとりについて経歴やこれまでの出演作、ミュージカルへの想いなどが丁寧に紹介されるため、一気に親しみがわいてくる。

拡大『I Love Musical』Xmas Version公演から=阿部章仁 撮影

 続いては2020年にも上演が予定されているミュージカル『ミス・サイゴン』のコーナー。ストーリーをダイジェストで紹介するナレーションが入るので、初心者も作品の世界観に入りやすい。クリスの虚しさを歌った「Why God,Why」を鈴木が、母となったキムが歌う「命をあげよう」を梅田が、クリスの友人ジョンが米兵とベトナム女性との混血児の救済を訴える名曲「ブイ・ドイ」を岡田がそれぞれ歌う。

 物語のクライマックスでエンジニアがアメリカ行きを夢見て歌う「アメリカン・ドリーム」を新納と美弥が歌ったのが新鮮だった。この歌を元タカラヅカの男役スターが歌うのは意外だが、タカラヅカ時代に個性的な役柄を演じてきた美弥ならではとも思える。「えっ?この曲をこの人が?」という組み合わせが楽しめるのも、このコンサートならではの醍醐味だ。

「クリスマスに見たい映画」からも

拡大『I Love Musical』Xmas Version公演から=阿部章仁 撮影

 Act2はXmas Versionらしくクリスマスにちなんだ歌が中心。ゴスペル調の「Oh Happy Day」(『天使にラブ・ソングを』より)で幕開けから盛り上がる。Act2の前半は各出演者が選んだ「クリスマスに見たい映画」からの選曲だ。『RENT』から「One Song Glory」(新納)、「Out Tonight」(梅田)、『レ・ミゼラブル』より「カフェ・ソング」(鈴木)。女性陣にはディズニー映画が人気で『ノートルダムの鐘』より「僕の願い」(美弥)、『アラジン』より「A Whole New World」(新納・梅田)が歌われた。また、岡田が『ノッティングヒルの恋人』より「She」、『ラブ・アクチュアリー』より「All You Need Is Love」を歌った。

 そして後半は山下達郎の「クリスマス・イブ」(鈴木)、「サンタが街にやってくる」(美弥)、「White Christmas」(新納・梅田 コーラス:鈴木・美弥)と、おなじみのクリスマスソングのメドレー。そして「星に願いを」。最後は”『I Love Musical』といえばこの曲”と言われる「今この時」(『ラ・カージュ・オ・フォール』より)を全員で歌って締めくくられた(これもYear-end Versionと共通)。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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