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塚原大助&山野海&小山豊インタビュー/上

ゴツプロ!『狭間の轍』、波声船頭が主人公の漁師町を舞台にした物語

真名子陽子 ライター、エディター


 2020年1月24日からゴツプロ!第五回公演『狭間の轍』が東京・本多劇場で上演されます(~2月2日まで。その後、大阪・台北公演有り)。塚原大助さんが主宰するゴツプロ!は、2015年に40代の役者のみで結成し、女優の山野海さんが演出、そして竹田新名義で脚本を担当しています。三作目の『三の糸』から台北公演を行っていて、本多劇場と台北華山1914文創園区 烏梅劇院(ウーメイシアター)との姉妹劇場の提携も実現。今回の台北公演も烏梅劇院で上演することが決まっています。

 塚原大助さんと山野海さん、そして『三の糸』から音楽を担当している津軽三味線小山流三代目の小山豊さんにお話を伺いました。お稽古場での取材だったので少しお稽古も拝見。その様子も写真で紹介しています。

民謡界のスーパースターを紹介してくれた

拡大左から、山野海、小山豊、塚原大助=岩田えり 撮影

――まず、ゴツプロ!として5作品目となる『狭間の轍』はどんな物語なんでしょうか?

山野:明治27年、日清戦争が始まる頃の北海道江差町という漁師町が舞台になります。その江差町は、江戸の中期からニシン漁がすごく盛んな町だったんですね。漁師たちがたくさん稼いでいたので、それを知った人たちが漁師を相手に商売をしようといろんな所から集まってきて、海沿いに浜小屋というお店が300軒もあって賑わっていたそうなんです。

――江差でのニシン漁が栄えているというのが噂になっていたんですね。

山野:そう。津軽とか南部とか地方の人たちがそれを聞いて、当時のことだから密航した人もいただろうし命を落とすかもしれないけれど、食べられないよりかは良いと命がけで渡って来たそうです。そんな風に栄えた町だったんだけど、舞台となる明治27年頃にはもうニシンが獲れなくなっていて、だんだんと江差町の勢いがなくなっていく頃の漁師のお話です。

――その江差の漁師の話にしようと思ったきっかけは? また、今回は民謡を歌われるんですよね。

山野:いつもどんな作品にするか、塚原と案を出しながら話すんだけど、昨年上演した『阿波の音』の最後が、阿波おどりで終わるんですね。お客さまがすごくハッピーになって帰られるのを見て、演劇ってこういうことだよねって。でも同じ事をしても仕方がないしどうしようかと。

――そこで民謡が?

山野:小山豊とは第三回公演の『三の糸』で知り合ったんだけど、それまでは民謡って古臭いしあまり興味がなかったんですね。でも豊と出会ってから、豊の津軽三味線を聞いたりLIVEへ行ってるうちに、男たちが歌う民謡をやってみたいと思ったんです。それを豊に相談したら、今回、民謡の歌唱指導をして下さっている伊藤多喜雄さんという民謡界のスーパースターを紹介してくれて、お話をお伺いしたら多喜雄さんのお父さまが漁師だったんです。

小山:北海道の稚内で漁師をされていたんです。

波声船頭は作業効率を上げるためのBGMのような係

拡大『狭間の轍』稽古場より〈立ち稽古が始まったばかり。台本片手にセリフと動きを確認します〉=岩田えり 撮影

山野:そのお父さまが、今回の物語の核となる「波声船頭(はごえせんどう)」をやっていらしたんです。よく知られているソーラン節は漁場で歌う歌で、労働歌と言ってみんなの力を分散しながら息を合わせるための歌なんですね。漁師に歌が根付いていて、その中で波声船頭は漁を一切やらずに、船の淵でリズムをとって歌ってるだけなんです。

――歌うだけの人?

小山:そうなんです。

山野:みんなの調子を見ながら、疲れているなと思ったらアドリブで女性の話を歌に乗せたり、面白話を歌に乗せたりして。

――話すのではなく歌に乗せるんですね。

小山:作業効率を上げるためのBGMのような係ですね。

山野:波声船頭のお給料が一番高かったんですって。その話を聞いた時に衝撃を受けて、そこからもうぐっと話が進み始めたんです。

――「波の声」ってかっこいいですね。

山野:めちゃくちゃかっこいいなと思いましたし、とてもロマンを感じました。そこから豊に、あなたの知っている知識をすべてちょうだいと言って、物語を作る前からいろんなことを教えてもらいました。労働歌って知らなかったですからね。

――波声船頭も労働歌も知らない方が多いと思います。

山野:ギリギリ知ってるのは「ヨイトマケの唄」じゃないかな。

――そこから今回の物語が始まったんですね。

山野:その漁師の泥臭い感じがゴツプロ!に合うなと思ったんです。

飛び道具のように和楽器を使われる風潮が怖い

拡大『狭間の轍』稽古場より〈セリフの間や動きについて、すかさず演出・山野海さんから的確な指示が入ります〉=岩田えり 撮影

――小山さんはそれを聞いた時、どう思われましたか?

小山:僕は祖父の代から三味線弾きで、民謡も身近にあったんですね。ルーツを探って追及していく中で、多喜雄さんからいろいろ教わっていたタイミングだったんです。それがうまく繋がって、僕もすごく勉強になっています。知らなかったことが結構あるんですよね。今年はオリンピックもあって和楽器もたくさん聞かれるようになっていますが、飛び道具のように和楽器をちょっと乗せればOKみたいな風潮がすごく怖いんです。

――怖さとはどういうことですか?

小山:本当の事を知らずに使い捨てにされがちじゃないですか、日本の文化って。それが怖くて。だから民謡の源流をちゃんと探っておきたいと思ったんです。そうするとやはり漁師に行きつくんですよね。作業効率を上げるために歌っていたことや、テンポ、リズム、音頭、そういうことが大事なんだというところに行きつきました。

――民謡のルーツってどこから始まっているんですか?

小山:いろいろあるんですよ、民謡って。労働歌としての民謡や豊作を祈る神事の民謡、また瞽女(ごぜ)さんという盲目の女性芸者が巡業していたんですが、彼女たちは浪曲や端唄、長唄などを勉強して、自分なりにアレンジして披露する芸から生まれた民謡など。始まりってないんですよね。

――何が一番古いというのもないんですか?

小山:そうですね。と言うのも、民(たみ)から自然発生的に生まれているものなので、文献に残すということもしなかったんですよね。あくまでも、民の生活に密着しているということがすごく重要なんです。

◆公演情報◆
ゴツプロ!第五回公演
『狭間の轍』〜怒ったってしょうがねぇから、笑ってんだよ。〜
東京:2020年1月24日(金)~2月2日(日) 本多劇場
大阪:2020年2月6日(木)~2月9日(日) 近鉄アート館
台湾:2020年2月21日(金)~3月1日(日) 台北華山1914文創園區烏梅劇院
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:竹田 新
演出:山野 海
民謡歌唱指導:伊藤多喜雄
プロデューサー:塚原大助
[出演]
塚原大助、浜谷康幸、佐藤正和、泉 知束、かなやす慶行、渡邊 聡、44北川、関口アナン、内谷正文、石川よしひろ
[演奏]
小山豊(津軽三味線小山流三代目)
小山会青年部
小湊昭尚(尺八奏者)
白鳥良章(尺八奏者)

〈塚原大助プロフィル〉
 中国最西端の町カシュガルからラオスを抜け、タイのバンコクまで自転車で単独走破という経歴を持つ。劇団ふくふくやの中心メンバーで活動しながら、自身でもゴツプロ!を主宰している。舞台を中心に幅広い表現力を見せ、映画『コンプリシティ/優しい共犯』、テレビ東京系ドラマ24『Iターン』、舞台『後家安とその妹』などに出演。
公式twitter

〈山野海プロフィル〉
 女優、劇作家、脚本家。4歳から子役として活動を開始し、舞台や映画に出演。1999年、劇団ふくふくやを立ち上げ、全公演に出演。作家“竹田新”として脚本を書き下ろす。『救命病棟24時』や大河ドラマ『八重の桜』など、ドラマ作品にも多数出演。2016年にゴツプロ!第1回公演『最高のおもてなし!』で演出家としてもデビュー。それが書籍化され、初の書籍『最高のおもてなし!』(竹田新)が2017年秋に幻冬舎から出版された。
公式twitter

〈小山豊プロフィル〉
 幼少より津軽三味線小山流宗家(祖父)小山貢翁に師事。日本最大流派の一つである小山流の三代目として、国内・海外で演奏活動を行っている。古典以外でも、松山千春や桑田佳祐、嵐、ももいろクローバーZといった人気グループとの共演や、狂言師野村萬斎氏構成演出の『マクベス』への参加など、コラボレーションは多岐にわたる。津軽三味線や民謡の魅力を伝えるため、伝統の継承とともに、枠にとらわれない柔軟な新たな解釈で既存には無いサウンドを生み出し続けている。
公式ホームページ
公式twitter

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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