メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

【公演評】雪組大劇場公演レポート

名作映画を世界初のミュージカル化で、熟成された望海風斗の男役道―ここに極まれり

さかせがわ猫丸 フリーライター

 雪組公演ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』が、1月1日、宝塚大劇場で初日を迎えました。

 1984年に映画公開されたこの作品は、日本でも大ヒットしたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。禁酒法時代、ニューヨークの貧民街で暮らす移民の少年たちがギャングとして成り上がる物語は、ハードな場面も多いのですが、そこは演出の小池修一郎さん。恋愛やショー的要素も織り交ぜながら、宝塚らしいエンターテインメント作品に仕上げ、世界初のミュージカルへと変身させました。

 ロバート・デ・ニーロが演じた主役のヌードルスをつとめるのは、もちろん望海風斗さんです。雪組トップスターとして円熟期を迎える望海さんが、完成された男役道で、宝塚歌劇2020年の幕開きを鮮やかに飾ります。(以下、ネタバレがあります)

孤独と葛藤が迫る望海の歌声

拡大『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』公演から、ヌードルス役の望海風斗=岸隆子 撮影

 これまでも望海さんは、2013年の『オーシャンズ11』のベネディクトに始まり、『アル・カポネ』や『ドン・ジュアン』など、ちょっと…いや、かなり悪めな色男がよく似合っていました。それだけに『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』という題材を聞いただけでファンのみなさんには、ニューヨークの摩天楼を背景に、タキシードに白いマフラー、葉巻をくわえたカッコいい望海さんの姿が瞬時に浮かんだはず。

 今回はそんな姿だけでなく、貧しい少年時代からギャングとして名をとどろかせる青年期、生き方を変えた老年期まで三世代を演じ分けながら、熟成した男役の渋さと極上の歌声を存分に披露しました。

――1920年代、ニューヨークのローワー・イーストサイドには、多くのユダヤ移民が暮らしていた。ヌードルス(望海)は幼い頃から、仲間のコックアイ(真那春人)、パッツィー(縣千)、ドミニク(彩海せら)らと裏社会で悪に手を染めながら生きていたが、女優志望のデボラ(真彩希帆)とは互いの夢を語り合い、未来に思いをはせている。そんなある日、ヌードルスは、盗みの失敗を救ってくれたマックス(彩風咲奈)と意気投合し、マフィアに密造酒を売ることで大儲けするようになった。だが、以前から敵対していたギャングのバグジー(諏訪さき)にドミニクが刺されたことで、激昂したヌードルスはバグジーと警官を刺し殺してしまう。

 物語は1958年、かつての親友ファット・モー(奏乃はると)の店へ、25年ぶりにヌードルスがやってくるところから始まりました。今は真面目に働く彼のもとに突然、ロッカーの鍵が入った封筒が送られてきたと言う。その昔、ヌードルスがギャングだった時代、仲間とともに財産を隠した場所がロッカーだった。だが、名前も変えた今のヌードルスを知る者はもう誰もいないはずなのに…。ここから時代は1922年へとさかのぼります。

 白髪まじりの壮年期から、みずみずしい少年時代へとタイムスリップする望海さん。あどけない表情の可愛い少年から、やがて赤い薔薇が似合う青年へ。幅広い年代の演技も、培ってきた実力を物語ります。

拡大『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』公演から、ヌードルス役の望海風斗=岸隆子 撮影

 ヌードルスは決して皆を引っ張っていくリーダーではありません。無鉄砲でもなければ暴君でもない、むしろ、無謀なやり方には眉をひそめる、普通の感覚を持つ人間だったのかも。しかし、ローワー・イーストサイドからはい上がるには、裏稼業で金をためなくては始まらないと、がむしゃらに現実を生きるしかありませんでした。

 ずっとデボラだけを愛しながら、未来へ葛藤するヌードルスの孤独や苦悩が、情感豊かな歌で強く胸に迫ります。望海さんの歌声は、もはや宝塚の至宝と言っても過言ではないでしょう。

◆公演情報◆
ミュージカル『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』
Based on the motion picture Once Upon a Time in America (courtesy of New Regency Productions, Inc.) and the novel The Hoods written by Harry Grey.
2020年1月1日(水)~2月3日(月) 宝塚大劇場
2020年2月21日(金)~3月22日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出:小池修一郎

・・・ログインして読む
(残り:約2137文字/本文:約3932文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

さかせがわ猫丸の記事

もっと見る