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『CHESS THE MUSICAL』開幕!

公開稽古レポート/日英豪華キャストによる夢の上演が実現!

橘涼香 演劇ライター


ロンドン初演版台本を新演出で

 スーパーポップグループABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが作曲を手掛け、世界のミュージカル史に残る傑作ミュージカル『ライオン・キング』『エビータ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』のティム・ライスが原案と作詞を担当した伝説のミュージカル『CHESS』。新演出&日英スター共演による英語上演(日本語字幕付き)という画期的な舞台が、1月25日~28日大阪・梅田芸術劇場メインホール、2月1日~9日東京・東京国際フォーラム ホールCで上演される。

 『CHESS THE MUSICAL』は、東西冷戦時代、チェスの世界一を決める選手権を舞台に、米ソそれぞれの代表たちが国家の威信を背負わされながら、個人としての愛を求めていく姿がチェスのゲームさながらに綴られていく、非常に革新的なミュージカル。

 作品は1984年に発表されたコンセプトアルバムからスタートし、「One Night in Bangkok」「I Know Him So Well」の大ヒットで、一躍注目を浴び1986年にロンドン・ウェストエンドで初演され、3年間のロングランを記録。のちアメリカ・ブロードウェイをはじめ、コンサート形式での上演も多くあり、世界各国で愛され続けている。

 日本では2012年、2013年にコンサート版、2015年にミュージカル版が上演され、ABBAの作った美しい旋律とパワフルなサウンドが、初演からの年月を全く感じさせず多くの観客を魅了した。

拡大CHESS THE MUSICAL』公開稽古(囲み会見)から、左から、ニック・ウィンストン、ルーク・ウォルシュ、ラミン・カリムルー 、サマンサ・バークス、佐藤隆紀=橘涼香 撮影

 そんな日本のミュージカルファンにも馴染み深い作品が、現在のロンドンミュージカル界でトップ10に数えられる振付家と讃えられるニック・ウィストンを演出・振付に迎え、ロンドン初演版台本を用いた新演出版として、2020年の大阪・東京で幕を開けることになった。

 この新たな舞台の為に集った注目のキャストは、ソビエト連邦のチェス・チャンピオン、アナトリー役に『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『ラブ・ネバー・ダイ』で主演を務め、『エビータ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』など、日本での好演の記憶も新しく、大人気を博している世界的ミュージカルスター、ラミン・カリムルー。

 アメリカ合衆国世界チャンピオン・フレディのセコンドで、アナトリーと恋に落ちるフローレンス役に、世界を席巻した映画版『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役で喝采を集め、『アナと雪の女王』のエルサ役を務めることも決定しているサマンサ・バークス。世界チャンピオン・フレディ役にロンドンミュージカル界で脚光を浴びる若手新星俳優ルーク・ウォルシュ。

 さらに、チェスの審判であり、作品全体を司るアービター役に、美声のヴォーカルグループ「LE VTLVETS」の一員で、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役、『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフ役など、日本ミュージカル界の欠かせぬ顔の一人となった佐藤隆紀。日英の豪華キャストが揃い、アンサンブルにも『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』等、グランドミュージカルでプリンシパルを務める面々が居並ぶなど、日本での英語上演という画期的なステージに、いま、大きな期待が集まっている。

 その大注目の舞台の公開稽古が1月16日都内稽古場で行われ、多くのメディアの前で、新たな『CHESS THE MUSICAL』の世界が、その一端をあらわした。

ハイトーンのナンバーを力強く届ける佐藤

拡大『CHESS THE MUSICAL』公開稽古から=橘涼香 撮影

 まず2017年の『パジャマ・ゲーム』の振付で日本でも知られる演出・振付のニック・ウィストンから、「世界中で愛されている『CHESS』の特徴は、同時代の大ヒット作品『CATS』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『オペラ座の怪人』等とは異なり、確固たるオリジナルプロダクションが創られていない為に、各国での上演の全てがオリジナルになることにあります。今回の我々のプロダクションも新たなオリジナルで、かけがえのないキャストに恵まれました。この短期間に複雑な音楽、振付を体得してくれている素晴らしいカンパニーによる『CHESS』をお楽しみ頂きたい」という挨拶があり、いよいよ公開稽古が始まった。

 まず披露されたのは、佐藤隆紀のアービター役を中心とした「The Story of Chess」。1幕の幕開きに、頭脳によるスポーツとも称される、二人のプレイヤーが市松模様のボード上で闘う心理戦の側面もある「チェス」というゲームを介した作品の世界観を提示されるナンバーだ。

 非常に複雑で難解な面もある、だからこそ癖になるメロディーラインに、階段上に居並ぶアンサンブルが、ひとつずつの個性溢れるポーズがリズムにピタリとハマっていくダンスを展開。その動きをはらうように登場したアービターの佐藤は、音域が広く相当なハイトーンのナンバーを、ファルセットにならず一貫して力強いまま届けてくれる。アンサンブルのコーラスの掛け合い、重なりも面白く、日本人キャストの英語歌唱が、この段階ですでにしっかりしたものに出来上がっているのに感嘆した。

ラミンの歌声が創り出す世界は圧倒的

拡大『CHESS THE MUSICAL』公開稽古から、ラミン・カリムルー =橘涼香 撮影

 そのまま途切れなく続く2曲目はサマンサ・バークスが歌う「Nobody’s Side」。緊張した試合の局面でゲームを放棄したフレディと激しい口論になったフローレンスが、自分の不確かな居場所、全ての約束も契約も裏切られる、誰も味方ではない…と感じる焦燥を訴えるナンバー。

 サマンサの歌声には切なさと共に強いパッションがあり、複雑な過去を持つが故に、最も求める確かな安住の地を見出せずにいるフローレンスの想いをダイレクトに伝えて、ラストのロングトーンによる絶唱が圧巻だった。

 そのフローレンスに去られたフレディが歌う「Pity the Child」は、こんな結果を生んでしまったのは、自分の子供の頃からの生い立ちが原因だと、「かわいそうな子供」である自分を振り返りつつ、苦々しさと愛されたかった思いをぶつけるナンバー。上手前に置かれたチェスボードのチェスの駒を苦し気に握りしめ、投げつけながら歌いあげるルーク・ウォルシュの表現力と伸びる歌声、更に姿の良さが1曲の中にすべて現れる、見応えあるナンバー披露になった。

 そして最後は1幕のラストを飾るアナトリーのビッグナンバー「Anthem」。フローレンスと恋に落ち亡命を決意したアナトリーが、なぜ国を捨てるのか?と記者たちに問われ、権力や戦によって決められた国境ではなく、私の境界線は私の心の中にある。例え異国にあろうとも、祖国への愛は変わらないと歌うナンバー。ラミン・カリムルーがその歌声で創り出す世界は圧倒的で、ここが照明も装置もない稽古場だということを忘れさせるほど。

 舞台の堂々たる幕切れが目の前に浮かび上がる壮大なパフォーマンスに、大きな歓声と喝采が湧き起こる中、ラミンがアンサンブルひとり一人の肩を抱き、賛辞を惜しまない姿が強く目に残った。このカンパニーに対する敬意が、きっと素晴らしい舞台を生み出すに違いないと信じられる、異なる場面のナンバーをほぼ途切れずにつなげた、この日だけの特別で贅沢な楽曲披露だった。

★ラミン・カリムルー&佐藤隆紀インタビューはこちら

◆公演情報◆
『CHESS THE MUSICAL』
大阪:2020年1月25日(土)~1月28日(火) 梅田芸術劇場メインホール
東京:2020年2月1日(土)~2月9日(日) 東京国際フォーラム ホールC
公式ホームページ
公式ツィッター
[スタッフ]
作曲:ベニー・アンダーソン / ビョルン・ウルヴァース
原案・作詞:ティム・ライス
演出・振付:ニック・ウィンストン
[出演]
ラミン・カリムルー 、サマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュ、佐藤隆紀(LE VELVETS)、
エリアンナ、増原英也 ほか

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

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