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 2017~19年は、性犯罪に関する画期的な年となったと、後世の歴史家は判断するかもしれない。

 2017年、#MeTooの叫びが澎湃(ほうはい)として起きて社会的な運動に発展し、ちょうど日本でも、それまでの論議を踏まえて110年ぶりに刑法の性犯罪条項が改定された。

 2019年には、後述するように無謀な無罪判決が立て続けに出されて、大きな社会意識の変化を生んだ。

 4月以来の「フラワーデモ」では、ふつうの市民が、たくさんの人が集まりうる広場において、一般市民の目に自らの顔・身体をさらして、あたかも堰を切ったように、性被害の体験を語り始めた。そして12月には、ジャーナリスト伊藤詩織氏の民事裁判において――刑事手続きでは不起訴となり、検察審査会も不起訴相当を議決したという事実があったとはいえ――被告に賠償が命ぜられ、かつ伊藤氏による、加害者の実名を出した訴えに対して公共性・公益性が認められた事実は、画期的であった。

 こうした動きの先に2020年を位置づけなければならない。2020年には、2017年の刑法改定後、初めての見直しが行われることになっている。

 性暴力を撲滅するため、刑法の改正を求めるイベント「One Voice(ワンボイス)フェス!」で==10日、千代田区丸の内 201911月拡大性暴力を撲滅するため、刑法の改正を求めるイベント「One Voice(ワンボイス)フェス!」=2019年11月、東京都千代田区丸の内

2017年の刑法改定

 そもそも2017年の刑法改定は、いかなるものだったか。

 刑法は、1880年に制定された。だが、四半世紀を経た1907年に、今日の刑法につながる改定刑法が制定、翌年に施行されている。その刑法のうち性犯罪条項は、実に110年の長きにわたって、一切手がつけられずに来た。だが各種運動・論議の成果もあって、この年に、性犯罪に関連して抜本的な改正が行われた。それは次のとおりである――

・性犯罪(強かん罪・準強かん罪・強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪)を非親告罪化した、
・その法定刑を引き上げた、
・親等の「監護者」による性虐待を、後述する暴行・脅迫要件なしに処罰化する条文を設けた、そして、
・従来被害者を女性と見なしていたが、性犯罪の対象を(膣への)性交を含む広義の性交(肛門への、口腔への)とし、被害者を男女両性に広げた。この故に強かん罪は「強制性交等罪」と改められた。


筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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