メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

『星の王子さま』青木豪&伊礼彼方取材会レポート

年を重ねるほど理解が深まっていく作品

真名子陽子 ライター、エディター


 31日に水戸芸術館ACM劇場で開幕する音楽劇『星の王子さま』(その後、東京、兵庫公演あり)。世界的ベストセラー作品の『星の王子さま』を音楽劇として創造し、2016年に初演された本作が4年ぶりに再演されます。メインキャストには、昆夏美さん、伊礼彼方さん、廣川三憲さんの初演に出演した3人が揃いました。

 脚本・演出の青木豪さんと飛行士役の伊礼彼方さんの取材会が行われ、再演にかける意気込みを語ってくれました。

なぜ名作なのか? がわかるんじゃないかと思った

拡大青木豪(左)と伊礼彼方=安田新之助 撮

記者:再演に向けての思いを聞かせてください。

青木:前回の公演が終わった瞬間から、みんなでもう一度やりたいねって言ってましたし、僕自身もすごく気に入っている作品です。手の届くところにある、じんわりする音楽劇を創ったつもりです。なるべくお客さまとの距離が近い場所でやりたいという思いがありましたので、今回もお客さまと密になれる音楽劇にしたいと思います。

記者:初演の時、この作品のお話があった時はどう思われましたか?

青木:原作を読んだことはありましたが、バオバブの話の辺りで寝ちゃうんですよ。どういう話なんだろうと(笑)。でも、この作品のお話をいただいた時に、じっくりと向き合ったら、この名作がなぜ名作なのか?がわかるんじゃないかと思ったんです。子どもに見せたくないような芝居を創っていたので(笑)、親子で見られる芝居を創りたいなと思って快諾させていただきました。作曲された笠松泰洋さんと1週間に1回ぐらい会って、どこを歌にしようかという相談をしながら創りました。

伊礼:僕も「星の王子さま」は知っていましたけれど、特別な思い入れがあるわけでもなかったんです。でも、この作品が決まって改めて読んだ時に、大人に届くように書かれていて、哲学なんだと思いました。子ども向けの絵本なのかなと思っていたんです。年を重ねるほど理解が深まっていく作品なんだと思います。そして、僕自身が原作に書かれているテーマと向き合っていきたいと思ったので、僕も再演したいと思ったんです。“大切なものは目に見えるものだけじゃないんだ”ということを、もっともっと体験していかなきゃと思っているので、僕としてはライフワークとして、この作品を定期的にやっていきたいなと思っています。

昆ちゃんはちゃんと点と点を埋められる女優さん

拡大青木豪(右)と伊礼彼方=安田新之助 撮影

記者:キャストについてはいかがでしたか?

青木:昆さんのことは知らなかったんです。演劇雑誌に載っていた写真を見た瞬間、「この人が王子さまだ」と思って、すぐにスケジュールを確認してもらいました。そして、昆さんが出演していた『アダムスファミリー』を観に行って、間違いないと思い速攻でお願いしたんです。

 伊礼くんと廣川さんは、星めぐりをする時のいろんな役をやってもらいたかったので、いろんな役ができて且つ歌った瞬間に良い声の人で、ちょっと低音の方が良いなと思ってお願いしました。この人たちとやりたいと言うキャストで創れたので、同じキャストで再演できることは本当にうれしいですね。よりブラッシュアップしたものを創りたいと思っています。

記者: 3人だからこそ創れた作品?

青木:そうですね。最初から3人とも、この時はここにいて欲しいという時に、そこに立ってくれるだけでなく、間(ま)をちゃんと埋めてそのシーンを決めてくれていました。尚且つ、その場ですぐに表現してくれるから、創作がすごく早かったですね。昆ちゃんの歌も、綺麗な声だから王子さまが持っている透明感みたいなものが出てとても良かったです。

伊礼:リアルにその場にいられる役者ってとても貴重で、僕はすごくその点を大事にしてお芝居をするようにしているんですけれども、やっぱり決まった形だけを追い求める方もいらっしゃいます。そうなってしまうと正直、面白くなくなってしまうし、お客さまに伝えるものが形だけになってしまうので、間が埋まっていかないんですよね。昆ちゃんはちゃんと点と点を埋められる女優さんだなと感じました。

青木:埋めてるよねぇ!

伊礼:共演していてとても気持ち良くてストレスがないんです。それをうまく歌に繋げていける技術を持ち合わせているんですよね、素晴らしい女優さんです。

記者:伊礼さんの魅力は?

青木:こんなにカッコいいのに気さくなんですよ。まったく気取らないし、芝居が好きだし、人と関わるのが好きなんだなという感じが良いですよね。この作品には踊るところがあるんですけど、振りを付けたところだけじゃなく、その間をどうやって埋めるかということをすごくこだわるので、一緒にやっていて楽しいんです。

記者:伊礼さんから見た青木さんは?

伊礼:考えている時に眉毛が上がってすごく怖い顔になるんですよ。そんな怖い顔の方からこんな繊細な言葉が出るんだって、それこそ人は見た目じゃないですねと(笑)。繊細なアドバイスもくださるので、とても信頼ができる演出家です。困ったらすぐ相談に行きますね。うれしいのは、信頼してくださってるからだと思っているんですけど、途中までほったらかしにして、いろいろチャレンジをさせてくれるんです。細かいことはおっしゃるんですけれども、ガチガチに決めようとされない方なので、すごくありがたいです。

一生この作品のテーマと付き合っていきたい

拡大伊礼彼方=安田新之助 撮影

記者:初演を経て、改めてこの物語の魅力をどう感じていますか?

青木:初演で向き合った時に、一度関係を持った人に対しては、責任をずっと持たなきゃいけないということが書かれているんだと、心に沁みたんです。それが作家自身の思いなのかもしれないなと。その思いが一番心に響きました。最初はそれが全然読み取れなかったんですよね。

伊礼:楽器もピアノとコントラバスというシンプルな構成になっていますし、笠松さんの音楽は非常に音が飛ぶんですね、上に行ったり下に行ったり。それがすごく星の王子さまの空気感を回して紡いでくれるというか、とても居心地が良いんです。曲も好きですし演出も好きですし、何よりも一生この作品のテーマと付き合っていきたいと思わせてくれたので、今回もがんばって取り組みたいと思っています。

記者:今、どんなメッセージが一番響いていますか?

伊礼:メッセージがありすぎますからね、どこを取り上げるかは難しいなあ……。実業家の役もさせてもらっているんですが、忙しない現代のネット社会で生きているんですけど、もっと時間を大切にしなきゃいけないなって、すごく思います。仕事でスマホをいじっていても、気づけばぼ~っと無駄に見ていたり。人間関係やコミュニケーションが足りていない現代に、自分の大切な人を思ってこの作品を観ていただけたら、何か得られるんじゃないかなと思うんですよね。

記者:いろんな見え方があるような気がします。

伊礼:そうですね。年齢問わず、それぞれに適したメッセージが含まれていると思います、言葉やコミュニケーションの大切さとか。青木さんが言った“関係を持った人に責任を取る”もそうですけれど、一度築いた関係を簡単に手放してしまうじゃないですか、そもそもネット上では関係性は築けていないですよね。体温を感じて初めて関係性を作れるものだと思うんです。そういったテーマを一つに限らず、それぞれ感じていただけたらと思います。僕自身も演じながら、毎回いろんなことを感じていました、こういうところが足りていないなとか……。今回は何に刺激をもらえるのかすごく楽しみです。

またこの作品に帰りたいって思わせてくれる

拡大青木豪(左)と伊礼彼方=安田新之助 撮

記者: 伊礼さんは大きな劇場でもお芝居をされていますが、お客さまが近いコンパクトな劇場でするのとは違いますか?

伊礼:とても繊細な芝居ができますね。ただ難しいのは歌があるいうこと。ファンタジーになってしまうので、そうならないように、なるべく会話劇のようにしたいですねという相談をしています。そのためにキーを下げたり、音楽ももう少しリアルな音を発したりできないかなと。そうなるともっと身近にも感じてもらえるだろうし、楽器も二つしかないので、よりハーモニーの良さや、細かい音のズレも感情のズレとしてお届けできるんじゃないかなと思います。

記者:初演のお客様の反応はいかがでしたか?

青木:信頼しているお客さまが、この作品をすごく大切に思ってくれたんです。この作品が好きだから、原作をこれからも繰り返し読んでいきたいと言ってくれて。僕もわからないからこの作品を創り作り始めたので、観た方が改めて原作に向かってくれるということは、良い作品を創れたのかなと思いました。

伊礼:流れている空気が緩やかで温かいんですよ。そういう作品ってなかなかないんですよね。家にいる感じと言えば良いかな。またこの作品に帰りたいって思わせてくれるんです。

記者:そういう作品はあまりないんですね。

伊礼:そうですね。もちろん、楽しかったり刺激的な作品はあります。僕、家が好きなんですね、外で食事するよりも家で食事することの方が好きで、それがストレス発散になっていたり、癒しにもなっているんだけれども、それと似た感覚をこの作品にも感じていて、とてもアットホームでファミリー感があるんです。家族の繋がりみたいなものを感じるんです。それがすごく心地よくて、芝居が終わるたびにまたやりたいって思っていたし、公演回数が少なくなってくると寂しくなって、公演の序盤から再演をしたいと思っていましたね。なんか刺激的ではない一体感って言うんですかね。みんなと繋がっていると感じられたんですよ、それがすごく幸福だったなあ。疲れた時や何か世の中が澱んできたなって思った時に、この作品を観ようって思えたら良いですし、エネルギーをもらえるんじゃないかなって思います。

記者:お客さんにもそんなふうに感じてもらえたらいいですね。

青木:そうですね。『星の王子さま』をやってるから、また観に行こうって思ってもらえるとうれしいですね。何度も読んでいるうちにわかることと、一度でわかることってありますよね。何度も読むことって大事だなってこれを創りながら感じました。だから何度も観に来ていただければ。

伊礼:自分との対話なんだろうなと思います。だからこそ飛行士のいろんな面が飛び出して、それが絵になっているのが、すごく素晴らしい作品だなと思います。

◆公演情報◆
音楽劇『星の王子さま』
水戸:2020年1月31日(金)~2月1日(土)  水戸芸術館ACM劇場
東京:2020年2月8日(土)~2月12日(水) 東京芸術劇場シアターイースト
兵庫:2020年2月15日(土)~2月16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
脚本・演出:青木豪
作曲・音楽監督:笠松泰洋
[出演]
昆夏美、伊礼彼方、廣川三憲(ナイロン100℃)
吉田萌美、内田靖子、岡野一平、平山トオル、原田智子、沼舘美央、大内慶子、堀江葵月
ピアノ演奏・薔薇:松木詩奈 コントラバス演奏:小美濃悠太 内田義範(2/10~12)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

真名子陽子の記事

もっと見る