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「まっとうな、がん治療本」が救えること、救えないこと

小木田順子 編集者・幻冬舎

医療本をとりまく空気の変化

 この原稿を執筆中にチェックしたAmazonの「ガン関連」ジャンルのランキング上位には、素人の私が見ても明らかにアヤシイ食事療法や代替療法や医療否定の本がまだ多くある。だが、心あるお医者さんたちの献身的な情報発信により、医療本をとりまく空気は、この1~2年で大きく変わった。

 昨年11月には、朝日新聞で大きな広告が掲載されたがん治療本について、腫瘍内科医の勝俣範之さんがSNS上で「科学的根拠がない」と指摘、朝日新聞社広報部が「広告表現には疑念があり、十分な検討を行うべきだった。掲載判断にあたっては、慎重なチェックに努めていく」という主旨のコメントを発表した。

 中山さんの著書『医者の本音』『がん外科医の本音』(ともにSB新書)、極端な主張も不安を煽る記述もない、まっとうな医療本だが、多くの人に読まれている。私が担当した、山本さんの『医者が教える 正しい病院のかかり方』も、自分で言うのもなんだが、タイトルといい、テーマといい、内容といい、とてもまっとうだ。で、自分のこれまでの編集者的経験則で言えば、「医療もので、こういうまっとうな本は売れない」。だが、結果としてこの本も多くの人に読んでいただいている。

 トンデモ本が売れるという状況はまだあるが、「まっとうな医療本」を求め、応援する読者は確実に増えているのを実感する。風向きは確実に変わりつつある。

がん治療のトンデモ本も数多あるなか、「まっとう本」を求める読者も増えている=長野県立図書館拡大がん治療のトンデモ本が数多あるなか、「まっとう本」を求める読者も増えている=長野県立図書館

 そんなこんなで、中山さん・山本さんとの仕事を通して、がんの予防や検診や治療について、患者予備軍として知っておいたほうがいい、ひととおりの知識は身についた。個人的には、当分こういった本は読まなくていいだろう。入っている生命保険の更新で「先進医療特約をつけたほうがいいですよ」と勧められたときも、「私は保険診療で受けられる医療だけでいいです」ときっぱり断われた。実際がんに罹ったらそれはショックだろうけれど、治療法で大きく悩むことはないだろう……そんなふうにさえ、思っていた。

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筆者

小木田順子

小木田順子(こぎた・じゅんこ) 編集者・幻冬舎

1966年、長野県生まれ。90年、PHP研究所に入社。PHP新書創刊に携わる。2005年、幻冬舎に入社し、幻冬舎新書の創刊に携わる。気がつけば、編集者人生の大半を新書編集者として過ごしている。担当した本は村山斉『宇宙は何でできているのか』(新書大賞2011)、香山リカ『しがみつかない生き方』、國分功一郎『来るべき民主主義』など。書評誌『いける本・いけない本』編集長も務める。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです