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 本年に予定されている改定刑法(性犯罪条項関連)の見直しに向けて、本稿第3回で、強かん罪(強制性交等罪)の構成要件を見直すよう提案したが、今回は、これに関連して問われるべき問題にふれたい。

被告人に「同意」を明示させる

 まず、刑法における構成要件の見直しと同時に、刑事訴訟法上の原則の変更が要求される。重要なことは、被告人に、被害者の「同意」――しかも不承不承(ふしょうぶしょう)の消極的な同意ではなく積極的・自発的な同意――をどのように確認したのかを、明示させることである。

 これまで性犯罪事犯では、性関係に同意していなかった場合、被害者がその点の裏付け証拠(補強証拠)を提示させられるという困難を強いられてきた。だがそれが、いかに被害者を苦しめ(だいいち起こった事態を満足に客観化できない状況下で、相手の攻撃に的確に対応すること自体が困難なことが多い。その時、裏付け証拠など簡単に出せるものではない)、しかも、市民的良識からはとうてい受け入れられない多くの性犯罪を無罪とする一大要因となったか。

 理不尽きわまることだが、明確な抵抗の跡を、しかも身体その他に物証が残る形で提示しなければならない(これが今日被害者に求められている)としたら、被害者は自らの命を捨てる覚悟をもたなければならなくなるだろう。また、名古屋地裁の事犯に見るように(杉田「父娘「準強かん」、異常な無罪判決と裁判官の無知」)、強いアルコールのせいで心神喪失状態にあったにもかかわらず「不同意」を立証することなど、定義からして不可能である。だがそれを求める不正義を不正義と認め、刑事訴訟法の欠陥を変えていく努力が不可欠である。

加害者が、被害者の「同意」を証明することはできるし、特に「同意」をどのように確認したかについて説明を求める拡大性犯罪の加害者には、被害者の「同意」の証明が求められる MR.Yanukit/Shutterstock.com

 一方、加害者が、被害者の「同意」を証明することはできるし、特に「同意」をどのように確認したかについて説明を求めること(国際連合女性の地位向上部『女性への暴力防止・法整備のための国連ハンドブック――政府・議員・市民団体・女性たち・男性たちに』梨の木舎、2011年、53頁)は、はるかに容易である。たいてい加害者は犯行時に意識鮮明である。泥酔状態でことに及ぶこともあるが、それでも自らの目的を多少なりとも理解し意識した上でなければ、ふつう犯行には及びえない。

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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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