【13】吉田拓郎「落陽」
2020年02月15日
私は戦後の第一次フォークソング世代である。〝青春真只中〟にあった往時の私は、岡林信康を主唱者とする関西発の反戦メッセージ派の愛唱者で、関東の吉田拓郎らの非政治系は軟弱すぎる「半体制」だと敬して遠ざけていた。
その「癖」はいまも癒っておらず、行きつけのカラオケスナックで、同世代とおぼしきおっさんやおばさん、いや、もとい、じいさんやばあさんが、「♪僕の髪が肩までのびて・・・」とか「♪ゆかたの君はすすきの簪・・・」などと懐かしげにデュエットしようものなら、おもわず眉をひそめて行きたくもないトイレへ駈け込んでしまう。
若者が旅先で出会った奇妙な老人との束の間のエピソードを切り取ったこんな内容の唄である。
たまたま知り合ったフーテン老人。苫小牧発・仙台行きフェリー乗り場まで見送ってくれ、女の子みたいにテープを拾い、別れ際にサイコロふたつをみやげにくれた。船中で思う。フーテン暮しのあのじいさんこそ正直者だ。この国ときたら賭けるものなどないんだから。どこかでまた会おう。身をもちくずしちまった男たちの話をまたきかせてくれ・・・
そもそも私が「落陽」に惹かれたのは、この唄の主人公の〝サイコロじいさん〟のえもいわれぬ存在感ゆえである。
と、偉そうな前口上を申し立てたにもかかわらず、のっけから筆者の無知と浅学をお詫びしなければならない。
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