確かに彼らの家族は崩壊するかもしれない
2020年02月20日
「それなら結婚しなくていい!」
2020年1月22日の衆議院代表質問で、国民民主党の玉木雄一郎代表が選択的夫婦別姓の導入を求めたところ、自民党の席からそのようなヤジが飛んだことが、世間を大きく騒がせました。断定されたわけではありませんが、声の主は自民党の杉田水脈議員で間違いないだろうと言われています。
ご存じの方も多いと思いますが、杉田議員といえば、「LGBTは生産性がない」「(性暴力被害者の伊藤詩織氏は)女として落ち度があった」「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」等、過去にも数々の問題発言を繰り返している人物です。
以前、「論座」でも「杉田水脈という“名誉男性”が抱える「心の闇」」という記事で、彼女は大物男性議員が言えない本音を代弁する“特攻隊長”の役回りをまっとうしていると指摘しましたが、今回もその路線を踏襲していたのではないかと思われます。
国民生活のハードルを取り除くのではなく、自己責任を押し付ける彼女の発言は、政治家として非常に問題だと思いますが、自民党の重鎮が彼女を強力にバックアップしている限り、今後も差別的な発言を繰り返すことでしょう。今回の件も、裏では「杉田よく言った!」「本当にその通りだ!」と労(ねぎら)いの言葉をかけているかもしれません。
一方世論は、選択的夫婦別姓賛成の流れが近年加速しています。このヤジ発言後の1月25、26日に実施された朝日新聞の電話世論調査でも、選択的夫婦別姓賛成派は既に69%に達しました。今回より携帯電話も加えたという調査方法の違いこそあれ、賛成派は2015年の49%より大幅に増えています。5年で約20ポイントも増えるのはかなり大きな変化です。
もしかすると、今回のヤジのように、「同姓ルールに従わなければ結婚するべきではない」という態度がいかに愚かで恥ずかしく情けないことかを世間に示してくれたおかげで、賛成派が増えた面もあるかもしれません。
いずれにせよ、賛成69%という数字は、レイトマジョリティー(※後期追随者/新しいものの受容に懐疑的で、周囲の大多数が受容しているのを見てから受容する層。イノベーター理論における5つのグループのうち4番目のグループ)も「賛成」へと雪崩を打ち始めた結果だと思います。保守派の代表格であった稲田朋美幹事長代行も昨年(2019年)選択制賛成派に回っており、「キャズム(谷)」を越えたと見なして間違いなさそうです。
ですが、それでも、依然としてラガード(※遅滞者/5番目のグループで、最後になって受容するか、最後まで受容しない人々)と思われる24%の人々が反対を表明しています。
でも、なぜ彼らラガードは選択的夫婦別姓に頑なに反対し続けるのでしょうか? 社会学者の山口一男氏も、選択可能になる制度は誰も損をするものはではない「パレート改善的制度」であると述べていますが、あくまで他人の家族の話なのに、なぜ必死に介入するのでしょうか?
その理由として「伝統的家族観が壊れるから」という発言をよく耳にします。安倍首相も2020年2月4日の予算委員会で、「夫婦の氏が異なることで子への悪影響が生じることを懸念する人も相当数いる」と答弁しています。ですが、いずれも「よその家族が別姓を選択することを認めない理由」にはなっていません。
彼らがよその家族に平然と介入するのは、
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