大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
アナスタシア伝説を描いたブロードウェイミュージカルが日本初演
ブロードウェイミュージカル『アナスタシア』が3月1日より日本初上演される。本作品は、第70回アカデミー賞 歌曲賞、音楽賞にノミネートされたアニメ映画『アナスタシア』に着想を得て制作された作品。
1918年、帝政ロシア時代の最後の皇帝ロマノフ2世をはじめ一族が殺害されたが、皇女アナスタシアだけは難を逃れて生き続けているという歴史上の謎「アナスタシア伝説」にもとづいた物語で、記憶を無くした主人公アーニャが自分の過去を取り戻す旅路を描く。ブロードウェイでは2017年に初演されロマンティックなストーリーとLEDを駆使した最先端の舞台美術が評判を呼び、約2年にも及ぶロングランとなった。本国クリエイティブスタッフと日本人キャストによる日本初上演となる。
アーニャ役を演じる葵わかなとアナスタシアの祖母=マリア皇太后役を演じる麻実れい。本作が2度目の舞台出演となる21歳の葵と、宝塚歌劇団での初舞台以来今年で芸歴50年を迎える麻実。海外スタッフとの稽古の様子やそれぞれの役柄、作品の魅力について、さらにはミュージカルについて語り合った(撮影は製作発表時に、インタビューは2月上旬に行いました)。
――稽古が進んでいますが、『アナスタシア』という作品の全貌は見えてきましたか?
葵:だんだん見えてきました。私が演じるアーニャは記憶を失っていて、アナスタシアの祖母であるマリア皇太后に会おうとサンクトペテルブルクからパリに向かうんですが、1幕では家族を探す旅、記憶を探す旅というのがベースにあるんです。2幕に入っていくとアーニャが過去を探すだけでなく、一緒に未来を見つけるという別の面も出てきます。その二面性やいろいろな登場人物の心が解決していくのが2幕の見どころだと思います。話のスタートの部分はできてきて、どうやって終わらせるかはこれからの稽古で決まっていくと思いますが、道筋は見えてきたかなと思います。
麻実:今、わかなさんがおっしゃったように、それぞれのお役の方たちの道筋が見えてきたところです。私が演じるマリアはロシアの皇太后ですから、かつてはロシアの皇后として君臨した時代があったわけで、「大きく、立派に、厳しく」というイメージがありました。でも、稽古では非常に人間味あふれた皇太后を要求していただいています。最初のイメージから軌道修正が必要で、ちょっと戸惑いながらも、そこをクリアすることで、マリアの人間性が出てくるかなと思って。作品の設定としてはロマノフ王朝の崩壊にまつわる話ではありますが、演じているとユーモアがあるところもあって。
葵:結構笑っちゃう場面もありますよね。
麻実:そうそう。やはりこの作品はハッピーエンドで楽しいミュージカルなんだなと思いますね。
――ブロードウェイのクリエイター陣による稽古はどのように進んでいるのでしょうか。
麻実:目が回るくらいのスピードで進んでいますね。
葵:始まって1週間で1幕の荒通し稽古をやったんですよ。
麻実:それは我々にしたら驚くべき速さなんです。私たちのキャスティングはダブルキャストやトリプルキャストがいて、それぞれにしっかりと構築させて進んでいるので、想像を絶しますね。海外では複数キャストのシステムで上演されることがないので、複数キャストの稽古には慣れてらっしゃらないんです。それで、ひとまずラフにでも最後まで形を作って、そこから細部を詰めていこうとしていらっしゃるようです。
葵:海外スタッフの皆さんには、こだわりと情熱を感じます。演出の方だけでなく音楽や振付、舞台監督など一人一人がこだわりを持っていて、お互いがリスペクトしていることが伝わってきます。チーム感を大事にされているんだなと感じますね。
麻実:そうですね、それぞれの方の責任感を感じます。今は場面毎にそれぞれで稽古しているのですが、集まって全体を通したときに手直しが入る。とてもいい進み方をしていると思いますね。
◆公演情報◆
ミュージカル『アナスタシア』
東京:2020年3月1日(日)~3月28日(土) 東急シアターオーブ
大阪:2020年4月6日(月)~4月18日(土) 梅田芸術劇場 メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:テレンス・マクナリー
音楽:ステファン・フラハティ
作詞:リン・アレンス
振付:ペギー・ヒッキー
演出:ダルコ・トレスニャク
[出演]
葵わかな・木下晴香
海宝直人・相葉裕樹・内海啓貴
山本耕史・堂珍嘉邦(CHEMISTRY)・遠山裕介
大澄賢也・石川禅/朝海ひかる・マルシア・堀内敬子
麻実れい ほか
※海宝直人は東京公演のみ出演。
〈葵わかなプロフィル〉
2009年に女優としてデビュー。その後、映画など多数の映像作品に出演し、2017年には、NHK連続テレビ小説「わろてんか」にてヒロインを演じる。2019年、『ロミオ&ジュリエット』のジュリエット役でミュージカルに初挑戦。現在公開中の映画『キャッツ』では日本語吹き替えを担当している。
★公式ホームページ
★公式twitter
〈麻実れいプロフィル〉
宝塚歌劇団雪組男役トップスターとして活躍し、1985年退団。以降、多くの話題作に出演。リサイタルなどでも活躍。おもな出演作は、『炎 アンサンディ』『8月の家族たち』など。芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、読売演劇大賞最優秀女優賞、毎日演劇賞、朝日舞台芸術賞、紀伊國屋舞台演劇賞個人賞など受賞多数。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?